清水理史の「イニシャルB」
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USB4接続10GbEアダプターが1.5万円、しかもコンパクト! AliExpressで購入したIOCREST「IO-HTB1131-GLAN」を試す
2025年2月17日 06:00
AliExpressにて、1.5~2.5万円程度でUSB4接続の10Gbps対応有線LANアダプターが購入できるようになってきた。国内で購入できるThunderbolt接続の製品と比べると、サイズも小さく、価格も安いのが特徴だ。個人的にノートPC用の10Gbps対応アダプターを探していたので、とりあえず購入してテストしてみた。
魅力的な価格
ノートPCやミニPCを10Gbps化するハードルが下がりそうだ。
現状、ノートPCなどを10Gbps化するには、Thunderbolt接続の有線LANアダプターを利用するのが一般的だが、国内で販売されている製品は3万円前後と高い。また、最近は小型の製品も存在するが、従来から販売されている製品はサイズも大きく扱いにくかった。
今回購入したIOCRESTブランドの「IO-HTB1131-GLAN」は、こうした従来製品の欠点を解消した製品だ。サイズは25.6×40.4×102.7mmと小型で、価格も、AliExpressで2025年1月18日に購入した時点で1万5571円と、安く設定されている。
そもそも、最近のノートPCは無線でのネットワーク接続が前提となり、有線LANのポート自体が搭載されることが少なくなってきた。気軽に使うなら1~2.5Gbps対応の製品でも十分だが、動画などの大容量のデータを扱うことを考えると、10Gbpsのネットワークが欲しくなる。今回の製品は、こうしたニーズに合った製品といえそうだ。
M.2接続AQC117+USB4/Thunderboltケース
今回の製品は、イメージとしては、M.2のSSDをUSB接続で利用するためのケースを思い浮かべるといい。若干、高さがあるが、サイズ感や質感は(まあ中身も……)非常に近い。
筐体は金属製となっており、放熱のために凹凸のあるデザインが採用されている。インターフェースは、片側に集中しており、ネットワーク接続のためのRJ45ポートと、PC接続のためのUSB Type-Cポートが用意されている。
USB Type-CとRJ45が同じ面にあることには違和感があったが、実際につないでみると、本製品を中心にケーブルを「Y」字型にさばけるので、思ったより邪魔にならない印象だ。
同梱品はUSB Type-Cケーブルと、簡単なマニュアルのみだ。マニュアルにはLEDの光り方の説明とドライバーダウンロード先のURLが記載されていた。なお、ドライバーは以下の製品情報サイトからダウンロード可能だ。
▼製品情報サイト
IOCREST IO-HTB1131-GLAN
仕様としては、100Mおよび1/2.5/5/10Gbpsに対応した製品となっており、PCとの接続はUSB4/Thunderbolt 3/Thunderbolt 4に対応する。電源はUSBまたはThunderbolt経由での供給となるため外部電源は不要で、消費電力は10Gbps接続時で2.5W、5Gbps接続時で1.5Wとなっている。
使用されているチップは、公表されていないが、配布されているドライバーがMarvellのAQC113用なので、AQC113と考えられる。
Thunderbolt接続の10Gbps対応有線LANアダプターは、従来だとAQC107が採用されるのが一般的だったが、本製品では次世代のAQC113に変更されていることになる。チップの世代が変わったことで、発熱が減り、小型化につながったと考えられる。
とはいえ、使用中は「しっかり温かい」。冬場に手に持っていると心地いいくらいの温度はありそうだ。
背面にネジがあったので、開けて中身を確認してみたところ、下図のように中身はM.2用の10GbEモジュールそのものだった。ベースとなるUSB4対応M.2アダプターの上に、M.2 2280のネットワークアダプターが搭載される構成となっており、チップ上にもヒートシンクが搭載されている。内部のヒートシンク側面が筐体と接触するようになっており、これで全体を放熱する仕組みになっているようだ。
試しに、筐体を外した状態で稼働させてみたところ、最初は問題ないのだが、しばらく使っていると通信が切断されてしまう状況が発生した。さすがに筐体で放熱できなくなると、動作に問題がありそうだ。
となると、断言はできないが、筐体に収めた状態でも、季節や利用環境によっては安定性に問題があるかもしれない。このあたりは状況次第といえそうだ。
速度は問題なさそう
対応OSは、Windows 10/11、Linux(カーネル3.10以上)、MacOSと記載されている。試しに、iPhone 16 ProとArm版Windows 11にも接続してみたが、これらでは認識されなかった。
利用方法は簡単で、Windows 11であればつなぐだけでいい。PCが無線で接続されていれば、上記のドライバーを使わなくても、Windows Update経由でドライバーが自動的にインストールされる。使い勝手は、一般的なUSB接続のネットワークアダプターと同じと考えてよさそうだ。
パフォーマンスは十分だ。以下は、10Gbps対応のNIC(ASUS XG-C100C)搭載PCと、本製品を接続したPCを10Gbps対応のスイッチ(QNAP QSW-M408-2G)経由で接続して、iPerf3の速度を計測した結果となる。上り、下り、どちらの方向も問題なく10Gbps近い速度が実現できている。
PC1→PC2 | PC2→PC1 | |
1Gbps | 940Mbps | 976Mbps |
10Gbps | 9470Mbps | 9480Mbps |
※PC1:Core Ultra 7 155H/32GB/1TB/Windows 11 Home
※PC2:Core i3-10100/32GB/256GB/ASUS XG-C100C/Windows 11 Pro
また、10GBのファイルを作成し、Windowsのファイル共有経由で転送してみたが、こちらもダイアログの表示ベースで1.1GB/s(8.8Gbps)が出ているので、十分な速度が出ているといえる。
安定性に関しては、長期的な運用をしてみないと判断が難しいため本稿執筆の段階では評価しにくいが、とりあえず100GBのファイルを生成して、2.5Gbps接続のNASに転送する操作を数回繰り返してみたが、途中でエラーが発生するようなことはなかった。また、iPerf3による計測も30分ほど連続で実行してみたが、こちらも安定して実行できた。
ただし、MarvellのAQC107/113のシリーズは、安定性の点で、いまひとつネット上の評判がよくない点が心配だ。前述した熱の影響もシビアそうなので、環境によっては影響がありそうだ。
安く10Gbps環境を構築したい人向け
以上、AliExpressで格安のUSB4/Thunderbot 3/4対応10Gbps LANアダプターを購入してみたが、今のところ不満なく使えている。
筆者的には、NASやWi-FiルーターのiPerf3計測時に一時的に使えれば十分なのだが、業務などで何時間も使い続けるのに向くかというと、難しい判断になりそうだ。環境場所や用途によっては、熱の影響があるかもしれない。
とはいえ、実売1.5万円と、既存の10Gbps対応Thunderboltアダプターに比べると安いので、10Gbps環境を安く構築してみたい人は試してみる価値がありそうだ。
なお、今回紹介しているIOCREST「IO-HTB1131-GLAN」について、YouTubeのイニシャルBチャネルでも紹介している。その率直な感想を知りたい方は、ぜひご視聴してほしい。できれば、チャンネル登録といいねを忘れずに。