INTERNET Watch 30周年

【2010年のINTERNET Watch】iPadも発売された「電子書籍元年」、通信業界は「光の道」構想で激論

2010年の出来事

 2010年(平成22年)9月、沖縄県の尖閣諸島付近で、違法操業する中国の漁船を取り締まろうとした海上保安庁の巡視船に対し、漁船が衝突する事件があった。衝突時の動画が流出してYouTubeに公開されたことも大きな騒動となり、本誌では当時の連載「山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿」で言及している

 前年発足した鳩山由紀夫内閣は、普天間基地移設問題やいわゆる「政治とカネ」の問題により急速に支持を失い、この年6月に菅直人内閣が誕生。党内の有力者であった小沢一郎氏から距離を置いた組閣や政権運営から「脱小沢」が流行語となった。が、民主党の支持は回復せず、7月の参院選で民主党は敗北し、過半数を割る。

 流行語としてはこの年、かつてTwitterでよく使われた「~なう」が新語・流行語大賞トップテン入りしている。

2026年2月に30周年を迎えたINTERNET Watchは、1996年2月に有料メールマガジンとして創刊し、1997年1月にウェブサイトを開設した。ここでは2026年の視点から2010年の記事を10本取り上げ、当時を振り返る。

1. 「光の道」構想で通信各社が激論、年末に総務省が基本方針示す

総務省、「光の道」構想の基本方針を決定

 「光の道」とは、前年から総務省主導で議論が進められてきた、「2015年頃を目途に、日本のすべての世帯にブロードバンド回線を普及させる」という構想。ソフトバンクはこれを全面的に支持し、5月に孫社長がUstreamで5時間ライブ配信を行うなどして、国費ゼロで実現する方法があると主張した。また、11月には片山善博総務大臣に要望書を提出している。

 NTTは、9月に総務省のタスクフォースに提出した資料を公開。強制的な移行計画の策定は困難だと主張した。そのほか、5月にはCATV連盟が意見表明、6月には電力会社系の通信事業者6社が合同記者会見を行い、国民を巻き込んで議論を深める必要性を訴えている。4月に開催されたブロードバンド推進協議会のシンポジウムのレポートでは、楽天の三木谷浩史会長がNGNの閉鎖性について批判したことを紹介している。

 12月に総務省がとりまとめた同構想に関する基本方針を取り上げたのが、上記の記事。NTT東西が保有する家庭へのアクセス回線などのボトルネック設備を他社も同等に利用できることが必要だとの指摘を受け、具体的内容を早急に確定し、関係法律の改正案を次期通常国会に提出するとした。また、接続料の低廉化についても検討する方針を示した。ソフトバンクが提案していた、NTT東西のアクセス回線部門分社化は退けている。

2. 「電子書籍元年」のこの年、初代iPadが発売

Appleがタブレット型端末「iPad」発表、電子書籍市場にも参入

 この年4月に初代「iPad」が米国で発売、あまりの人気に米国外での販売開始が延期となり、日本では5月発売となった。「iBooks」アプリを搭載し、電子書籍用端末としても期待された。

 なお、日本向けiBooks Storeがオープンするのは2013年。大手電子書籍サービスの動向では、日本のKindle Storeオープンは2012年のこととなる。が、この年多くの電子書籍端末やサービスが国内でリリースされており、本誌では2010年を「電子書籍元年」として、年末に関連記事をまとめている。

3. 「ダウンロード違法化」の改正著作権法施行、警察庁はP2P観測を開始

1月1日からダウンロード違法化、Winny/Shareノード数に変化は?
警察庁が「P2P観測システム」を正式運用

 この年1月1日に、いわゆる「ダウンロード違法化」を盛り込んだ改正著作権法が施行された。従来、著作物をダウンロードする行為は「私的使用のための複製」として、法的には問題ないとされていたが、違法にアップロードされた著作物を、違法にアップロードされたものを知りながらダウンロードする行為は違法とされた(この時点では音楽と映像コンテンツが対象。2021年からはすべての著作物が対象となっている)。

 これは、当時まだ利用者が多かったP2Pファイル共有ソフトによる違法な著作物のやり取りが想定されたもの。Winnyのほか、「Share」(シャレ)というソフトウェアの利用者もこの頃多かったが、上記記事ではノード数の大幅減少を報じている。

 同じく1月1日、警察庁がP2Pファイル共有ネットワーク観測システムの正式運用を開始した。

4. 「radiko」がサービス開始

「radiko.jp」が本格配信開始、栃木・和歌山など5県が新たにエリアに

 この年3月から実証実験としてサービスを開始していたIPサイマルラジオ(地上波ラジオ放送と同じ内容のインターネット配信)「radiko」が、12月に運営会社を設立し、本格配信を開始した。当初は全国をカバーしておらず、実証実験段階では東京と大阪のラジオ局と周辺都府県を対象としており、その後、北海道、名古屋、福岡、さらに関東・関西の周辺エリアへとサービス範囲を広げていった。

