清水理史の「イニシャルB」

USB Type-CとRJ45が合体! ありそうでなかった変換ケーブル「500-LAN6KC」を早速買ってみた

サンワサプライのUSB Type-C to LANケーブル「500-LAN6KC」

 サンワサプライから、見る場所によってケーブルの種類が変わるというか、両端に異なるコネクタが付いた面白いケーブルが発売になった。一方はUSB Type-Cコネクタ、もう一方はRJ45の有線LANという異種合体ケーブルだ。アイデアは斬新だが、はたして実用性はどうなのか? 実際に試してみた。

相次ぐサンワサプライの変則攻撃

 ネットワーク関連市場での、サンワサプライの存在感がスゴイ。

 2月5日に今回取り上げる合体ケーブル「500-LAN6KC」を発売したかと思ったら、2月13日にはPoE対応の有線LANポートからUSB Type-C機器に接続して通信と給電が同時にできる「LAN-ADPOEC」を発売と、2週続けて一風変わったLAN関連製品をリリースしてきた。

ニッチな市場に向けて快進撃を続けるサンワサプライ

 どちらも、少なくとも日本市場では、今までになかった画期的なアイテムとなっており、見た瞬間に「おぅ!?」と物欲センサーが反応し、2週続けて購入した。これに限らず、本連載でも昨年末あたりから有線LAN製品を取り上げる機会が増えていて、枯れたと思われていた有線LAN市場が、ひっそりと活気づいている印象がある。

 買った後で冷静に考えると、「あれ? 買ってよかったのかな??」と思う点もなくはないのだが、おそらく実際に、こうした製品へのニーズが市場で高まっているのだろう。

 PCやスマートフォンだけでなく、ゲーム機や各種業務用機器など、今やネットワーク接続が欠かせない製品に囲まれて生活していると言ってもいい状況だが、通信手段の主流が無線(Wi-Fi)へと移行したことで、意外と有線接続に苦労するシーンも増えてきた。

 実際、ノートPCは、今や有線LANポートが搭載されている方がめずらしい。その一方で、通信の安定性やWi-Fiの混雑防止のために有線LANでつなぎたいというニーズを、オフィスや店舗システムなどの現場の声として耳にする機会も増えてきた。

 本製品は、こうしたニッチな有線LANニーズの中でも、さらにニッチな「Type-Cで直結したい」という声に答える貴重な製品というわけだ。

 なお、2月13日に発売した「LAN-ADPOEC」は、PoEを使ってPCやタブレットに給電したいという、さらに「ニッチオブニッチオブニッチ」な製品だが、こちらは次回レビューする予定なので、楽しみにお待ちいただきたい。

Type-C 有線LANアダプター+LANケーブル

 ということで、今回は500-LAN6KCを見ていこう。

 全体としては、LANケーブルそのものだ。ケーブル径が6mmほどの一般的なUTPケーブルで、対応する規格はカテゴリ6。コネクタも、片側は接続部分に金属カバーやツメ折れ防止用のカバーなどが付いているものの、ごく一般的なRJ45となっている。

 注目は、反対側のコネクタで、こちらはUSB Type-Cの形状になっている。いわゆる充電ケーブルのようなデザインだが、コネクタ部分にネットワークアダプター用のモジュールが内蔵されており、この部分が若干大きくて、幅が実測で17~18mmほどある。

片側がRJ45、反対側がUSB Type-C

 これまで、有線LANポートを本体に内蔵していないPCを有線LAN接続する場合は、「USB接続のLANアダプター」+「LANケーブル」という構成が一般的だったが、この2つを合体させてしまったのが、本製品というわけだ。

従来のUSB LANアダプター+LANケーブルを合体させて1本にした製品、ということになる

 発想としては非常に面白いし、アダプターを接続する手間を省いて一発で有線LANに接続できるのは、非常に便利だ。

 ただ、実際の利用シーンとして、この合体が「正解」なのか、判断するのが難しい。

 仮に、会議室での利用を考えてみよう。会議室のテーブルで有線LANにつなぎたいとなると、テーブルの中央などに、本ケーブルを格納しておくというシナリオが考えられる。本製品は3mと5mの2製品があるが、6mm径でかつUSB Type-Cコネクタ部分が1.7mmほどあるケーブルを、1本ならまだしも、複数本格納しておくとなると、少々スペースが必要になりそうだ。

 一方、外出先などで有線LANでつなぐために持ち歩くケースを考えてみよう。この場合、ケーブルを丸めたとしても縦横20cmほどとなるので、これを持ち歩くくらいなら、コンパクトなUSB Type-CのLANアダプターと、細身やフラットのケーブル、もしくは巻き取り式のLANケーブルを持ち歩いた方がかさばらない。

 となると、オフィスの各デスクに固定で配線しておく、というシーンが想定されるかと思う。実際、本製品のケーブル長は3mと5mの2製品が用意されているので、いわゆる島ハブにつないで、デスクに配線するのに都合がいい長さとなる。

 シンプルに組織での管理備品や資産として管理すべき対象が、「USB接続のLANアダプター」+「LANケーブル」の2品目から、本製品1つになるというのは大きなメリットだが、実際に使ってみると、2つが合体したおかげで「思ったより嵩張る」というのが率直な印象だ。

