清水理史の「イニシャルB」

思ったよりイイ! 羽型アンテナで長距離通信に特化したUGREENのWi-Fi 7アダプター「BE6500 Wi-Fi 7 USB Adapter」

UGREENの「BE6500 Wi-Fi 7 USB Adapter」

 「ネタになりそう」というだけで購入したUGREENのUSB Wi-Fi 7アダプターが思いのほか優秀だった。飛行機や宇宙船を思わせる独特の形状で、PC内蔵のWi-Fi 7アダプターより、長距離の安定性が高くなっている。Wi-FiルーターのWi-Fi 7化に合わせて、PCのWi-Fi 7化も検討している場合、特定用途では有力な選択肢のひとつになる。その実力を検証してみた。

「目的」が分かりやすいUGREEN

 PCに接続して使うWi-Fiアダプターは、普通に考えれば、携帯性を考えてコンパクトな設計にしたくなる。実際、他社製のWi-Fi 7 USBアダプターはアンテナ内蔵や格納式になっている製品が多い。

 しかし、このUGREENのBE6500 Wi-Fi 7 USB Adapterからは、コンパクトにしようという意思が伺えない。もちろん、サイズは約140×75×90mm(幅×奥行き×高さの実測値)と手のひらサイズなので、巨大というほどではないが、Wi-Fi 7 USBアダプターとして考えると、ひとまわりどころか2まわりほど大きいし、デザインもかなり個性的だ。

サイズも大きく、個性的なデザインの製品となっている

 しかし、実際に使ってみると、「なるほど、だからこのサイズ、この形なのか……」と意味がわかってくる。Amazon.co.jpの販売ページには「『速さ』も『広さ』も、妥協しない」というキャッチコピーが載っているが、後述するベンチ結果を見ても、この製品は長距離通信を得意とする製品となっていることが分かる。

 UGREENは、市場に眠っているピンポイントのニーズを掘り起こすのがうまく、しかもそのニーズに対して徹底的に技術を投入することを惜しまないメーカーだ。NASのときは、共有ではなく「パーソナルストレージ」という価値に着目し、その価値を実現するための機能として招待制のユーザー登録やユーザーの自主管理機能(管理者でもユーザーのデータを参照できない設定)など、今までのNASでは一般的ではなかった機能を実装してきた。

 今回の製品も、まさにこうしたピンポイントのニーズに着目した製品で、多くの人が80点として満足する製品ではなく、「長距離で速く通信したい」というピンポイントのニーズに対して100点を取ることを目的として、前述したサイズやアンテナなどの工夫がなされている。なので、欠点もいろいろあるが、この製品だからこそ実現できている利点がきちんと存在する製品となっている。

 正直、個人的には、同社のマーケティング戦略に過剰さを感じることもあるのだが、その点を切り離して製品そのものと向き合ってみると、開発陣の独特の感覚と、その感覚を製品化することを恐れない経営判断に感心させられるメーカーだ。

派手で、でかい、スペックもソコソコ

 それでは実機を見ていこう。

 本製品は、Wi-Fi 7ことIEEE 802.11beに対応したUSB接続のWi-Fiアダプターだ。採用されているチップはRealtekの8912AUで、対応する速度は2.4GHz帯が688Mbps、5GHz帯が2882Mbps、6GHz帯が2882Mbpsとなっており、USB 3.0(5Gbps)でPCと接続する。

正面
背面
側面
底面

 現状、Wi-Fiは多くのPCに内蔵されているため、別途USB接続のアダプターを装着する機会は少ない。このため、本製品は、PC内蔵の古い規格(Wi-Fi 6など)をアップグレードしたいケースや、自作PCなどWi-Fiが内蔵されていないPCを無線化したいケースなどで利用することになるだろう。

 最大の特徴は、そのデザインだ。本製品は冒頭でも触れたように、飛行機というか宇宙船というか、両端に羽を備えた独特の形状をしており、サイズも大きい。

 この羽の部分がアンテナになっており、電波の送受信に利用されている。

羽の部分にアンテナが内蔵されている

 こうした羽タイプの形状は、ネットギアのコンシューマー向けWi-Fiルーター(Nighthawkシリーズ)で積極的に採用されたことがあったが、USB接続のWi-Fiアダプターでは、非常にめずらしい形状となる。

 Wi-Fi製品では、外付アンテナの方が電波の送受信に対して有利と言われるが、その一方で可変タイプのアンテナは配置によって性能にバラツキが出やすい。つまりユーザーの使い方によって、良さも悪さも出やすい形状となっている。

 本製品のような羽型のアンテナは、外付けアンテナであることの利点を持たせたまま、メーカーが理想とする配置にアンテナを固定できるのがメリットで、ユーザーの好みの角度に調整できる自由度はないが、そのぶん、一定の性能を確保しやすいのが特徴となるわけだ。

 インターフェースは前述したとおり、5Gbps対応のUSBで、背面にType-Cのポートが搭載されている。ただし、付属のケーブルは、片側がType-Cで、もう片側がType-Aとなっており、PCへの接続はType-Aが必要になる。最近のノートPCはType-Cポートの方が一般的なので、どちらかというとデスクトップPC向けという印象だ。

