清水理史の「イニシャルB」

10ギガ回線でLAN側1Gbpsはもったいない? スイッチを10G/2.5G/1Gで置き換えながら9つのケースで速度を検証してみた
2026年1月13日 06:00
10Gbpsの回線環境でLAN側が1Gbpsだと、具体的にどんな不都合・非効率があるのか? 反対に、10Gbpsだろうが1Gbpsだろうが変わらないこともあるのか?
そんな疑問に答えるべく、今回は10Gbps回線、10Gbps対応PC、10Gbps対応NASをそろえた環境で、スイッチだけ10G/2.5G/1Gに置き換えて、さまざまな用途における速度の違いを検証してみた。PCやスイッチなどLAN環境のアップグレードを検討している場合の参考にしてほしい。
具体的にどのケースでどれくらい速度が変わるのか?
先日、とある編集者との雑談で、「10Gbps回線に1Gbpsのままつないじゃダメか?」という話題になった。
キャンペーンなどで10Gbps回線への移行を検討しているが、LAN側のスイッチやネットワークカードをそろえる予算はないので、しばらく1Gbpsのまま使いたい。しかし、それで困らないか? 困るとしたらどういう点か? という素朴な疑問だ。
10Gbps回線に変えることで、1GbpsのLAN環境のままで速度が低下するとか、通信に不具合が起こるとかいった困りごとが発生するとは考えにくい。ただ、用途によっては10Gbpsと1Gbpsで通信速度に大きな差が出るケースと、そうでないケースがあるだろうから、自分の使い方から、1Gbpsのままだとどれくらい非効率か、あるいは10Gbpsにするメリットがあるかを考えるのがいいだろう。
ということで、回線、ルーター、スイッチ、NAS、PCの全てを10Gbpsで接続した環境と、スイッチのみ2.5Gbps対応に置き換えた環境、同じくスイッチのみ1Gbps対応に置き換えた環境で、日常的な利用シーンの速度の違いを検証してみた。
想定したケースは以下の9つだ。1~7はインターネット接続の検証で、8と9はLAN側に接続したNASへの検証になる。
- テスト1 Speedtest.net
- テスト2 Fast.com(Netflix)
- テスト3 ウェブ閲覧
- テスト4 ゲームダウンロード(Steam)
- テスト5 OneDrive同期(Upload)
- テスト6 共有リンクからのファイルダウンロード(SharePoint)
- テスト7 Zoomのビデオ会議
- テスト8 CrystalDiskMark(NAS)
- テスト9 NASへのファイルバックアップ
テストに使用した回線は10Gbps(フレッツ光クロス10Gbps、ASAHIネット IPIP接続)で、PCやNAS、ルーターも10Gbps対応のまま、スイッチのみを10G(Xikestor SKS1200-8XGT)、2.5G(エレコム EHC-LQ01-S)、1G(Corega SW05GTV2B)の3製品に交換して検証した。スイッチを交換することにより、PCやNAS、ルーター(LAN側)も、自動的に10Gbps、2.5Gbps、1Gbpsとスイッチの対応速度に合わせて、自動的に接続速度が変化する環境となる。
テスト1/テスト2 速度測定サイトの結果→大きく差が出る
まずは、Speedtest.netとFast.comの速度測定サイトによるベンチマークテストを実施した。Fast.comに関しては動画配信サービスとなるNetflixの目安としても利用している。
まずは、Speedtest.netだが、こちらはスイッチの対応速度に応じて値も向上する結果となった。以下のように、1Gbpsのスイッチでは900Mbps前後、2.5Gbpsのスイッチでは2.3Gbps前後の速度と、スイッチの速度の上限となっている。
10Gbpsのスイッチでは、さすがに10Gbpsの速度がフルに出るわけではない。ISPやサーバー側の状況次第となるが、筆者宅の環境ではだいたい6Gbps前後が上限となった。
一方、Fast.comは1Gbpsと2.5Gbpsのスイッチを使った場合は、下り500~600Mbps前後、10Gbpsのスイッチを使った場合のみ下り5.5Gbpsとなった。2.5Gbpsのスイッチでは上りが2.4Gbpsとなっているので、もっと値が上がってもよさそうだが、数回計測しても同じ結果となった。
つまり、いずれにせよ、速度測定サイトなどのベンチマークツールを利用するケースでは、高速なスイッチを利用するほど(LAN側のネットワーク環境を高速にするほど)、より高い結果を得られることになる。