持ち運ぶとなると、思ったより嵩張る

 加えて、気になったのが、USB Type-C側のコネクタのサイズだ。前述した通り、幅が17~18mmほどあるので、PC側のポートの配置状況によっては、隣のコネクタと干渉する。

USB Type-Cコネクタの比較。上が本製品で、下がUGREENのデータ転送兼PD対応ケーブル。比べるとだいぶ大きい

 実際、筆者の手元にあるノートPC(MSI Prestige-16-AI-Studio-B1VFG-8003JP)の場合、隣接するUSB Type-Cポートの間隔が、中心から中心までの実測で15mmほどと狭く、PD給電のコネクタと一緒につなぐと微妙に干渉してしまった。

 別のノートPC(Lenovo YogaSlim 7x Gen9)では、中心から中心までの実測が19mmほどあるため、PD給電と本製品を隣接させてもまったく干渉しないのだが、環境によっては本製品の幅がもう少し狭ければ……と感じるシーンがあった。

MSIのノートPCだと、USB Type-Cポートの位置が近いため干渉してしまう
LenovoのノートPCは間隔が広いので干渉しない

チップはRealtek RTL8153。つなぐだけでOK

 使い方については、何の苦労もない。

 本製品に採用されているのは、USB接続のLANアダプターとして多くの機器に採用されているRealtekのチップ(RTL8153)となっており、ほとんどのデバイスでは接続するだけで認識される。

接続すれば自動的に認識される
ジャンボフレームの設定なども可能だ

 手元にあるWindows 11(x86、ArmともにOK)、iPhone 16 Pro、Google Pixel 6の各製品で試してみたが、いずれも問題なく1Gbpsの有線LANとして認識されて通信でき、速度も問題なかった。

速度も問題なし

 筆者は試してないが、Nintendo Switchにも対応しているとのことなので、ほとんどの機器でつなぐだけで利用できると考えられる。

 また、本製品の特徴として、MACアドレスパススルーにも対応している。これは、有線LANアダプターのMACアドレスではなく、PC側に割り当てられたMACアドレスを使って通信できるようにする機能だ。

PCのBIOSでパススルーを設定
USB接続でもBIOSで設定したMACアドレスが利用される

 MACアドレスフィルタリングを使う組織は限られているかもしれないが、デバイス管理系のクラウドサービスなどではMACアドレスで端末をインベントリしたり、デバイス制御やソフトウェア配布などをMACアドレスベースで管理したりする場合がある。

 USB接続のLANアダプターなどでMACアドレスが変わってしまうと、こうした制御に不都合があるため、PCのBIOSの設定でデバイスに設定されたMACアドレスを使うように設定することができる。

 つまり、MACアドレスパススルーを利用することで、PCがどのアダプターで接続していても、単一のMACアドレスのデバイスとして認識できることになる。

 もちろん、個人で使ってもかまわないが、この機能が提供されることからも、本製品は、どちらかというと組織向けの製品と言えそうだ。

価格をどう考えるか?

 というわけで、サンワサプライのUSB Type-C to LANケーブル「500-LAN6KC」を実際に試してみた。製品企画としては非常に面白い。利用シーンはニッチかもしれないが、特定の現場のニーズに確実に応える製品になっている。

 価格は、5mの「500-LAN6KC05」が3480円、3mの「500-LAN6KC03」が2980円(いずれもサンワダイレクトの価格)となっている。

 同じくサンワダイレクトでのカテゴリ6のLANケーブルの価格は、3mで550円、5mで750円となっている。一方、USB Type-C接続の1Gbps対応LANアダプターは同社製の「USB-CVLAN2BKN」だと3580円(サンワダイレクト)となっているが、もっと安い製品を探せば2000円前後で購入できる。

 別々に買う場合と同等程度と考えて差し支えないだろう。このあたりは、人によって判断が変わるかもしれない。同程度の価格なら1つで済む方がいいと考える人もいれば、別々の方が柔軟性が高いと考える人もいそうだ。

 個人的には、RJ45のツメ折れが発生したときのことを考えると、別々にしておくメリットも大きいのではないかと思える。本製品は、ツメ折れ防止カバーが付いており、ツメ折れにも十分な目配りがされていると思うが、それでも荒い使い方や経年劣化などが原因でツメ折れは発生する。そして、買い替えるときにはUSB Type-C側まで破棄することになると考えると、少々、ダメージが大きい。

 個人的には、今までにない製品というだけで買う価値はあったと感じているが、万人におすすめというわけではないニッチな製品だ。利用環境や考え方に合い、価値を見出せる人にはありがたい製品となるだろう。

 なお、今回紹介しているサンワサプライ「500-LAN6KC」について、YouTubeのイニシャルBチャネルでも紹介している。その率直な感想を知りたい方は、ぜひご視聴してほしい。できれば、チャンネル登録といいねを忘れずに。

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清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。「できるWindows 11」ほか多数の著書がある。YouTube「清水理史の『イニシャルB』チャンネル」で動画も配信中