NHKにも恩恵、Yahoo! JAPANやGyaO!のトップページ効果


 幕張メッセで開催中の「CEATEC JAPAN 2010」において5日、コンファレンス「Yahoo! JAPAN DAY」が開かれた。

 「Yahoo! JAPANの協業推進」と題したセッションでは、ヤフー株式会社の鈴木勇二氏(事業戦略統括本部PS本部ビジネス開発部部長)がYahoo! JAPANにとってのパートナー戦略の重要性を力説。実際のパートナーとして、日本放送協会(NHK)の鈴木祐司氏(編成局編成センター チーフ・ディレクター)が、テレビ局のインターネット戦略と協業による自社のメリットについて語った。

LIFE ENGINEとなるために、あらゆるパートナーと協力~ヤフー鈴木勇二氏

 ヤフーの鈴木氏は、1996年のYahoo!ニュースに始まり、Yahoo!ファイナンス、Yahoo! JAPAN ID、Yahoo!ポイントなど、今までの「情報提供元からパートナー企業へ」という変化の過程を実例を挙げて紹介した。

ヤフー株式会社の鈴木勇司二氏

 その中でも特に大きく取り上げたのが、動画配信サービスの「GyaO!」。テレビ局との連携を強化し、番組の有料販売や無料配信、放送前のドラマの無料配信などを進めていると語った。

 鈴木氏が「デジタルコンテンツ白書」から引用して見せたデータによると、映像は今後大きく期待される分野である一方、ネット化率が1.5%と著しく低いという。これについて鈴木氏は、Google TVなども例に挙げながら、映像分野は成長の余地が大きいと述べた。

 こうした背景を受け、鈴木氏は「すべてのお客様のLIFE ENGINEでありたい」というキャッチフレーズを掲げ、「あらゆる生活をサポートするのはヤフー1社では実現できない。あらゆるコンテンツプロバイダー、ハードウェアメーカー、あらゆる業界団体などと協力して推進してきたい」と結んだ。


コンテンツ分野別のネット化率(デジタルコンテンツ白書)。ほかの分野に比べ映像が低いYahoo! JAPANがさまざまな面でパートナーをサポートするプラットフォームを提供するという図

ネットでの紹介から動画配信やテレビ番組へ誘導~NHK鈴木祐司氏

 NHKの鈴木氏はまず、GyaO!で配信するNHK連続ドラマ「てっぱん」のプロモーション映像をスクリーンに映してみせた。このように、連続ドラマや大河ドラマを中心に、権利者との調整がとれたドラマのダイジェストなどをどんどんインターネットで公開していくの方針を語った。

日本放送協会(NHK)編成局編成センターの鈴木祐司氏

 NHKでは2009年11月からGyaO!で試験的に配信を始め、2010年6月より本格的に取り組んでいるという。その結果、1週間で計100万視聴、あるいは1番組で週間50万視聴という結果も出て、「このプラットフォームでは、条件がそろえば、とんでもない視聴数になるということがわかった」と鈴木氏は言う。

 鈴木氏がインターネットに期待するのは視聴誘導だ。背景には、各テレビ局とも視聴率が下降傾向というデータがある。「放送はゆっくり下るエレベーター。放送だけでの努力は、エレベーターの中でジャンプするようなもの」とまで鈴木氏は主張する。

 そのような状況では放送内からの番組へのリーチは期待できないが、放送外からのリーチであれば「やり方によっては上がる感触がある」。そこでGyaO!と組んだという。

 鈴木氏は特に、GyaO!のトップページのおすすめやランキング、Yahoo! JAPANのトップページからの誘導が特に効果的だったと説明。「インターネットに無数の動画があるが、その中で埋没せずに視聴してもらえる」と語った。具体例として、ある週の視聴傾向をログで分析したグラフを紹介。「クッキングアイドル アイ! マイ! まいん」「ワンセグランチボックス」「メジャー」などが爆発的に視聴された日を取り上げ、その日にGyaO!のトップページやYahoo! JAPANのトップページで紹介されていたことを示した。

 さらに、ドラマの視聴者の回ごとの内訳をグラフ化し、継続視聴者は回ごとに減っていく一方で、復帰視聴者が増えることを示し、「ネットでダイジェストで見てもらえると、復帰してもらえる可能性が高まる」とテレビ放送への直接のメリットを説明した。

 最後に鈴木氏は、今後のビジョンを語った。それは「ネット空間でプレゼンスの向上を!」というものだ。例えば、定時でダイジェストを放送し、それをネットでも出す。さらに見逃し視聴にもネットで応える。それだけではなく、通常の放送とは別編集の番組を作ることもありうるという。例としては、特定の人物にフォーカスしたダイジェストを作れば1つの番組になる。その人物編を何年か集めていけば、人物百科事典もできる。「こういうコンテンツを所有するのがテレビ局の強み」と語り、「まだまだテレビ局はやれることがある」と述べて話を終えた。


連続ドラマ「てっぱん」のダイジェストをGyaO!で配信各テレビ局の視聴率の推移。下降傾向
ある週のGyaO!での動画視聴数視聴数がピークを示した日に、GyaO!やYahoo! JAPANで紹介されていたという
ドラマ視聴者の回ごとの内訳。継続視聴者は減り、復帰視聴者が増えていく今後のビジョン。1つの番組を、さまざまな形式で提供し、ネット空間でプレゼンスを向上させる、という




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(高橋 正和)

2010/10/5 16:04