ただし、Netflixは動画を快適に視聴できる速度の目安として、4K動画で15Mbps以上を推奨している(参照:Netflix推奨インターネット接続速度)。このため、動画視聴という観点で考えると、1Gbpsのスイッチのままでも問題ないことになる。
テスト3 ウェブ閲覧→差が出ない
続いて、差がほぼ出ないケースを見てみよう。ウェブ閲覧だ。ウェブの場合は、転送するデータ量が少なく、短時間で処理が完了するため、10G/2.5G/1Gの速度の差が出にくい。
以下は、Edgeの開発者向けツール(F12)を利用して、ページの主要なコンテンツの読み込みが完了するまでの時間(LCP)を計測した結果だ。対象となるサイトは、YouTube(youtube.com)とした。
結果は、どのケースでもほぼ同じで、2.5秒前後となった。指標として2.5秒以下だと快適、以上だとページの改善が必要という結果になるが、1Gbpsスイッチでも、2.5Gbpsスイッチでも、10Gbpsスイッチでも、結果は変わらない。
このように、ウェブ閲覧であれば、10Gbps回線に1Gbpsでつないでいても違いを体感することはないと言える。
テスト4 ゲームダウンロード→差が出る
続いては、Steamを利用したゲームのダウンロードとなる。Steamアプリを利用してELDEN RINGをダウンロードして、速度の違いを観察したのが以下の画面だ。
こちらは、1Gbpsスイッチの場合900Mbps前後、2.5Gbpsスイッチの場合1.6Gbps前後、10Gbpsスイッチの場合2.4Gbpsと、スイッチの速度に応じてダウンロード速度も向上する結果となった。
ただし、今回の検証では10Gbps環境であってもダウンロードの上限は2.4Gbps前後が限界で、それ以上の速度にはならなかった。テスト1のように回線の上限は5~6Gbps前後だが、Steamのサーバーに複数ユーザーが接続して帯域を共有していることを考えると、2Gbps前後でも十分という印象だ。
今回の結果を見る限りでは、スイッチを2.5Gbpsにした場合のコスパが高そうだが、なるべくサーバーや回線の上限まで速度を使い切りたいのであれば、やはり10Gbpsスイッチを選択した方がよさそうだ。
テスト5 OneDrive同期→差が出ない
OneDriveの同期は、テスト3のウェブ閲覧と同様に帯域の差が出ない代表的な例となる。以下は、デスクトップに5GBほどのISOファイルを保存し、OneDriveとの同期中の様子をタスクマネージャーで観察した様子だ。
1Gbps、2.5Gbps、10Gbpsのどのスイッチを利用した場合でも、600~800Mbps前後となり、ほぼ差がない。
これは、OneDriveが通信を制御しているためだ。バックグラウンド処理となるファイルの同期で帯域をフルに使ってしまうと、PC上のほかのアプリに影響が出てしまうため、少しずつ、間隔を空けながら通信している。
このため、スイッチを交換してLAN側を高速にしても、OneDriveの同期速度は変わらない。
テスト6 共有リンクからのファイルダウンロード→若干差が出る
続いて、共有リンクを使ったファイルのダウンロードを検証してみた。法人向けのOneDrive(SharePoint)を利用し、650MBのファイルをダウンロードするのにかかった時間をストップウォッチで計測したのが以下のグラフだ。
| 1G | 2.5G | 10G | |
| 共有ダウンロード(650MB) | 33 | 32 | 20 |
※単位:秒
1Gbpsと2.5Gbpsのスイッチを使ったケースでは、ダウンロード時間はほぼ同じ32~33秒となり、10Gbpsのスイッチを使ったケースのみ20秒と高速化された。
2.5Gbpsでもう少し時間が短くなってもよさそうだが、1Gbpsと変化がなかった。Fast.comのときも同様に2.5Gbpsと1Gbpsで差がなかったので、何らかの要因があると思われるが、詳細は不明だ。
とはいえ、10Gbpsスイッチでは、ブラウザーのダウンロードの様子を見ていても、ダウンロード済みとして増えていくファイル容量の上がり幅が明らかに大きいので、大きなファイルをダウンロードする機会が多い場合は、LAN側を10Gbpsに高速化する価値があると言えそうだ。
テスト7 Zoomのビデオ会議→差がない
Zoomのビデオ会議もほとんど差がでない用途のひとつだ。以下は、Zoomのクライアントヘルスチェックツール(Ctrl+Shift+Alt+D)を利用して、ミーティングテストを実施して帯域を確認した様子だ。
映像と音声を伝送している状況で、約1100kb/s(9Mbps前後)の帯域となっている。ビデオ会議の場合、10Mbps前後が通信帯域の目安と言われているため、スイッチが1Gbpsでも、2.5Gbpsでも、10Gbpsでも、この結果は変わらない状況となった。
