清水理史の「イニシャルB」

「フレッツ 光25G」を実現する仕組みは? 今後のエリア展開は? NTT東日本に聞いて分かった新サービスの正体

NTT東日本株式会社 ビジネス開発本部 クラウド&ネットワークビジネス部 基盤ネットワークサービス担当 担当課長 李殷在氏(写真左)、NTT東日本株式会社 ビジネス開発本部 クラウド&ネットワークビジネス部 IOWNサービス担当/基盤ネットワークサービス担当 担当部長 込山晴謙氏(写真右)

 2026年3月31日から、いよいよ「フレッツ 光25G」の提供が開始される。

 NTT東日本は2025年12月23日に、国内初かつ国内最速となる上り/下り最大25Gbpsの商用サービスとして、「フレッツ 光25G」を発表した。最初の提供エリアは東京都中央区の一部、月額利用料は2万7500円となる。

 「10Gbpsの普及もこれからなのに、25Gbps!?」と驚いた人も少なくないと思うが、次世代のインターネットを支える最新技術が商用サービスとして利用可能になるインパクトは非常に大きい。今回は、NTT東日本の担当者に、サービスの狙いや技術的な特徴を聞いた。

ニーズを待つのではなく「技術先行」で市場を創出する

 「10Gbpsもまだなのに?」「中央区だけ?」「料金が高い!」「LAN側はSFP28?」「ファイバーやONU/OLTは?」……。「フレッツ 光25G」の発表直後から、ソーシャルメディアでは、さまざまな声が上がった。

 回線サービス大好きの筆者などは、「25Gbps!? 使ってみたい! 早くエリア広がらないかな?」としか思っていなかったが、多くのユーザーは、現状の10Gbpsのサービスでも、十分に満足できる品質だと感じており、正直、25Gbpsというさらに高い速度の価値をどう判断していいのか迷っている様子だった。

 技術的な詳細などをぜひ聞きたいと思い、今回の取材を申し込んだのだが、取材中、要所要所で上記のような市場の疑問に対して丁寧に答えてくれたのが、NTT東日本の込山晴謙氏だ。

 はじめに、25Gbpsのサービスの提供に至った経緯についてたずねたところ、「当社はFTTHのリーディングカンパニーと自負しております」と、より高速なサービスが提供可能にあれば、当然提供するというシンプルな理由なのだという趣旨のコメントもあった。

 つまり、「フレッツ 光25G」は、10Gbpsの「フレッツ 光クロス」の課題を解決するとか、サービスとしての不足を補うとかいった位置付けのサービスではなく、最新の技術や設備を導入し、良いサービスを提供したい、という考え方で立ち上がったサービスとなっている。

「利用できる技術を提供し、需要を作っていくことになります」と、込山氏は語ってくれた

 サービス提供の背景や内容について、具体的に補足してくれたのは、NTT東日本の李殷在氏だ。

 「現在提供している『フレッツ 光クロス』(10Gbps)において、ユーザーから『速度が足りない』などの不満は、実はほとんど上がっていません。しかし、今後は、4K/8Kの超高精細ライブ配信、膨大なAI学習モデルデータの送受信、企業での複数同時双方向通信など、次世代のネットワーク需要が高まることが予想されます。私たちは、通信のリーディングカンパニーとして国内最速の回線を商用で提供する、という強い意志を持って、今回のサービス開始を決断しました」という。

 「また、サービス名称としては『フレッツ 光25G』ですが、現状の『フレッツ 光クロス』の上位互換という形ではなく、スループット特化型で、当社としてもチャレンジングなサービスになります」と、李氏は続けた。

 担当である両氏の言葉から感じられるのは、技術的に可能であればまず提供し、市場に「価値」や「基準」を決めてもらうという、考え方だ。

 実際、今回の「フレッツ 光25G」では、従来の「フレッツ 光クロス」で提供されていた電話やテレビといった付加的なサービスは提供されない。また、従来のフレッツシリーズの回線からのアップグレード(移行)にも対応せず、別の回線として新規導入が必要になる。

 これは、あくまでもサービス開始当初の状況であり、将来的に変わる可能性はあるが、サービス開始時点では「スループット特化型のデータ通信回線」ということになる。

 通信は、巨大な投資や設備の準備に時間がかかるため、市場にニーズの種しかない状況でスタートしたとしても、第一歩を踏み出すのには遅すぎる。言い換えれば、常に先手を打ち、利用者と共にニーズを一緒に創出していくしかない業界ではあるが、中でも今回の「フレッツ 光25G」は、そのペースがより早い印象がある。確かに挑戦的なサービスと言えそうだ。

「(『フレッツ 光クロス』にはある)電話やテレビといったサービスはありません」と李氏。データ通信回線のみのサービスとして提供し、この後、サービスの追加なども検討していくことになるという

フレッツ 光25Gの技術的なポイント

 このような「フレッツ 光25G」だが、そのしくみはどうなっているのだろうか?