5. 「Dropbox」「Evernote」など個人向けクラウドサービスが人気

オンラインストレージ「Dropbox」のクライアントソフトが正式版に
話題の“パーソナルクラウド”サービス「Evernote日本語版」開始

 高速通信環境や可搬性が高いデバイスの普及を背景として、デバイス内だけ(ローカル)で完結するのでなく、ネットワーク上のサービスを利用して作業する「クラウドコンピューティング」が、2008年頃から話題になっていた。2026年の今ではごく当たり前だが、あるデバイスで保存したデータがほかのデバイスから取り出せたり、ユーザー間での共有が簡単にできたりといった利便性を魅力とする個人向けのクラウドサービスがこの年あたりから流行りだした。

 クラウドストレージの「Dropbox」は2008年にスタート。上記ニュースではWindowsとMacのクライアントソフトが正式バージョンになったことを紹介している。日本語版の提供は2011年になるが、通常は特に操作を必要とせずクラウド同期が行われるので、英語が苦手でも問題なく利用できた。

 「Evernote」も2008年にスタートし、2010年に日本語版の提供を開始したことで、国内での普及に弾みがついた。上記記事では「パーソナルクラウド」と紹介しているが、OneNoteやNotionの原型とも言えるオンラインノートアプリ。スキャナーやカメラなどのさまざまなデバイスから、さまざまなデバイスのデータを取り込んでまとめられることが、当時では斬新であり便利だった。

6. 今のKADOKAWAに至る第一歩、角川グループと「ニコニコ動画」が提携

角川グループとドワンゴが業務提携、ニコ動で電子書籍や公式チャンネル展開

 10月、角川グループホールディングスとドワンゴは、角川グループのコンテンツをニコニコ動画で展開するなどの業務提携を発表した。

 両社は2014年に経営統合を発表、10月に株式会社KADOKAWA・DWANGOを設立する。現在のKADOKAWAグループのかたちになったは2019年7月。

7. 東京都の青少年健全育成条例改正で、「非実在青少年」への規制が話題に

都の青少年健全育成条例改正案、条文が明らかに、ネット・携帯関連も修正 「非実在青少年」の文言は削除

 東京都青少年の健全な育成に関する条例(青少年健全育成条例)は、18歳未満の青少年の健全育成を目的とし、不健全図書の指定などを定めたもので、2005年の改正において、フィルタリングの利用が加えられていた。この年に改正案が提出されたが、3月の段階では、フィルタリング解除手続きの厳格化のほか、不健全図書関連で「非実在青少年」(アニメ、マンガ、ゲームなどフィクションの作品の青少年)の性的描写のまん延防止などが盛り込まれていて物議を醸した。

 その後、6月の都議会本会議でこの改正案は否決。12月の本会議に向けてあらためて作成された改正案について取り上げたのが上記記事で、フィルタリングに関しては「性能及び利便性の向上に努める」のような文言となり、「非実在青少年」の文言は削除されている。この改正案は「慎重に運用すること」との付帯決議付きで可決された。

8. Googleが中国から撤退。中国からの攻撃も示唆

Googleが中国からの撤退示唆、「検閲をこれ以上容認できない」

 Googleは2006年に中国でサービスの提供を開始しており、その際に、中国政府による検閲を受け入れたことも発表していた。2010年1月の上記記事では、中国向けサービス「Google.cn」における検閲をこれ以上容認する意思はないと表明し、中国を発信源とする“高度に洗練された”攻撃や、中国の人権活動家のGmailアカウントへのアクセスにも言及している。なお、中国政府はこれについて反論している

 この後3月に、Googleは中国からの撤退を発表した。当時の中国メディアやソーシャルメディアでの受け止めが山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿」で紹介されている。

9. 「まとめ」が注目される中、「NAVERまとめ」が急成長

「NAVER」月間訪問者が134万人に、「NAVER まとめ」効果で

 CGM(Consumer Generated Media)の流行でウェブ上のコンテンツが爆発的に増える中、特定のテーマに沿って情報を収集・整理した「まとめサイト」「まとめページ」が重宝がられ、検索サービスでも結果の上位に表示されやすかった。そのような状況下で、2009年7月に登場したのが「NAVERまとめ」。ユーザーがまとめページを作成できる「キュレーション・プラットフォーム」をうたっていた。

 上記記事は、検索サービスなども備えた「NAVER」のウェブサイトの月間訪問者数が順調に伸びており、NAVERまとめが牽引しているというニュース。運営元であるネイバージャパンの親会社NHN Corporationは2011年に「LINE」の提供を開始し、2013年にLINEに商号を変更、2019年には11月にヤフーとの経営統合を発表した。その後、2020年9月にNAVERまとめは終了している。

10. 「Instagram」がサービスを開始

やじうまWatch 「Instagram」に投稿した写真は権利放棄とみなされるらしいと話題に ほか

 Instagramはこの年の10月にiPhoneアプリとして公開。上記の「やじうまWatch」の記事は本誌が初めてInstagramを取り上げたもので、「今年後半から大流行」として、「さまざまなフィルターで加工した写真を投稿して共有するアプリで、写真版Twitterと呼ばれることもしばしば」と紹介しつつ、利用規約に、投稿した写真がフリーで使えるとする内容があることを指摘している。

 2012年に、InstagramはFacebook(現Meta)に買収された。