清水理史の「イニシャルB」
バッファローのWi-Fi 7ルーター「WXR18000BE10P」速攻レビュー、現状最速の実効7Gbps! 解禁された320MHz幅が使えるWi-Fi 7「正式」仕様
2024年1月29日 06:00
【お詫びと訂正】1月30日12:15
本記事の初掲載時、短期間の実験を目的とした「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」を利用した6GHz帯の実験結果を掲載していましたが、お読みいただいた方よりご指摘を受け、総務省関東綜合通信局に確認したところ、「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」は現在6GHz帯の実験は対象外との回答を得ました。そのため、該当部分の記載を削除しました。ご迷惑をおかけいたしましたことを、お詫びいたします。
バッファローから登場した「WXR18000BE10P」は、昨年末、日本でも正式解禁されたWi-Fi 7(320MHz幅)に対応した無線LANルーターだ。
320MHz幅に対応した6GHz帯だけでも、最大11529Mbps(約10Gbps)という驚異的な性能を誇る製品となっている。Wi-Fi 7時代の幕開けを飾る記念すべき製品と言えるだろう。
Wi-Fi CERTIFIED 7取得
バッファローの「WXR18000BE10P」は、無線LANの最新規格となるWi-Fi 7に対応した無線LANルーターだ。
Wi-Fi 7に対応した製品としては、TP-LinkのDeco BE85が存在するが、Deco BE85は発売当時に国内で6GHz帯の320MHz幅が利用できなかったため、速度が5760Mbps(6GHz帯)+5760Mbps(5GHz帯)+ 1376Mbps(2.4GHz帯)となっていた。
これに対して、今回のバッファローのWXR18000BE10Pは、昨年末に法令で解禁された320MHz幅に対応することで、対応速度は11529Mbps(6GHz帯)+5764Mbps(5GHz帯)+688Mbps(2.4GHz帯)となっており、6GHz帯でDeco BE85の倍となる11529Mbpsの速度を実現できている。
Wi-Fi Allianceが定めるWi-Fi機器の互換性認証「Wi-Fi CERTIFIED」も取得しており、Wi-Fi 7ならではの特徴をフルに備えた「正式」なWi-Fi 7対応となっているのが特徴だ。
なお、ややこしいWi-Fiの規格を簡単にまとめておくと、現在一般的なWi-Fi 6を基準に、利用できる帯域として2.4GHz/5GHz帯にさらに6GHz帯を追加したのが「Wi-Fi 6E」で、これらはIEEEの規格としてはIEEE 802.11axとなる。
一方で、今回登場したWi-Fi 7は、正式にはIEEE 802.11beと呼ばれる規格となる。利用できる帯域は2.4GHz/5GHz/6GHz帯の3つである点は同じだが、IEEE 802.11axとの違いは大きく3つある。
違いその1:4096QAM(4K QAM)を採用
変調方式を変更し、1つの搬送波で伝送できるデータ量が従来の10bitから12bitに増加している(つまり速度1.2倍)
違いその2:MLO(Multi-Link Operation)対応
2.4GHz/5GHz/6GHz帯を同時に利用可能。利用方法はいろいろあるが束ねることで最大11529+ 5764+ 688=17981Mbpsも実現可能
違いその3:320MHz幅に対応
6GHz帯での通信時に確保できる周波数の幅が320MHzに増加。従来の160MHz幅の倍となるため、単純に速度も2倍になる
このほかにもWi-Fi 7の特徴となる機能はあるのだが、パフォーマンスの向上が期待できるのは、これら3つの理由がある。特に、今回のWXR18000BE10Pで実装された320MHz幅は、6GHz帯のみだが、シンプルに速度を2倍速化できる「高い破壊力」を持った特徴と言えるだろう。
対応クライアントは存在するが……
