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10代のネット利用を追う

mixi、18歳未満への公開意図と今後、笠原健治社長に聞く


ミクシィ代表取締役社長の笠原健治氏

 mixiには当初、登録は18歳以上という年齢制限があった。しかし、2008年12月10日から引き下げられ、15〜17歳も利用できるようになった。2009年1月30日には、モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)による“健全サイト”認定も取得した。

 一方で、mixiは2008年12月に、出会い系サイト規制法改正にともない、mixi利用規約を変更し、「面識のない異性との性交、わいせつな行為、出会い等を主な目的として利用する行為」に関しても、削除などの対応を実施していることを明らかにしている。2009年4月には警視庁が、mixiなど多数の会員を抱えるコミュニティサイト運営会社8社に対し、年齢確認の厳格化などにより子どもが有害情報を閲覧できない措置を取るよう協力を依頼している。

 18歳未満への公開を機にmixiはどのように変わったのか、彼らはどのようにmixiを利用しているのか、そして最近の規制の動きに対してミクシィは今後どのように対処していくのか、同社代表取締役社長の笠原健治氏に聞いた。

全年齢層に利用してもらえるサービスを

 現在mixiでは、15〜17歳のユーザーは日記などの機能は利用できるが、一部機能が制限されている。具体的には、「コミュニティ」の全機能、ユーザー検索機能(検索すること、されることの両方)などが利用できないほか、日記公開範囲のデフォルトが「友人まで公開」(変更可能)となっている。また、青少年にふさわしくない広告やレビューが表示されない。ちなみに、制限されている機能は、18歳になった瞬間に使えるようになる仕組みだ。

 笠原氏は「もともとmixiはコミュニケーションのインフラを目指しており、より広い年齢層の人たちに利用してもらいたいと思っていた。今後、上にも下にも広げたい」と語る。もちろん、安心・安全が大前提であり、たとえ下に広げるにしても、今と同じサービスのまま引き下げるわけではない。

 今後は、親子間、子ども同士など、さまざまなコミュニケーションも想定している。ただし、「小学生の場合は同級生同士でもトラブルになる可能性があるため、より安心・安全な取り組みを提供した上でのサービスが必要だと考えている」という。

 mixiでは、18歳未満の利用を禁止していたころから、年齢を偽って利用している18歳未満のユーザーがおり、見つけたら年齢を確認し、退会処分にしていたという背景がある。しかし、それではいたちごっこであり、18歳未満ということがわからないよう利用しているケースもあった。そこで、「18歳未満全部を利用禁止にし、それでも入ってきた人を退会させるよりも、登録いただきつつ、友達とのコミュニケーションを中心に利用してもらいたいと思い、機能を絞って公開した」というのが制限を引き下げた1つの理由だ。

 mixiの登録年齢引き下げはかなり話題となった。それに伴い、一部のユーザーからは反発もあった。しかし、「18歳未満がこのコミュニティに入るのはどうかと思う」など、機能制限についての理解が十分浸透しないまま問い合わせてくるケースがほとんど。そういった際も、ひと通り説明したら一応の納得をしてくれたことがほとんどという。「この件に関してはまだアナウンス不足なので、さらにアナウンスしていきたい」。

18歳未満のユーザーはマイミク数が多い?

 15〜17歳のユーザーの数は、3月末で12〜13万人。一番多いのは17歳で、携帯電話からの利用がメインだ。主に友人とつながっており、日記、足あと、メッセージなどの日記を中心としたコミュニケーションを行っている。18歳未満のユーザーはまだそれほど多いわけではないが、「急速に広がらなくてもいい」という。予期しないことが起きるほど急速に広がるよりは、緩やかな増加が望ましいと考えているのだ。

 SNSということで、GREEやモバゲータウンと比較されることも多いが、「それぞれのサービスの利用傾向が異なり、棲み分けができている」と笠原氏。GREEやモバゲータウンはゲーム中心のため、ゲーム好きなユーザーが多いが、mixiは友達に近況を伝えたり情報を知りたいので入るという違いがある。

 ちなみに、若者ほどマイミクが多い傾向にあり、顔出し率も上がる。「彼らはプリクラの写真を貼ったりプロフで顔を出したりするのに慣れている。その延長線上ではないか」。8月24日には「mixiアプリ」が正式に開始となったが、アプリの一部は15〜17歳でも利用できるようになる予定だ。「日記以外の新しいサービスが使えるようになるので、使ってもらえるだろう」と笠原氏は期待する。

 すでに18歳未満のユーザー限定の機能もある。ユーザー検索機能代わりの、キーワードで友人を探せる機能「myキーワード」だ。あらかじめ設定しておいたあだ名(合言葉)を入力し、合致すると相手が見つかる仕組みだ。18歳未満のユーザーの友達の探し方は、マイミクをたどることが多いが、見つからない場合はmyキーワードを使うのがお勧めだ。18歳未満のユーザーの多くが利用しているという。

 myキーワードとユーザー検索の違いは、ユーザー検索の場合は一部だけ合致していても候補として表示されるが、myキーワードでは完全一致したものしか表示されない。おまけに、複数のユーザーが同じmyキーワードを重複登録することはできないため、友人に正確に伝えなければ検索できないことになる。つまり、全く見知らぬ人同士がつながる可能性はほとんどないというわけだ。もちろん、適当に入力して偶然見つかる可能性は残っているが、入力が人並み外れて多い場合は運営側が把握できる仕組みになっているため、問題は起きづらいと考えられる。「今後、同級生とつながる、楽しめるなど、18歳未満しか使えないサービスの提供も考えている」。