つまり、LAN側のネットワークを2.5Gbpsや10Gbpsに高速化したからといっても、ビデオ会議が快適になるとは限らない(詳細は後述するが複数同時通信は話が別)。
テスト8 CrystalDiskMark→大きな差が出る
ここからは、10Gbps対応のNASに対して実施したLAN側での検証となる。PCも10Gbps対応なので、スイッチが10Gbps対応なら10Gbpsで、2.5Gbps対応なら2.5Gbpsで、1Gbps対応なら1Gbpsでリンクすることになる。
まずは、ベンチマークツールのCrystalDiskMarkの結果を以下に示す。
これはテスト1と同様に高い負荷をかけるベンチマークツールなので、ネットワークの速度の違いが結果の違いに直結する。
1Gbpsスイッチの場合は約115MB/s(900Mbps)、2.5Gbpsスイッチの場合は約255MB/s(2Gbps)、10Gbpsスイッチの場合は約1169MB/s(9.3Gbps)と、スイッチを高速化するほど値も向上した。
なお、10GbpsスイッチのWriteが遅いのは、NASの構成によるものだ。今回はSATA SSD×4台のRAID5構成で検証したため、パリティの書き込み処理などの影響でWriteは5Gbps前後が上限となっている。
テスト9 NASへのファイルバックアップ→差が出る
最後の検証は、PC→NASのバックアップを想定したファイルのコピーとなる。少量の大きなサイズのファイル(動画10ファイル合計2.64GB)と、大量の小さなサイズのファイル(写真2000ファイル合計5.7GB)をrobocopyを利用してコピー完了するまでの速度を計測した。
| 1G | 2.5G | 10G | |
| 写真(2000枚/5.7GB) | 89 | 56 | 40 |
| 動画(10ファイル/2.64GB) | 26 | 11 | 4 |
※単位:秒
結果は、スイッチの違いによって速度にも違いが現れるが、その度合いはファイルサイズに影響すると言える。
ファイルサイズが大きな動画ファイルの転送のケースでは、1Gbpsのスイッチでは26秒(800Mbps前後)、2.5Gbpsのスイッチで11秒(1.8Gbps前後)、10Gbpsのスイッチで4秒(5Gbps前後)となっており、スイッチが高速な方が短時間でファイルを転送できている。
特に10Gbpsスイッチでは4秒で完了するため、「1、2、3、4」と数えている間にコピーが終わってしまい、体感的にも非常に速いと感じられる。このため、大きなファイルを扱う機会が多い場合は、LAN側(PC、スイッチ、NASともに)を10Gbpsにアップグレードするメリットは大きい。
一方、ファイルサイズが小さい写真の場合は、差は出るものの、そこまで違いは大きくない。1Gbpsスイッチで89秒(500Mbps前後)、2.5Gbpsスイッチで56秒(800Mbps前後)、10Gbpsスイッチで40秒(1.1Gbps前後)なので、時間的には早くなっているが帯域を使い切っているわけではない。このため、小さいファイルが多い場合、10Gbpsまで上げなくても、2.5Gbpsスイッチでも十分という印象だ。
複数同時通信を考えると……
以上、今回は10G/2.5G/1G対応のスイッチによって、普段使いの環境がどう変わるのかを検証してみた。
普段は速度測定サイトやベンチマークツールの結果でしか判断しないが、実際の用途を見てみると、ウェブ閲覧やOneDrive同期、ビデオ会議など、ほぼ変わらない用途があることも明らかになった。
となると、LAN側はもちろん、インターネット回線も1Gbpsのままでいいんじゃないか? と思うかもしれないが、今回のテストはあくまでも単体のPCでの結果となる点に注意してほしい。家庭やオフィスなどには、複数台の端末が存在し、それらが同時に通信するのが普通だ。こうしたケースでは、通信の組み合わせによって1Gbpsでは帯域が足りなくなるケースが考えられる。
身近になった10Gbps回線を導入することをおすすめしたいが、導入後に、PC、NAS、スイッチなどのLAN側の機器をどこまでアップグレードするかは、今回のテスト結果や複数台接続の状況を検討して決める必要がある。
個人的には、10Gbpsはまだハードルが高いが、2.5Gbps対応のスイッチやUSBネットワークアダプターは安くなってきているので、少なくとも2.5Gbpsにアップグレードしておくことをおすすめする。今回の検証結果のように、ゲームやファイルのダウンロード、NASの利用などが快適になるはずだ。













