清水理史の「イニシャルB」
USBで手軽にLANを5Gbpsへアップグレード! プラネックス「USBC-LAN5000R」
2020年9月7日 06:00
プラネックスコミュニケーションズ株式会社から、最大5Gbpsの通信に対応した有線LANアダプター「USBC-LAN5000R」が発売された。USB 3.1 Type-C接続の製品で、手軽に有線LANを高速化できるのが特徴だ。その実力を検証してみた。
1Gbps超えを目指して
NTT東西の「フレッツ 光クロス」をはじめ、10Gbpsの光回線がじわじわと普及し始めてきた中、屋内のLAN環境も1Gbps超えを目指した進化が、ようやく現実的なものになりそうだ。
以前レビューした10Gbps対応スイッチなどもそうだが、まだ「気軽に」とまでは言えないものの、Wi-FiルーターやNAS、スイッチ、ネットワークアダプターなど、10/5/2.5Gbps対応の製品が、手の届く範囲の価格帯にまで下がってきた。
トータルで、という話になるとそれなりに出費はかさむものの、このPCだけ、この用途だけ、この部分だけ、とピンポイントで1Gbps超えのネットワークを利用することは、少しの贅沢で、さほど無理なくできるようになってきた印象だ。
こうした状況の中、プラネックスから発売されたのが、今回取り上げる「USBC-LAN5000R」だ。市場想定価格が1万4800円と、USB接続の有線LANアダプターとしては高価だが、最大5Gbpsの通信に対応しており、PCにつなぐだけで簡単に1Gbps超えのネットワークを手に入れられるようになっている。
1Gbps超えの回線やNASなどを導入する場合、「果たして既存のPCをどう対応させるか?」というのが1つの悩みどころだが、本製品を使えば、USBポートにつなぐだけで最大5Gbpsまでのネットワークに対応可能となる。
念入りな熱対策
それでは製品をチェックしていこう。
サイズは91.4×35×16.5mmで、最近のUSB LANアダプターとしては少し大きめだ。今回同時にリリースされた2.5Gbps対応の「USBC-LAN2500R」や、筆者が以前に購入したType-Aコネクタ版の「USB-LAN2500R」と比べ、一回り大きいサイズ感となる。ただし、ノートPCに接続したとしても、これならギリギリ邪魔にならないサイズという印象だ。
デザインは、ツヤありのブラックとシルバーのツートンで構成されており、全体は樹脂製となってはいるものの、LANケーブルを接続するためのコネクタ部分が金属で構成されている。
本体をよく見ると、サイドや底面、果てはRJ45の金属パーツの奥まで、ありとあらゆる部分にまでスリットが刻み込まれており、熱対策は相当に工夫されている印象だ。
従来製品のUSB-LAN2500Rも、普通に使っているだけでそこそこ熱くなったが、今回の製品はより高速な5Gbps対応となることから、より念入りに熱対策がなされているのだろう。
実際、USBに接続し、ウェブブラウジングやファイルの同期など、日常的な使い方をしばらくしてみたが、確かに本体を触ると「大丈夫かな?」と心配になるくらいに熱くなっていた。
しかしながら、エアコンが効いた室内とは言え、2020年の夏でも安定して常用できたので、徹底した熱対策が功を奏しているのだろう。最新のドライバーでも熱対策がなされているとのことなので、このあたりは心配なさそうだ。
話を戻そう。インターフェースは、RJ45のLANポートが側面にあり、ポート側に通信時に点滅するLEDが搭載されている。
特徴的なのはPCとの接続で、前述の通りUSB Type-Cが採用されている。どちらかというとネットワーク機器にはレガシーなインターフェースが採用されることの方が多く、こうした対応が遅れがちなので、なかなか新鮮だ。
USB Type-Cは、すでにスマートフォンでは主流になりつつあるし、PCでも採用例が増えているので、古いPCにつなぐ場合以外は、好ましい印象だ。
ちなみにUSBケーブルは本体に直結される。本体側もコネクタにして、ケーブルを脱着可能にする手もありそうだが、本製品の場合、PCのUSBポートに「ぶら下げて」利用するケースが想定されるため、ケーブルが抜けにくい直結の方が安心だ(逆にType-Cのコネクタが抜けないかが心配にはなるが……)。
Jumbo Frameは16KBytesに対応
設定は簡単で、ドライバーをインストール後、本製品をUSBポートに接続するだけと簡単だ。
アダプターのプロパティも充実しており、VLAN IDやバッファーなど必要な設定が一通り搭載されている。そして、Jumbo Flameの値は一般的な9K(9014bytes)より高い16K(16348bytes)に対応している。
スイッチやNASなど通信の相手側も対応していないと意味がないので、残念ながら筆者の環境では試せなかったが、環境次第ではこうした設定も試してみると高速化できるかもしれない。
また、「Low Power 5Gbps(標準ではDisable)」や「Thermal Throtting(標準ではDisable)」という項目も用意されている。後者に関しては動作温度まで指定できるので、処理能力を下げてでも熱によるダウンを避けたいという場合は、これらの設定を使うとよさそうだ。
具体的な効果は後述するが、Low Power 5Gbpsをオンにした場合、2.5Gbpsクラスの製品と同等の速度になってしまうものの、確かに稼働時の本体の温度は下がっているように感じた(手で触った確認なので感覚によるものでしかないが……)。
実効は3.5Gbps前後
気になるパフォーマンスだが、筆者の環境での計測では以下のようになった。SynologyのNAS「DS1516+」にIntelの10GBASE-T LANカード「X540-T2」を装着した環境でiPerf3サーバーを稼働させ、ネットギアジャパンの10GBASE-T対応スイッチ「XS505M」経由で計測を行っている。
なお、比較対象として、Low Power 5Gbps有効時、および従来製品のUSB-LAN2500R、Intel X540-T1(PCIe接続)の値も掲載する。
上り | 下り | |
USBC-LAN5000R(5Gbps) | 3.35 | 3.58 |
USBC-LAN5000R(LowPower5Gbps) | 2.19 | 2.26 |
USB-LAN2500R(2.5Gbps) | 2.48 | 2.47 |
Intel X540-T1(10Gbps) | 5.24 | 7.11 |
結果を見ると、実効速度は3.5Gbps前後となった。2.5Gbps対応製品では規格上のスピードと実効スピードの差があまりないが、現状の5Gbps対応製品では、実効で3.5Gbpsとなるのが一般的な傾向なので、期待通りの速度と言える。
興味深いのは、先に触れた「Low Power 5Gbps」有効時の速度で、こちらは2.5Gbpsに若干劣る結果となった。
デバイスのプロパティからなので設定は面倒だが、普段はLowe Power 5Gbpsをオンにして発熱を抑えつつ使用し、大容量通信が必要なときだけオフにてフルパワーを開放するという使い方もアリと言えそうだ。
以上、プラネックスのUSBC-LAN5000Rを実際に試してみたが、USB接続で手軽なわりに、2.5Gbpsよりも確実に高速なネットワーク環境を得られる製品となっていた。
コスパを考えると、もう少し値段が下がって欲しいところではあるが、熱対策などもしっかりとなされているため、その分のコストと考えると納得できる。欲を言えば、Low Power 5Gbpsなどの設定が簡単にできるツールなども提供されればうれしいが、ワンランク上のネットワーク環境が欲しい人にお勧めできる製品と言えそうだ。