サイバー、ヤフー、DeNA、mixi、ドリコムがSNSオープン化を議論


 IVS 2009 fallでは、「オープン化で激変するか? ~ ネット業界地図のゆくえ」と題し、サイバーエージェントの西條晋一専務取締役COO、ディー・エヌ・エー(DeNA)の守安功取締役ポータル事業本部長兼COO、ドリコムの内藤裕紀代表取締役社長、ミクシィの原田明典取締役 mixi事業本部長、ヤフーの松本真尚R&D統括本部 フロントエンド開発本部 本部長によるパネルディスカッションが行われた。

著名人で伸びたアメブロ。Twitterは「気軽につぶやけない」

サイバーエージェントの西條晋一専務取締役COO

 サイバーエージェントの西條氏は同社が提供するサービスの現状を説明。広告収益は「アメーバブログが100億PVを超え、ナショナルクライアントが牽引する形で順調」とし、課金については「地味に利益貢献しているのはユーザー間のプレゼント機能」と説明。2009年2月に開始したアメーバピグもユーザーが100万人を超え、売上も伸びているという。

 アメーバ成功の理由を聞かれると、西條氏は「著名人」と即答。現在は6000人近い著名人を囲い込んでおり、全PVの3割は芸能人だという。アメーバのオープン化については「mixiの伸びやモバゲーの参入などで温度感はかなり上がっており、具体的な開発は一切ないが議論は始めている」と語った。

 12月8日にはつぶやきを投稿するTwitter型のサービス「Amebaなう」も新たに開始。「このサービスで業界トップに立てるのか」と質問されると西條氏は「Twitterは小難しいことを言わなければいけない気がする。何かを気軽につぶやくことができない」とし、Amebaなうでは気軽なコミュニケーションを重視する姿勢を示した。

ヤフーのSNS再参入は「勉強が必要」

ヤフーの松本真尚 R&D 統括本部 フロントエンド開発本部 本部長

 ヤフーの松本氏は「今回は勉強するつもりで参加している」と前置いた上で、ヤフーのSNSやオープン化に対する考えを説明。SNSについては「ソーシャルなトラフィックは伸びている」とした上で、「ヤフーは他のサービスをお手本として機能を改善する雰囲気があるが、SNSはそうした勉強が上手ではなかった」とし、「SNSについてはもう少し方法を学ぶ必要があるのでは」との考えを示した。

 また、ソフトバンクブループとしては、ソーシャルゲームのRockYou! やMySpaceなどにも出資しており「孫さんらしく全部に手を出している」とコメント。「孫さんからヤフーオープン化の号令は出ていないが、ポータルは賢くオープンになるべき、と“評論家松本”は考えている」とし、あくまで個人的な意見であることを強調した。

他プラットフォームへのオープン化も考えるモバゲー

ディー・エヌ・エー 守安功取締役ポータル事業本部長兼COO

 DeNAの守安氏は、先にオープン化したmixiアプリへの感想を問われると、「トラフィックに耐えられないと遊べない」「マイミクがいないとあまり楽しくない。マイミクがいればより楽しいならいいが、マイミクが前提というのは辛い」とコメント。

 また、モバゲーのオープン化をmixiなど他のプラットフォームへのアプリ提供を考えるかという質問には「国内外含めてモバゲーのゲームは出していくだろう」との見通しを示した。一方、グリーがオープン化したらアプリ提供するかという質問には「たぶん出さない」、グリーがモバゲーにゲームを出したいと打診してきたらとの質問には「たぶん止める」と、釣りゲームに関する訴訟問題を伺わせるコメントで会場の笑いを誘った。

予想以上に伸びたmixiアプリ。今後サーバー運営ノウハウもオープン化

ミクシィの原田明典取締役 mixi事業本部長

 mixiアプリの持つ意外なデータを質問された原田氏は「ネットレイティングスによるPCの滞在時間は9月のデータで、10月はあくまで感覚だが倍近い滞在時間になっているのでは」とコメント。「PCが早い段階で回復しており、予想よりも6カ月前倒ししているという立ち上がりの早さは嬉しい」とした。

 また、「mixiアプリのモバイル版では、サンシャイン牧場を除けば日本勢が頑張っている」とし、「これもソーシャルアプリについて日本でコミュニティを作ってくれた内藤さんのおかげ」と、ドリコム内藤氏を評価。一方、「サーバー設備がローンチに間に合わずユーザーに迷惑をかけた。この点は今後改善していき、mixiの持つサーバーのノウハウもオープンにしていきたい」と語った。