アダプター側はType-Cで、PC側はType-Aとなる。ケーブルは1m前後

 スペック上の欠点となるのは、6GHz帯の最大速度が2882Mbpsとなっている点だ。PC内蔵のWi-Fi 7アダプター(Intel BE201など)は、6GHz帯で320MHz幅の通信が可能になっており、最大速度は5764Mbpsも可能となっている。

 本製品の最大の欠点は、こうした6GHz帯による近距離での超高速通信ができない点だ。

 とはいえ、競合製品となるバッファロー「WI-U3-2900BE2/N」(実売8980円)、エレコム「WDC-BE28TU3-B」(実売8712円)、TP-Link「Archer TBE400UH/A」(実売7840円)なども、同様に6GHz帯は2882Mbps対応となっており、USB接続ではどの製品でも320MHz幅は利用できない。ノートPC内蔵のWi-Fiと比べると、USBアダプターの方が近距離通信が遅くなるのは、現状は仕方がないと言えそうだ。

 なお、価格は、2026年2月25日時点のAmazon.co.jpで実売9214円と、前述したライバルよりも高めに設定されている。筆者が購入したタイミングではセールで実売7759円だったので、割安感があったが、通常価格は若干高めだ。欲しいならセールを待った方がいいかもしれない。

長距離通信が安定して速い

 気になるベンチマーク結果だが、いつもののように木造3階建ての筆者宅にてiPerf3による速度を計測したところ、以下のような結果になった(Wi-Fiルーターにはアイ・オー・データ機器のWN-7T94XRを使用)。

 なお、比較対象として、PC内蔵のWi-Fi 7アダプターの結果も掲載している。また、計測はアクセスポイント側でMLOが有効な状態で計測している。本製品もMLOに対応しており、通信状況に応じて、2.4/5/6GHzで自動的に最適な帯域に切り替えて通信が可能だ。

ベンチマーク結果
1F2F3F入口3F窓際
BE6500 Wi-Fi 7(Realtek 8912AU)上り1400652397252
下り1210885604276
Intel BE201(PC内蔵)上り1820484418117
下り1920931392170

※単位:Mbps
※サーバー:MINISFORUM MS-01 Corei5-12600H/RAM64GB/1TB NVMeSSD/10Gbps SFP+/Proxmox 9.1 LXC(Ubuntu 24.04)
※クライアント:Core Ultra 5 226V/RAM16GB/512GB NVMeSSD/Intel BE201D2W/Windows11 24H2
※アクセスポイント:アイ・オー・データ機器 WN-7T94XR(APモード、10Gbps接続)

 まずは、先に触れた欠点から見ていこう。本製品は6GHz帯で320MHz幅を利用できないため、最大速度が2882Mbpsで頭打ちになる。このため、PC内蔵のアダプターに比べると、近距離の速度が遅い。PC内蔵は2Gbps近い速度で通信できるが、本製品は1.2~1.4Gbps前後が上限となる。

 有線LANや回線など1Gbpsの環境なら十分だが、10Gbps環境では少し物足りない印象がある。

 しかし、この結果が長距離、つまり3階での計測だと逆転する。

 PC内蔵のアダプターは3階の入り口が下りで392Mbpsだが、本製品は下り604Mbpsで通信できている。また、もっとも遠く外部からの干渉も受けやすい3階窓際でも、PC内蔵アダプターが下り170Mbpsのところ、本製品は下り276Mbpsと、高い速度で通信できている。

 こうなると、大きな羽に内蔵されたアンテナの実力を認めざるを得ない。多少サイズが大きくても、見た目が派手でも、長距離で+100~200Mbpsの速度の上積みが期待できるというのが、この製品の最大の特長だ。

 なお、ついでに消費電力も計測してみたが、送信時が3W前後(送信時はアダプター側で信号を発信するので高くなる)、受信時が1.2Wほどとなった。この製品の場合、モバイル用途での利用は想定しにくいが、消費電力も問題ないだろう。

上り通信時の消費電力は3W前後

離れた場所に設置したデスクトップPCにおすすめ

 以上、UGREENのBE6500 Wi-Fi 7 USB Adapterを実際にテストしてみたが、このデザインであることによって、長距離での通信が高速かつ安定している製品となっていた。Wi-Fiルーターから離れた場所にPCを設置する場合、本製品を検討する価値があると言えそうだ。

 付属のUSBケーブルも1mと長く、電波状況のいい場所に設置することも容易なため、安定性や高い速度を狙った運用をしやすい。

 もちろん、設定も簡単で、初回はUSBストレージとして認識されるので、そこからドライバーをインストールすることで簡単に認識させられる。手軽さという点でも問題ないだろう。

 価格の変動幅が大きいので欲しいならセールを待った方がいいと思うが、本製品ならはでの長距離性能が必要なら、コストを負担してでも手に入れる価値がある製品と言えそうだ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。「できるWindows 11」ほか多数の著書がある。YouTube「清水理史の『イニシャルB』チャンネル」で動画も配信中