もちろん、Wi-FiルーターがWi-Fi 7対応となっても、そこにつなぐ端末がWi-Fi 6/6Eのままでは、上記の4096QAMやMLO、320MHz幅といった機能は利用できない。
現状、Wi-Fi 7対応として販売されているノートPCもいくつか存在するが、これらもスペック上は「日本ではWi-Fi 6/6Eでの接続に対応」となっており、正式にはWi-Fi 7で接続することはできない。スマートフォンも正式対応の機種は現状ない。
これらのノートPCに搭載されているモジュールの多くは、インテルの「Intel BE200」シリーズなので、ハードウェアとしては4096QAM、および320MHz幅に対応している(MLOはアンテナ2本なので不可能)。
ただし、本稿執筆時点では技適の検索結果で160MHz幅までしか認可を取得していないことが確認できている。このため、実質的に160MHz幅までの対応となる。
Intelは、過去、Wi-Fi 6E対応のモジュールにおいて、ドライバーのアップデートのみで6GHz帯対応を実施した経緯もあるため、今回も技適を取得次第、ドライバーのアップデートによって320MHz対応となることが予想される。
外観をチェック
では、製品を見ていこう。
外観は、同社のフラッグシップモデルを踏襲したものとなっており、外付けの4本のアンテナが特徴的だ。
アンテナは1本が2分割されており、上部が2.4GHz/5GHz帯のデュアルバンド、下部が6GHz帯シングルバンドという、1本で3つの帯域をカバーするものとなっている。
WXR18000BE10Pは、6GHz帯が4ストリーム、5GHz帯が4ストリーム、2.4GHz帯が2ストリームの合計10ストリーム対応だが、5GHz帯と6GHz帯の各ストリームに、それぞれ1本ずつ外付けアンテナが用意されることになる。
よくよく考えてみると、先行して販売されたTP-LinkのDeco BE85はアンテナ内蔵だったので、国内販売されたWi-Fi 7ルーターとして外付けアンテナなのは本製品が初となる。一般的には、内蔵よりも外付けの方が電波的には有利とされているが、外付けは向きの調整が難しい。アンテナ設定ガイドも同梱されてはいるが、前述したように上部が2.4GHz/5GHz帯、下部が6GHz帯であるという構成も理解したうえで、向きを調整する必要がある。このあたりを考えると、上級者向きという印象だ。
スペック的には、このほか有線LANにも注目で、本製品はWAN、LANがそれぞれ10Gbpsに対応している。Wi-Fi 7の場合、6GHz帯が320MHz幅で11529Mbpsと10Gbpsを超えてしまっているので、もはや有線の10Gbpsの存在感が薄くなってしまうというのも面白いところだ。
CPUも1.8GHzのクアッドコアと、とにかくWi-Fi 7の性能を引き出すためのハードウェアがふんだんに使われている印象だ。
その一方で、デザインはあまり同社の従来モデルと変わらない。Wi-Fi 7ということで、デザインも一新されるかと思ったが、コストを考えると、そこまで無理はできなかったと考えられる。サイズも決して小さいとは言えず、カラーリングもアンテナの赤と、本体下部のゴールドのアクセントと存在感はあるので万人受けするモデルではないので、とにかくWi-Fi 7で通信してみたいという先進的なユーザー向けと言えるだろう。
機能的には、従来の同社製品と大きく変わることはなく、メッシュ(Wi-Fi EasyMesh)に対応していたり、接続したPCやスマートフォンをインターネット上の脅威から保護する「ネット脅威ブロッカー2 プレミアム」を搭載していたり、インターネット接続の設定を含めて既存のWi-Fiルーターから設定を引き継げる「スマート引っ越し」に対応していたりと、至れり尽くせりという印象だ。
使いやすさや国内の回線事情への対応状況などでは、すでに定評があるバッファロー製品なので、このあたりの心配は不要と言えそうだ。
価格 | 6万4980円 |
CPU | 1.8GHzクアッドコア |
メモリ | - |
無線LANチップ(5GHz帯) | - |
