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NTT、世界初の200GHz級の動作速度と高信頼性を両立した次世代光通信向け受光素子を実現

 NTT株式会社は3月12日、動作速度200GHz級の受光素子を実用レベルの信頼性で実現したと発表した。同社によると、実用レベルで実現したのは世界初だといい、同動作速度で世界最高の受光感度も達成している。

 急増する通信トラフィックへの対応や電力消費の抑制のため、同社は高速光通信技術の開発に取り組んでいるが、これまで、200Gbaud(シリアル通信において1秒間に何回信号の変調が行われるかを示す数値の単位で、通信速度の指標)級以上の通信に用いられる受光素子は、光通信の高速化の鍵となる技術である一方で、既存技術は、高速化に伴う感度の劣化や、信頼性の低下が課題だったという。

 今回の研究では、200GHzを超える動作速度と、長期使用に耐える信頼性を兼ね備えた受光素子を開発。超高速受光素子として、実用レベルの長期信頼性を実証するとともに、データセンター内で使用される波長(1310nm)の光信号に対して、200GHzを上回る超高速動作における、世界最高の受光感度を達成したという。

 同時に、データセンター内での高温環境を想定した受光素子の信頼性評価では、85℃の動作条件で50年に相当する高い長期信頼性を実現したとしている。

 同社は技術のポイントとして、次の3点を紹介している。

受光感度を高める干渉型の垂直入射構造

 受光素子の高速化と高感度化はトレードオフの関係にあり、従来の高速通信向けでは、長い距離で光を吸収でき感度を確保しやすい「導波路型」の構造が用いられてきたが、構造が複雑になりやすく信頼性の低下などが課題だったという。一方で、垂直入射型は構造がシンプルで高信頼化が可能だが、受光感度の確保が課題だった。

 同社の設計技術をさらに発展させ、光学設計とバンド設計をともに最適化することで、干渉によって光を閉じ込めて感度を高める垂直入射構造を開発した。同技術では、波長1310nm、動作速度200GHz級の受光素子で世界最高の受光感度を達成した。

信頼性を高める階段状の反転型構造

 動作速度の向上には受光素子の小型化が重要だが、小型化に伴って、劣化に弱い素子の側面を流れる暗電流の密度が増加し、故障につながることが課題だった。

 同社では、素子の動作領域を内部に閉じ込めて側面の暗電流を抑制する反転型構造を開発した。一般的な受光素子の暗電流はnA(10億分の1A)オーダーだが、同技術により初期状態の暗電流を世界最小級となるpA(1000分の1nA)オーダーまで低減し、高い信頼性を確立した。

製造コストを低減する裏面への半導体レンズ集積技術

 動作速度の向上には受光素子の小型化が重要になり、高い受光感度を得るためには、受光素子の中の光電変換領域と信号光が照射される位置を合わせる必要がある。これは、トランシーバの組み立ての際に位置ずれを抑える精密な技術が必要となり、コスト面で課題があった。

 同社では、半導体の凸レンズを受光素子に作り込み、受光領域を広げることで許容度を高める技術を開発。同技術を用いることで、光の位置ずれ許容度を2倍以上改善し、トランシーバの組み立てを効率化・低コスト化した。

技術のポイント

 同社では今後、毎秒3.2テラビット級の高速光通信の実現に向けて、この受光素子技術を活用した各種高速デバイスの開発を推進するとともに、NTTイノベーティブデバイス株式会社にて、本技術の製品化を進める予定だとしている。