「漢字テスト」などmixiアプリが好調なドリコム

ドリコムの内藤裕紀代表取締役社長

 mixiアプリが好調なドリコムの内藤氏は、収益に関する質問に「漢字テストでは1回20円のチケットを販売しているが、消費数が50~60万枚近い」との数字を明かし、「収益の数字が見えやすくなってきた」とコメント。人気アプリである「漢字テスト」成功の秘訣については「最初からうまくいくかはわからなかったが、ユーザーの動向を見ながらリニューアルしていくことでアクティブ数を維持できた」とし、「アプリは作る前よりも作ってからどう改善するかが重要」とした。

 今後の展開については「改善できないと意味がないため、アプリをあまり数多く出すよりもリニューアルに努めたい」とした。また、ブログ事業売却については「単純に儲からなかった」とした上で、「事業というのはセンスが大事だが、センスを持っている人数には限りがある。サービスの数を増やすよりも、持っているセンスを大事にして少ない数に絞っていきたい」との考えを示した。

 mixiアプリについては「とてもうまくオープン化されていて、漢字テストが200万を超えたのもmixiのおかげ」とした上で、「今後はお金を払うことをいかに慣れてもらうか。現状では課金っぽいことをちょっとやるだけでも“守銭奴”と言われてしまう」とコメント。これに対してミクシィの原田氏は「まったく同感で、課金に関しては着メロくらいの感覚で利用できなければいけない。課金の市場を一緒に作っていく努力をしたい」とした。

ソーシャル市場はまだまだ伸びると期待。アメーバピグは海外展開も

ソーシャルアプリの市場規模、3年後は?

 今後のソーシャルアプリ市場については「広告はクリックされないので課金メインになるだろう」(守安氏)、「有料サービスを使ったことのない人のために小額決済が重要」(原田氏)、「コミュニケーションがつまがることで、市場規模の桁が1つは上がるのでは」(松本氏)とコメント。内藤氏は「市場が大きくなっても人口が増えるわけではなく、可処分所得も30万円程度と考えると、ユーザー規模は5000~6000万くらいではないか」とした。

 西條氏は「アメーバピグはユーザー層の65%が女性で、課金しないと思われていた層が課金しており、単価は低いが全体ではオンラインゲームの数倍はある」とのデータを披露。その否決については「アメーバピグを使っているとアメゴールドが溜まり、それでアイテムが買える。そうした購買経験をつけさせること」とした。

 ソーシャルゲームにも飽きが来るのではないか、との質問には、原田氏が「エンタメ性の強いものは短期間に火がつく。ソーシャルアプリはまずゲームから始まったが、今後は生活に浸透するアプリが重要になる」と指摘。守安氏は「ユーザーはいずれ飽きるものだが、オープン化はそのために意義があり、さまざまなタイトルを出し続けているときちんと伸ばせるのだろう」と語った。

「mixi、モバゲー、GREEのどれが伸びるか」という登壇者への質問

 登壇者へ「mixi、モバゲー、GREEのどれが伸びるか」という質問には、「西條氏が「PCに期待しているのでmixi」とコメント。守安氏は自社サービスであるモバゲーを挙げたが、原田氏は自社サービスではなくモバゲーを挙げ、「mixiの市場規模は大きいが、パートナーへ還元してしまうため、売上規模はそれほど大きくならない」とコメント。内藤氏は「複数のプラットフォームそれぞれにアプリを開発するのは大変なので、どこか1社が他の2社を買収してくれないかといつも各社の株価を見ながら考えている」と冗談交じりにコメントした。

 アプリ企業の海外進出について原田氏は「海外は過当競争で、RockYouですら苦戦するくらい。2010年中は海外進出よりも日本ユーザーの開拓を狙ったほうがいい」とし、守安氏は「PCはすでに開拓されており、海外を狙うならモバイルではないか」、内藤氏は「お金をかけないと厳しいマーケットだが、その腹はくくったつもり」とコメント。一方で西條氏は「すでにFaceBookではアプリを2つ出しており、うまくやればユーザーは獲得できる自信がついた」とコメント。「ARPUもかなり取れており、2010年にはアメーバピグを海外に出したい」とした。


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(甲斐 祐樹)

2009/11/16 06:00