清水理史の「イニシャルB」

LANケーブルの”ややこしい”話 「カテゴリー8」ってどうなの?

Amazon.co.jpでも「カテゴリー8」ケーブルがたくさん販売されている

 通販サイトで、おすすめとして頻繁に表示される「カテゴリー8」のLANケーブル。「どうなの?」と質問されることもあるのだが、正直、答えに困っている。なぜなら、25Gbpsや40Gbpsでつながる機器がほぼないため、検証のしようがないからだ。もちろん、10Gbpsでつなぐことはできるが、だったら安いカテゴリー6Aでいい。このケーブルが、そもそもどんなものなのかを解説する。

「カテゴリー8」とは

 LANケーブルで、最近よく見かけるカテゴリー8「準拠」の製品は、ひと口に言えば高い品質であることが強調された製品だ。

 TIA-568.2-D(TIA-568-C.2-1で承認され568.2-Dに統合)の配線規格によって規定されているこのケーブルは、IEEE 802.3bq(25GBASE-T/40GBASE-T)の伝送規格に対応し、最大2GHzの周波数で最大25Gbps/40Gbpsの速度に対応する。ケーブル構造はシールドが必須となり(STP)、最大チャネル長(ケーブルの長さ)は30mとなっている。

カテゴリー8ケーブルの例

 用途としてはデータセンター配線が想定されており、正直、家庭用ではない。ただし、LANケーブルの場合、互換性が確保されているため、10GBASE-Tや1GBASE-Tなど、下位の速度の環境にも対応できる。

 現状、Amazon.co.jpなどでLANケーブルを検索すると、カテゴリー8のケーブルが多数リストアップされるが、もちろん、これらの製品を買っても問題ない。家庭内の機器をつなぐことはできるし、10Gbpsの回線やルーター、NASなどを使うのにも利用できる。

 ただし、高品質をうたっているため、価格は高い。

 製品によって価格は異なるが、例えば、同じ5mの製品で2026年2月時点での価格を比較すると、カテゴリー8の製品は税込1800円前後となる。同じ5mのカテゴリー6Aのケーブルは税込900円前後なので、2倍の価格となっている。

 カテゴリー6Aのケーブルは、最大10Gbpsまで対応できる上、扱いやすいUTPケーブルも選べるため利便性は高いので、個人的にはカテゴリー6Aで十分だと思うが、強いて言えば将来的に25Gbpsや40Gbpsのネットワークにも対応できるというのがカテゴリー8を選ぶ理由となる。

ケーブルの規格はどこで決められているのか?

 そもそもLANケーブルの規格は、ややこしい。前述したように、一般的には「カテゴリー●」(あるいは「CAT●」)のような名称で呼ばれているが、これはANSI(米国規格協会)、TIA(米国電気通信工業会)といった米国の団体によって定められた規格となる。

 冒頭で、TIA-568.2-Dと紹介したが、これが商業用構内配線に関する規格で、ケーブルの種類やコネクタ性能特性などが記載されている。

 これとは別に、国際的な基準としてISO/IEC 11801(構内配線)という規格も存在しており、こちらではツイストペアケーブル向けの規格として「Class ●」という名称が使われている。

主なケーブルの規格
ANSI/TIAISO/IEC帯域幅シールドコネクタ対応規格長さ
カテゴリー6AクラスEA500MHz任意RJ4510GBASE-T100m
カテゴリー7クラスF600MHz必須GG45/TERA10GBASE-T100m
カテゴリー8(8.1)クラスI2GHz必須RJ4525G/40GBASE-T30m
クラスII2GHz必須ARJ45/TERA25G/40GBASE-T30m

 ANSI/TIAのカテゴリー6AはISO/IECのクラスEA、カテゴリー8はクラスIに相当するのだが、ややこしいことに、ISO/IECでは25GBASE-T、40GBASE-T向けの規格が2つある。

 われわれになじみがある一般的なLANケーブル、つまりRJ45のコネクタを利用した規格はクラスIだが、これに加えてARJ45やTERAなどの特殊なコネクタを利用した規格としてクラスIIが存在する。

 このクラスIをカテゴリー8.1、クラスIIをカテゴリー8.2と表記する場合もあるが、こうなってくると、もはやUSB規格にも劣らないほど分かりにくい、混沌とした状況と言える。

 幸い、ISO/IECのクラス表記は、建設設備などのプロ向けの製品で併記されたり、ケーブルの被膜に印刷されたりする程度なので、普段はあまり意識しなくて済むが、要するにカテゴリー8は、ISO/IECではクラスIで、カテゴリー8.1と呼ばれることもあると覚えておくといいだろう。

「準拠」という用語のややこしさ

 ということで、市販の製品のほとんどは「カテゴリー8『準拠』」と記載されて販売されているのだが、この「準拠」という言葉が、またややこしい。

 古い話を掘り返すようで恐縮だが、2024年に、LANケーブルの「対応」「適合」「準拠」という言葉の使い方に関しての議論が話題になった。国内メーカーのエレコムは、この言葉の使い分けとして、「規格を満たしているもの、または自己適合宣言が可能な条件を満たしているもの」を「適合」、「ユーザービリティーを考慮し、基準を一部満たさないものの一般的な条件下での使用を想定した社内試験に合格したもの」を「準拠」と表記することを表明している。

 ということで、「準拠」の場合、前述したTIAの基準を完全に満たしているわけではないが、「一般的な条件下での使用」であれば問題ない品質を持っているということになる。