対応規格 | IEEE802.11be/ax/ac/n/a/g/b |
バンド数 | 3 |
320MHz対応 | 〇 |
最大速度(2.4GHz帯) | 688Mbps |
最大速度(5GHz帯) | 5764Mbps(8640Mbps) |
最大速度(6GHz帯) | 11529Mbps |
チャネル(2.4GHz帯) | 自動選択 |
チャネル(5GHz帯) | 自動選択 |
チャネル(6GHz帯) | 自動選択 |
ストリーム数(2.4GHz帯) | 2 |
ストリーム数(5GHz帯) | 4 |
ストリーム数(6GHz帯) | 4 |
アンテナ | 外付け4本 |
WPA3 | 〇 |
メッシュ | 〇 |
IPv6 | 〇 |
IPv6 over IPv4(DS-Lite) | 〇 |
IPv6 over IPv4(MAP-E) | 〇 |
有線(1Gbps) | 3 |
有線(10Gbps) | 2 |
有線(LAG) | - |
USB | USB3.2(gen1)×1 |
セキュリティ | 〇 |
USBディスク共有 | 〇 |
VPNサーバー | 〇(L2TP/IPSec) |
動作モード | RT/AP/WB |
ファーム自動更新 | 〇 |
LEDコントロール | 〇 |
サイズ(mm) | 300×195×75 |
iPerf3で実効7Gbpsに到達!
気になるパフォーマンスだが、非常に優秀で、現状、「最速」となる結果をマークした。
まずは、Wi-Fi 7の最大の特徴となるMLOの実力を計測する。WXR18000BE10Pを2台利用し、EasyMeshで親機と子機として構成したうえで、それぞれに10Gbpsの有線でPCを接続し、この間の速度を計測した。
1F(3m) | 3F(9m) | |
WXR18000BE10P同士(上り) | 6680 | 3160 |
WXR18000BE10P同士(下り) | 6750 | 3970 |
※サーバー:Ryzen3900X/RAM32GB/1TB NVMeSSD/AQtion 10Gbps/Windows11 Pro
※クライアント:Core i3/RAM32GB/1TB NVMeSSD/ASUS XC-C100/Windows 11 Pro
結果は、現状、最速となる結果となった。2台をともに1階に置いた場合(距離は3m前後)、上りが6.68Gbps、下りが6.75Gbpsと、6Gbpsを超える速度を安定的にマークした。以下の画面のように、瞬間的には7.13Gbpsと、7Gbpsを超える場合もあり、無線とは考えられないほどの速度を達成している。
長距離も優秀で、1階から3階と離れた場所に設置した場合(9m前後)でも、実効速度は下りが3.97Gpbsと4Gbps近くも出ている。同じWi-Fi 7でも、やはり320MHz幅が有効になる方が圧倒的に速い印象だ。
価格もがんばった
以上、バッファローのWXR18000BE10Pを実際に利用してみたが、パフォーマンスは文句なしで、Wi-Fi 7の実力を堪能できる製品となっている。
課題は、現状、つながる機器がほとんどないことと、市場想定価格6万4980円と高いことだろう。
しかしながら、価格については、先行して販売されているTP-LinkのDeco BE85の1パックが6万6791円となっているので、ほぼ同等と、かなり思い切った価格設定となっている。正直、個人的にはTP-Linkより高いと予想していたので、いい意味で裏切られた格好だ。メーカーの努力に拍手を送りたい。
とはいえ、理想は、やはりWi-Fi 7ならではのMLOを使えることなので、現状はメッシュで利用することが必須となる。将来的に、デュアルバンドもしくはトライバンド対応のPCなどが登場する可能性もゼロではないが、内部スペースに制約があるノートPCなどでは可能性は低いだろう。
2台でメッシュを構築するなら倍の出費が必要になるが、使った印象としても、メッシュのバックホールとしてのMLOはかなり快適だ。予算さえ許せば投資する価値のある製品と言えるだろう。