INTERNET Watch 30周年

【2011年のINTERNET Watch】東日本大震災・原発事故後の情報共有にインターネットが活躍。年末にはTwitterの「バルス」が記録に

2011年の出来事

 2011年(平成23年)3月11日に東日本大震災、および福島第一原発事故が発生。発生直後からの連絡や情報共有の手段として、その後の情報インフラとして、インターネットが大いに存在感を示した。

 海外では、チュニジア、エジプトなどアラブ世界各国で「アラブの春」と呼ばれた反政府デモや民主化活動が連鎖的に発生。この動きにも、インターネットが大きな役割を果たした。

 そのほか、テレビ放送の電波が現在の地デジ(地上デジタル放送)に完全移行し、アナログ放送が終了したのがこの年の7月。同じく7月にはサッカー女子W杯で「なでしこジャパン」が優勝。「なでしこジャパン」はこの年の新語・流行語大賞になった。新語・流行語トップテンには、震災関連の言葉複数のほか、「スマホ」も入っている。

2026年2月に30周年を迎えたINTERNET Watchは、1996年2月に有料メールマガジンとして創刊し、1997年1月にウェブサイトを開設した。ここでは2026年の視点から2011年の記事を10本取り上げ、当時を振り返る。

1. 東日本大震災で、計画停電情報、エンジニアの対応など発信

東京電力、3月15日(火)の計画停電の実施予定を発表

 3月11日(金)午後発生した東日本大震災の後、翌12日は更新を行わなかったが、13日にはスタッフが自宅から更新を行い、Googleマップが被災後の衛星写真公開mixiの関連コミュニティ紹介震災に便乗した偽・誤情報チェーンメールへの注意喚起などの記事を公開している。

 緊急のニュースなどにも対応できるようリモートで更新できる体制を持っていたが、複数のスタッフが手分けしてリモートで更新するのは珍しいことだった。震災でインプレスのオフィスも大きな被害を受け、週明け14日には、皆で片付けから始める必要があった。

 上記記事は、原発の稼働停止や震災の影響をうけたほかの発電所の停止などにより電力不足になったことを受け、東京電力が3月14日から開始した計画停電に関する情報を紹介したもの(14日は多くの計画停電が見送られた)。3月25日に掲載した計画停電の対象地域グループ化に関する記事は、この年で2番目に読まれた記事となっている。

 震災発生直後は、携帯電話各社で輻輳(通話やSMSの利用が集中しすぎて渋滞したような状態になること)が発生したため、インターネットを利用し、TwitterなどのSNSで情報を共有した人も多かった(現在国内で広く利用されている「LINE」は、震災発生時にはまだ提供されていない)。交通関係の情報の共有にもインターネットが大いに活躍。Googleマップが、ホンダらの協力を受けて公開した通行実績情報マップを15日に紹介している。通行実績情報マップは、この年のグッドデザイン大賞に選出されており、これ以降の災害発生時にも作られるようになる。

 当時の出来事については、震災時の各社・団体のエンジニアの活動についてレポートした連載「東日本大震災、そのとき技術者は」もご覧いただきたい。やじうまWatchでは、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の「ヤシマ作戦」(日本中の電力を集めて敵を討伐した作戦の名称)にちなんだ節電呼び掛けの動きや、避難所がAmazonの「ほしい物リスト」を使って救援物資を募集したエピソードなどを紹介している。

2. Adobe、「Flash」モバイル版の開発を中止し、HTML5への注力を発表

米Adobe、モバイル版「Flash Player」の開発を中止、今後はHTML5に注力

 インターネット普及初期からアニメやインタラクティブコンテンツの開発・再生プラットフォームとして浸透していた「Flash」だが、2010年4月にiPhone版の開発打ち切りを発表していた。続いて、この年11月にモバイル版プレイヤーの開発中止と、HTML5への注力を発表したのが、上記の記事。

 これまでの深刻な脆弱性が多発していたこと、HTMLだけで高度な表現が可能になっていたことからの方針転換で、2017年に7月にはPC版プレイヤーについても2020年末での終了が発表された。

3. 「PlayStation Network」で不正アクセス、7700万件の個人情報が流出し3カ月近くサービス停止

ソニー、7700万件の個人情報漏えいに対して謝罪 5月中にPlayStation Networkのサービス再開を目指す

 4月、ソニーのPlayStation Networkで不正アクセスが確認され、サービスを停止。調査の結果、個人情報約7700万件が流出する、極めて大規模な個人情報流出事例となった。サービスは4月21日頃から接続障害が発生した状態になっており、27日に不正アクセスや情報流出の可能性が公表された。5月に入って緊急記者会見が設定され、説明が行われたのが上記の記事。日本でのサービスが全面再開したのは7月6日のこととなり、3カ月近くサービスが停止したことになった。

4. 「スカスカおせち」「ペニオク」と、ネット商取引の問題が相次ぐ

グルーポン、「バードカフェ謹製おせち」問題を受け今後の対応発表
ペニーオークションで撤退相次ぐ、返金に応じない事業者も

 グルーポンは米国発のサービスで、2010年に日本に進出していた。クーポンを多くのメンバーが共同購入することで、欲しい物を安価に購入できる(多数の注文が確定した状態になるため、安価な提供が可能になる)ことが特徴だが、この年の正月用にバードカフェがサービス上で提供した「謹製おせち」は、テレビのニュースなどで「スカスカおせち」と言われたほどサンプル写真とは大きく異なる内容だったうえに配達の遅延も発生し、大問題となった。

