清水理史の「イニシャルB」

iPhoneも“Pro”なら5Gbpsで通信できる! アイ・オー発売のUSB有線LANアダプター「GP-CR455GH/S」を試す

ゴッパが開発し、アイ・オー・データ機器が販売する5Gbps対応のUSB-C有線LANアダプター「GP-CR455GH/S」

 アイ・オー・データ機器から、ゴッパ(GOPPA)製の有線LANアダプター「GP-CR455GH/S」が発売された。USB Type-C接続で、最大5Gbpsの速度に対応し、Windows、macOSのほか、iPhone 15/16/iPad Proにも対応する製品だ。Windows 11 PCおよびiPhone 16 Proを、5Gbpsで接続してみた。

コンパクトになった5Gbps対応USBアダプター

 GP-CR455GH/Sは、USB Type-Cで接続できる有線LANアダプターだ。

5Gbpsで通信可能なUSB接続LANアダプター「GP-CR455GH/S」

 5Gbps対応のUSB有線LANアダプター自体は、以前から存在しており、筆者も2020年に1万5800円で購入したSonnet 製の「Solo5G」という製品を所有している。また、NASベンダーのQNAPも「QNA-UC5G1T」という製品を販売している。

 いずれも、Marvell(旧Aquantina)の「AQC111U」を採用していたが、今回の「GP-CR455GH/S」は、「カニ」でお馴染みのRealtek製チップを採用しているのが違いだ。

2020年に筆者が購入したSonnetのSolo5G(右)との比較。サイズが小さくなり、価格も安くなった

 今回取り上げた製品ではチップの型番が公表されていないが、Realtekのウェブサイトを確認すると、USB向けとしてラインアップしている5Gbps対応チップはRTL8157のみとなるため、本製品もこのチップが採用されていると推測できる(PC上では「Realtek USB 5GbE Family Controller」と表示される)。前述したSolo5Gなどの古いAQC111Uチップを採用したモデルと比べると、サイズがかなりコンパクトになった上、価格も標準価格で1万1100円と、若干安くなっている。

 ちなみに、同様にRealtekチップを採用したUSB接続の5Gbps対応有線LANアダプターは、国内の通販サイト(Amazon.co.jp)でも見かけるようになってきており、同等の製品となるWisdPi「WP-UT5」が税込6000円(!)で販売されている。

 一方、GP-CR455GH/Sを2025年1月4日時点で確認できたのは、アイ・オー・データ機器の直販サイトとなるアイオープラザ、ヨドバシ.comのみとなっており、筆者が購入したヨドバシ.comでは税込9980円で販売されていた(Amazon.co.jpでの販売は確認できなかった)。

 というわけで、正直、「分かっている人」なら、海外製の同一チップを採用した安い製品を購入した方がお得だ。しかし、本製品の方が価格は高い代わりに、日本語のマニュアルが付属している上、販売を担うアイ・オー・データ機器のサポート(ウェブからの問い合わせ)を受けられるのがメリットとなる。

ドライバーや対応モデルに注意

 では、実際に使い方を見ていこう。

 まず、対応機種だが、現状、本製品が対応するのはWindows、Mac、iPhone/iPad(USB Type-C対応モデル)となっており、Windowsは10/11、32/64bitのいずれにも対応するが、ARMベースのプラットフォームには公式には対応していないと記載されている。最新のSurfaceシリーズなど、ARM系のCPUを搭載したCopilot+ PCでは、本製品に限らず、ハードウェア・ソフトウェアの互換性の問題が存在するのは仕方がないところだ。

公式にはARM版Windowsには対応しないと記載されている(アイ・オー・データ機器の製品ページより)

 ただし、筆者の手元にあるLenovo Yoga Slim 7x Gen9で試してみたところ、問題なくデバイスを認識し、5Gbpsで通信できた。今回使用したPCはWindows InsiderのDevチャネル(26120.2705)に登録しているため、その影響がある可能性もあるが、つなぐだけで「Realtek USB 5GbE Family Controller(2024/10/29付けの12.1.1029.2024ドライバーが自動インストールされた)」と認識され、5Gbpsでリンクすることも確認している。

ARMプラットフォームでも5000Mbps(5Gbps)でのリンクを確認できた

 前述のとおり、正式な対応機種に含まれていないため、何らかの不具合が発生することも考えられる上、サポート対象外となりそうだが、一応、ARM版でも利用できるようだ。

 また、iPhoneシリーズも注意が必要だ。上記のスペック表にも記載されているが、5Gbpsでリンクするのは、iPhone 15 Pro/15 Pro Max/16 Pro/16Pro Maxとなっており、iPhone 15/15 Plus/および16/16 Plusは最大速度が1Gbpsまでとなる。つまり、「Pro」モデルでないと、本製品の実力を発揮しきれないことになる。

Windowsはドライバーのインストールが必要

 使い方の注意点としては、Windows環境では、通常、ドライバーのインストールが必要になる点だ。

 単に、本製品をUSBケーブルでつなぐだけでは、2.5Gbpsまでしかリンクしない。開発元であるゴッパのウェブサイトからドライバーをダウンロードできるので、インストールしてから製品を接続する必要がある。