携帯フィルタリングを利用したユーザー確認を導入へ

 EMAによるサイト認定はネットにおける健全性を示す1つの指標だが、「認定を取るのは大変で、ハードルが高い」という。認定取得のため、mixiはもともと力を入れていたサポート体制を数カ月間かけてさらに強化した。EMAから指摘されて改善した点もある。「第三者機関の認定基準の下に健全性を向上できたことには意義がある。今後も守っていきたいし、それ以外にも独自に健全性を強化していきたい」。

 また、「一般ユーザーがお互いに悪口を言い合っているという対応が難しいケースもある」と笠原氏は言う。日記に書いたことが原因で炎上するケースもある。mixiの日記は1つ1つ公開範囲を設定できるが、デフォルトの公開範囲は「全体に公開」となっている。それに対して18歳未満のユーザーでは、「友人まで公開」がデフォルト。「18歳以上でも、若い層ではデフォルトを『友人まで公開』に変更したり、何らかの対策が必要かもしれない」。

 ところで、肝心の年齢登録は自己申告制となっている。18歳未満の該当者は正確に申告しているだろうか。それに対して笠原氏は、「年齢を偽った登録は残念ながらまだあると思っている。フィルタリングや若年齢層向けサービスなどで正しい誘導をしていきたい」と答える。

 現在、18歳未満の利用する携帯電話やPHSにはフィルタリングをかけることが原則義務化されている。mixiは、これを利用してユーザー確認を行う仕組みを8月18日から導入した。例えば、フィルタリングがかかっている携帯電話からアクセスしているユーザーは、システムで18歳未満のユーザーと判別し、日記を中心にした機能のみを提供するようにするわけだ。

 「きっちり年齢登録しないと楽しめないたぐいのサービスの提供も考えている。今後、年齢を正しく登録するよう促していきたい。」

出会い系コミュニティ削除の理由と経緯

 mixiは2008年12月、「面識のない異性との性交、わいせつな行為、出会い等を主な目的として利用する行為」を禁止事項として加えるなど、利用規約を変更している。「それまでも禁止していたが、よりわかりやすくするために利用規約に明示した」。それに伴い、利用規約違反となるコミュニティに順次警告し、対応したのが、“出会い系コミュニティ削除事件”だ。

 削除対象はコミュニティそのものとなることもあり、削除したコミュニティは約300件と報道された。いくつかの条件や項目が該当すると、警告してから削除。コミュニティ自体が禁止事項に該当する場合は、即削除対象となっていた。ユーザーからは「オフ会自体が禁止なのか」という過剰な反応が寄せられたが、趣味のイベントやオフ会を目的としたコミュニティは削除対象にはなっておらず、あくまで面識の無い男女の出会いを主な目的とした利用が禁止対象となる。

 2009年4月には、出会い系サイトと同様の書き込みがあるとして、mixiやモバゲータウンなどSNSを運営している6社に対して警視庁が削除要請をしていたという報道があった。しかし、笠原氏いわく「削除要請はなかった」。ミクシィは、警視庁や警察庁とは日常的にコミュニケーションをとっており、携帯フィルタリングを利用したユーザー確認を導入する施策も伝えているという。

協力の輪を広げ、より楽しく、便利に、安全に

 6月1日、ミクシィとグリー、ディー・エヌ・エーの3社は、青少年ユーザーの保護・健全育成において協力することを発表した。4月30日と5月1日に警視庁と警察庁から、サポート体制の強化、年齢認証の強化、年齢によるゾーニングに関する要請依頼があり、「6月1日の発表は、警視庁・警察庁の要請に応えたということもあるし、企業としても進めていた施策を対外的にアナウンスした結果でもある」。

 もともと3社はユーザー数が多く、共通する悩みや今後のあり方について話すことが多かったという。顔を合わせる機会が多く、情報交換をしている中で「ノウハウを共有したい」ということで一致、より体制を強化しようという意味を込めて発表した。「これは3社間のみで止めるものではないと考えており、いずれもっと輪を広げていきたい」。

 話し合いの内容は、年齢を確認する方法や、一般と青少年とはサービスをどのように分けていくべきかなどについてだ。ただし、お互いの考えや行動については情報交換しているが、アウトプットも同じにするというわけではない。サービス自体が異なり、考え方が違う面もあるため、施策はそれぞれで異なるという。

 「より新しいコミュニケーションのサービス、より進化したインフラを作っていきたい。進化するからにはより面白く、楽しく、便利で、安心・安全なものにしたい」と、笠原氏は今後の抱負を語る。青少年の安心・安全のために機能を絞り、ルールで縛りつつ、楽しさとのバランスを取るのは難しいが、極力スマートな方法でバランスを取り、どの年代にも楽しんで使ってもらえるサービスを目指す。

 青少年の利用するネットサービスに対する規制の動きは止まらない。しかし、初めから青少年をシャットアウトしてしまうのではなく、彼らが安心して安全に使える環境を作っておくことは、今後にとって重要なことだ。mixiの取り組みが、今後も青少年にネットサービスを提供できるようにするための素地となることを願う。


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2009/8/27 11:00


高橋 暁子
小学校教員、Web編集者を経てフリーライターに。mixi、SNSに詳しく、「660万人のためのミクシィ活用本」(三 笠書房)などの著作が多数ある。PCとケータイを含めたWebサービス、ネットコミュニケーション、ネットと教育、ネットと経営・ビジネスなどの、“人” が関わるネット全般に興味を持っている。
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