 うーん。ややこしい。

 実は、こうした背景には、家庭向けのLANケーブルの多彩な形状も関係している。少し前にカテゴリー7として販売されていたケーブルもそうだ。カテゴリー7はTIAに記載がなく、ISO/IECのクラスFで規定されているが、コネクタがGG45/TERAで規定されていた。市販されているカテゴリー7ケーブルはRJ45コネクタの製品だったので、そもそも「カテゴリー7準拠」とは何なのか? という議論があった。

 またカテゴリーとは別に、「フラットケーブル」や「極細ケーブル」などの特殊な形状の製品に関しても、「準拠」が示す「一般的な条件下での使用」がどの範囲を想定しているのかという疑問も残る。

 フラットケーブルや極細ケーブルは構造上、ノイズの影響を受けやすく、製品や使い方によって通信品質の差が出やすい。例えば、フラットケーブルは内部のケーブルが横並びで隣接していること、曲げたときに内部の位置関係が変わりやすいこと(内側は近づき外側は離れる)などから、内部のケーブル同士のクロストークが発生しやすいと言われている。

手元にあったカテゴリー6のフラットケーブルの内部

 前述した「準拠」の話題も、もともとは「フラットケーブルの新品に交換しても規定速度でリンクしない」というウェブ上の記事がきっかけになったと記憶している。最終的に用語の話題の方が大きくなってしまったので、見逃されているが、ケーブルの構造と使い方の組み合わせが品質に影響した可能性は考えられる。そうなると、消費者としては、どこまで「準拠」を信頼していいのか? という話になる。

 そもそもカテゴリー8はシールド必須なので、従来のような薄く、細いフラットケーブルや極細ケーブルは作れない可能性が高く、実際「これがフラット?」と思えるほど分厚いカテゴリー8ケーブルも実在する。なので、形状の問題と使い方の組み合わせの問題は発生しにくいかもしれないが、このあたりは未知数だ(詳しくは後述するが、現状は試せる環境が存在しない)。

カテゴリー8対応のケーブル内部。上がフラットケーブルで、下が通常のケーブル

品質の可視化はできないのか?

 では、「カテゴリー」という基準だけでなく、実際の試験結果や検証結果を示せばいいのでは? と思う人も少なくないはずだ。

 実際、品質を可視化している製品も存在する。例えば、数は少ないがETLやULといった記載があるケースもある。これらは主に安全性を示す認定となるが、プロ向けのケーブルなど、一部の製品には通信品質基準を満たしていることを示す記載(ETL Verified)が記載されているケースもある。

 また、ケーブルメーカーによっては、テスト結果を公表しているケースもある。例えば、以下は少々古いものの冨士電線株式会社のプレスリリースだが、アナライザーを使った信号の損失やノイズの影響などのテスト結果が掲載されている。

プロ向けの製品は品質が公開されている場合もある(Cat.8規格対応LAN用ツイストペアケーブル(F/UTP)の開発に成功(冨士電線株式会社)より)

 家庭用のケーブルであれば、ここまでの厳密さを求める必要はないが、前述した「準拠」の項目に記載された「一般的な条件下での使用を想定した社内試験」の結果などが公開されるようになると、ありがたい。

25Gbpsでつながる機器がない、マジでない

 もちろん、こうした検証をするのも筆者の仕事ではあるのだが、いかんせん、現状はカテゴリー8ケーブルを使って25/40Gbpsでつながる機器(つまり25GBASE-T/40GBASE-T対応)が、ほぼゼロという状況にある。

 筆者が知る限り存在する機器は、2021年にAlpha Networksが米国のDesignCon向けに発表したスイッチ(SNC-60x0-486T)で、ほかにもスイッチもネットワークアダプターも、SFP28用モジュールも見当たらない。

筆者が知る数少ない25GBASE-T対応製品。ほかには見当たらない

Upgrading from 10G BASE-T to 25G BASE-T is the current trend The Alpha Networks debuts the first 48-port 25G BASE-T Ethernet switch in the world(Alpha Networks)

 なぜ、機器がないのかというと理由は、本サイトに掲載されている大原氏の記事
さらに高速化! 40Gbpsもイケる『25G/40GBASE-T』の普及は何年後!?」が詳しいので、ぜひ参照して欲しいが、要するに消費電力が大きすぎて製品化が難しいという理由がある。この記事は2017年のものだが、結局、2026年の現在に至っても、25G/40GBASE-Tの製品が存在しない状況が続いている。

 というか、25GbpsならSFP28で、40GbpsならQSFP+で、光ファイバーを使ってネットワークを構築した方が効率的(消費電力も低いしノイズの影響も受けない)なので、わざわざRJ45コネクタのツイストペアで実現する意味がない。つまり、技術的にも難しいが、ニーズも低いことになる。

 そう考えると、現状、通販サイトであんなにオススメされるカテゴリー8ケーブルとは一体何なのか? という複雑な気持ちになる。将来的に25GBASE-Tや40GBASE-Tが登場したときの備えにはなるが、すでに10年が経過しても先が見えない。

カテゴリー6Aでいい

 ということで、毎回、LANケーブルの記事の結論は同じになるのだが、家庭用として買うべきLANケーブルは、カテゴリー6Aでいい。

 もちろん、価格が高いことを気にしないのであればカテゴリー8ケーブルを買ってもいいが、シールドケーブルなので取り回しもしにくいし、前述したようにもはやフラットと呼べる厚さではないので、あまりメリットもない。

 まあ、LANケーブルは、定期的に「カテゴリー6Aでいい」という記事を書かなければならないというのも、何とも複雑な心境だ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。「できるWindows 11」ほか多数の著書がある。YouTube「清水理史の『イニシャルB』チャンネル」で動画も配信中