接続直後は、Windows標準のドライバーが利用されるため、5Gbpsでリンクできない。筆者の環境では2.5Gbpsまでのリンクとなった
ゴッパのウェブサイトからドライバーをダウンロードしてインストールする必要がある

 ドライバーさえインストールしておけば、ケーブルをつなぐだけと簡単だ。もちろん、5Gbpsでリンクさせるには、5Gbpsに対応したスイッチが必要となる。現状、5Gbpsのみに対応したスイッチというのは見かけないため、基本的には10Gbps対応のスイッチを用意する必要がある。

 10Gbps対応のスイッチは、低価格な製品はSFP+対応のケースが多く、一般的なRJ45で接続するにはアダプターが必要になるなど、2.5Gbpsに比べるとコストがかかる。すでに10Gbps対応の家庭内LAN環境が整っているのであれば、本製品によってPCやiPhoneを5Gbpsで接続できるメリットはあるが、環境を整えるまでのコストがかさむのが課題だろう。

 なお、iPhoneに関してはつなぐだけで認識する。手元のiPhone 16 Pro(iOS 18.1.1)では、USB Type-Cポートに本製品をつなぐだけで、自動的に5Gbpsで有線LANに接続できることを確認できた。

ドライバーインストール後の状態。5Gbpsでリンクしている
iPhone 16 Proではつなぐだけで5Gbps対応アダプターとして認識された

iPhone 16 Proは実効3Gbps近くで通信可能

 パフォーマンスについても問題なさそうだ。以下は、2台のPCを10Gbps対応のスイッチ(QNAP QSW-M408-2G)に接続し、iPerf3による速度を計測した結果だ。PC1にGP-CR455GH/S を接続し、PC2はASUS XG-C100Cを装着して10Gbpsで接続した状態で計測している(1Gbps計測時はスイッチのポートを変更)。

iPerf3 ベンチマーク
PC1→PC2PC2→PC1
1Gbps940Mbps976Mbps
5Gbps4420Mbps4200Mbps

※PC1:Core Ultra 7 155H/32GB/1TB/Windows 11 Home
※PC2:Core i3-10100/32GB/256GB/ASUS XG-C100C/Windows 11 Pro

 1Gbps接続時は900Mbps前後が速度の限界となるが、GP-CR455GH/Sでは5Gbpsでリンクするため、実効速度も4Gbps前後まで達成できた。しっかり4倍以上の速度を実現できており、速度的な不満は感じられない。

 続いて、インターネット接続のテストを検証した。auひかりを利用し、Speedtest.netにて計測した結果は、以下のように下り2399.56Mbps、上り3293.79Mbpsとなった。回線側の混雑状況にも左右されるが、実効で3Gbpsオーバーを達成できている。

Speedtest.netの結果。3Gbpsオーバーを達成した

 なお、テスト時に消費電力も計測してみたが、以下のように1.6W前後となった。また、発熱についても確認してみたが、1月の冬場でも触ると暖かく感じられるので、それなりに熱を持つ印象だ。同じ部屋で常用している2.5GbpsのUSB LANアダプターよりも確実に温度は高い。

 ただし、これは本体を使って熱を外部に逃がすことができている証拠なので特に問題ないといえる。むしろ、5Gbpsや10Gbpsクラスのネットワーク機器で「暖かい」くらいの触感なら動作に支障はないだろう。

消費電力は1.6W前後

 最後に、iPhone 16 Proの速度を計測した(UbiquitiのWiFimanを利用)。下りで2909.5Mbpsを達成できており、こちらも十分な速度を達成できている。

iPhone 16 Proでも3Gbps近くで通信可能

 iPhone 16シリーズの無線性能は、Wi-Fi 7対応ながら、320MHz幅などに非対応(1024QAM/160MHz幅)となっており、最大速度はWi-Fi 6と同じ2400Mbpsが上限となっている(MLOには対応)。

 そもそも無線では環境によって速度が下がりやすいが、本製品との組み合わせによる有線接続であれば、3Gbps前後で、しかも安定した通信環境が得られることになる。

▼iPhoneのWi-Fi性能に関するAppleの解説
AppleデバイスのWi-Fi仕様(Apple Support)

2.5Gbpsよりワンランク上の環境に

 以上、アイ・オー・データ機器から販売されているゴッパ製の「GP-CR455GH/S」を試してみた。サイズも小さく、性能も問題ないので、5Gbpsクラスの速度をPC、iPhone、iPadで実現したい人にはおすすめできる製品と言える。2.5Gbpsよりもワンランク上のネットワーク環境を手に入れたい人は検討する価値があるだろう。

 欲を言えば、海外製品並みとは言わないまでも、もう少し価格を下げてほしいところだが、国内メーカーによるサポートが期待できる点、情報公開がしっかりしている点などを考慮すると、妥当と言える。

 この手の製品は、価格の安い海外メーカーに市場を席捲されがちだが、ピンポイントで必要なシーンはあるはずなので、ぜひ国内メーカーにも頑張って製品をリリースしてほしいところだ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。「できるWindows 11」ほか多数の著書がある。YouTube「清水理史の『イニシャルB』チャンネル」で動画も配信中