 ペニーオークションは、一般的なネットオークションと異なり、入札するたびに手数料がかかることが特徴。これにより、落札価格は一般的なネットオークションよりも安くなりがちだが、参加者は手数料により高額の支払いを求められることがある。上記記事では、トラブルの多発と事業者の相次ぐ撤退を報じている。この年の3月には、消費者庁が事業者3社に不当表示に対する措置命令を行っている。

 ペニーオークションに関しては、翌2012年に詐欺および複数の芸能人が関係したステマ(ステルスマーケティング)事件が発覚する。

5. 外からアクセス可能な自宅ストレージを簡単に作る「Pogoplug」

パーソナルクラウドを実現する「Pogoplug」、2月4日発売

 2月に「Pogoplug」(ポゴプラグ)の国内販売が発表された。自宅内のLANに接続した本体のUSBポートにHDDを接続することで、自宅外からもインターネット経由でアクセス可能にするデバイス。非エンジニアでも簡単に設定でき、自分専用のクラウドストレージ感覚で利用できる、という意味での「パーソナルクラウド」デバイスのはしりと言える製品だ。

 なお、メーカーのCloud Enginesは、同年6月にデバイス不要でPogoplugの機能を実現できるソフトウェアを公開している。

6. 「Google+」公開、AKB48を起用したプロモーションを展開

Google+で「AKB48紅白対抗歌合戦」を生中継、20日18時から

 国内のSNSではTwitter、mixiが人気で、年始からFacebookも話題になり、Instagramはまだ渋い写真共有サービスといったポジションにあったこの年の6月、Googleが新しいSNS(Googleのサービス全体にソーシャルな要素を取り入れるものと位置付けられている)である「Google+」を発表、9月に一般公開した。

 12月に、AKB48がGoogle+を利用することが発表され、上記記事で、AKB48のライブイベントをGoogle+でライブ中継することを告知している。翌2012年に入っては、Google+上での「ぐぐたす選抜」企画選抜総選挙のライブ配信なども行っている。

 検索サービスなどでは強力なGoogleだが、SNS・ソーシャルメディア的なサービスでは成功できておらず、サービスの設計が先進的すぎるなどとの指摘もある。前年の2010年には、2009年に発表したコラボレーションサービス「Google Wave」を終了。終了発表のタイミングで解説書を執筆していた著者が「追悼イベント」を開催するという珍事もあった。Google+は2019年までサービスを継続した。

7. 動画配信サービスの“黒船”、「Hulu」が日本上陸

月額1480円で海外ドラマや映画が見放題、米国で人気「Hulu」が日本でも開始

 この年の9月、動画配信サービスのはしりとして「Hulu」が日本でサービスを開始した。当時「Netflix」「Amazon Prime Video」といった動画配信大手も米国で展開していたが、日本上陸はHuluが初。Huluにとって、日本が初の米国外でのサービス提供だった。

 Huluの日本上陸は当時「黒船」とも言われた。当時、一部の対応テレビ向けに配信サービスを提供していたU-NEXTは2012年5月にPC向けサービスを発表、YouTubeは12月に映画などの有料配信開始など、対抗と見られる動きもあった。その後、2014年2月に、Huluの日本事業は日本テレビに売却される。

8. 「LINE」公開4カ月で世界300万ダウンロード

「PC事業で一発逆転はない、スマホ事業で頂点を」~新生NHN Japan ライブドア出澤社長、ネイバー舛田室長が語る経営統合の狙い

 この年の6月に「LINE」が公開された。本誌ではアプリ公開の自体は取り上げておらず、上記の記事は当時の開発元であるNHN Japanがネイバージャパン、ライブドアの2社との経営統合を発表した際のインタビューで、当時、公開から約4カ月で世界累計300万ダウンロードを達成しており、「スマホは国境がないに等しい。LINEに関しては、良いものをリリースすれば世界中で使ってもらえるという経験ができました」とのコメントがされている。

9. スマホに説明なくインストールされていた“覗き見”ソフト「Carrier IQ」発覚

AndroidとiOS、プライバシーを丸裸にするソフトが仕込まれていたことが発覚 提供元は「携帯事業者とメーカーの品質管理のため」と主張

 12月、米国のセキュリティ研究者が、多くのスマートフォンに「端末中で起こるほぼすべての動作を記録し、携帯キャリアや端末メーカーに送信」するソフトウェアがユーザーへの説明なくインストールされていることを発見し、「スマホ覗き見」ソフトとして問題に。これが、この年最も読まれた記事だった。国内で販売されている製品に関して、当時本誌でも調査を行っていた。各社の詳しい見解はケータイWatchが紹介している。

 本誌ではこのほか、Carrier IQの機能自体はサービス向上につながり得るもので、ユーザーへの事前の説明なくインストールしていたメーカーと通信事業者に問題がある、との研究者の見解を紹介している。

10. Twitterで「バルス」の秒間ツイート数が世界最多記録に

「バルス」の瞬間のツイート数は秒間2万5088件、Twitterが「新記録」公式発表

 当時の素朴なTwitterの盛り上がりを象徴するニュース。12月9日に「天空の城ラピュタ」がテレビ放送された際、「バルス」のツイートが2万5088件に達し、それまで同サービスでの秒間ツイート数記録8868件(ビヨンセの妊娠発表時)を大きく上回った。上記記事では、この数字が米Twitterでは「にわかに理解しがたいところもあったようだ」とのことで、セキュリティの確認などが行われたエピソードを紹介している。

 なお、2013年には、11月11日に「ポッキー」を含んだツイート数が24時間で371万44件となりギネス世界記録になったと、江崎グリコが発表している。