 仕様だけ考えれば、家庭内に設置されたONU、および局舎側のOLTと光ファイバーで通信するための方式となる「PON」(Passive Optical Network)を25Gbpsに対応させたものであるが、25Gbpsという超高速ネットワークを支える技術は、そんなに単純ではない。

「フレッツ 光25G」の提供イメージ(NTT東日本の発表資料より)

 李氏によると、「今回の『フレッツ 光25G』では、利用者宅内に設置するONU、光ファイバーの配線方法、局舎側に設置するOLT、制御用コントローラ、各種ソフトウェアなど、さまざまな点で新たに開発した設備を利用しています」という。

 技術的な詳細は公表していないということなので、ここからは筆者の想像で記述する。まず、PONの方式だが、普通に考えればIEEEが主導する25G-EPONが有力と言えるが、商用システムとしては業界団体「25GS-PON MSA Group」が主導する25GS-PONが先行している。いずれが採用されているかは不明だが、方式を推測する上では、こうした状況が重要になりそうだ。

 続いて、ユーザーに関係するポイントとしては、宅内に設置する機器になるが、この点については「サービス提供範囲はONUまでになります(李氏)」という。前述したように、サービス開始当初は電話やテレビなどのサービスは提供されないため、ホームゲートウェイのよう複数機能一体型の設備はもちろんのこと、ルーターも提供されない。

 現状、25Gbpsアクセスを可能にする配線技術は、事実上光ファイバー(SFP28によるDACやAOC、ファイバー接続)のみとなる。店頭で、25Gbps対応というCAT8のLANケーブルを見かけることもあるが、RJ45でつながる25Gbps対応の機器(ネットワークアダプターなど)は、筆者の知る限り、ショウモデルのみで、市販の機器としては見当たらない。

現状、接続にはSFP28を使用するのが一般的。この接続が可能なルーターやPCを用意するのは大変

 つまり、ユーザーはSFP28ポートに対応したルーターを用意する必要があることになる。現状、データセンター向けとなるこうした製品は数百万円と高価なため、PCなどを使って自作するのが現実的な解と言える。

 もちろん、同社はこうした課題を認識している。「『フレッツ 光25G』のスピードをフルに生かすには、設置場所のネットワーク環境が大きな課題になることは認識しています。なるべく大きな負担なく利用できるようにする方法を、社内で検討中です(李氏)」という。

 理想は、やはりホームゲートウェイのようなルーターがサービスと一緒に提供されることなので、ぜひ同社には通信機器業界を含めた積極的な対応をお願いしたい。

 ちなみに、家庭内に引き込む光ファイバーについては、「従来と同じものを利用できる(李氏)」ということだ。

 ただし、工事が不要というわけではないかもしれない。現状、NTTのフレッツシリーズは、局舎で4分岐、近くの電柱で8分岐、という分岐方式が採用されていると言われている(あくまでも推測)が、25Gbpsという速度を実現したり、10Gbpsよりも少ないであろう加入者を効率的に収容したりすることを考えると、この方式も変更される可能性がある。

 もちろん、家庭からの光ファイバーが接続される先、つまり局舎側の設備も大きな変更が伴うことが予想される。

 個人的には、既存のOLT(ONUと光ファイバーでつながる局舎内の設備)に、25Gbps対応のモジュールを装着することで対応できるのかと思っていたが、そうとは限らない。現状のOLTが25Gbpsに対応できなければ、当然、25Gbps用のOLTを新たに設置しなければならない。

 込山氏によると、「コアとなるネットワークは共通で、使える部分はそのまま使いつつ、必要な部分を新たに設計しました。現状のネットワークでも25Gbpsのユーザーを収容するのに十分な帯域設計がなされています」ということなので、OLT以降のフレッツ網(NGN網)などに大きな変更はないと考えられるが、どちらかというとユーザーに近いネットワークの方で改修が必要になるケースが予想される。

技術的な情報には公開できない内容もあるが、こちらの推測に基づいた質問にも丁寧な回答を伺えた

 そう考えると、思った以上に複雑な設計が必要だったのではないかと想像されるが、李氏によると「このサービスの計画が立ち上がったのは2025年の始めで、わずか1年で、何とかサービス開始発表まで漕ぎつけました。通常、こうした新しい技術は2~3年かけて研究や実証実験を実施しますが、かなり短期間でサービス開始に至りました」という。込山氏もこの点について「技術部門にかなり頑張ってもらいました」と感謝の意を述べた。

 あらためて、NTT東日本という企業の技術力と組織力の高さに驚かされた印象だ。

なぜ「中央区」からなのか?

 今回の『フレッツ 光25G』は、2026年3月31日から東京都中央区の一部からサービスが開始される。

 振り返って、2020年に10Gbpsの『フレッツ 光クロス』が開始されたときのエリアを見てみると、足立区や杉並区、江戸川区、練馬区、世田谷区、葛飾区、大田区、板橋区など、東京23区の一部からサービスが開始された(当時の記事参照)。

 その一方で、今回は、中央区から開始という点も従来と異なるが、サービス提供開始エリアも狭い。普通に考えれば通信の一大集積地となる大手町、NTT本社の移転先で街づくりに取り組むことを発表している日比谷あたりが候補になりそうだが、そうではない。

「フレッツ 光25G」は中央区の一部からサービスをスタート(画面はGoogleマップより)

 この点について李氏は、「企業だけでなく、新しいマンションなどで住宅も増えているため、サービス提供エリアとしてバランスがいいことから、中央区からのスタートを決定しました」という。

 もちろん、今後、順次エリアは拡大される予定だが、どれくらいのペースで、どのエリアを中心に拡大していくかは難しい判断で、「需要との兼ね合いも検討する必要があります(込山氏)」とのことだ。

 これも、あくまでも筆者の予想となるが、前述したように今回の「フレッツ 光25G」では、局舎側の設備の更新が発生する可能性が高い。つまり、局舎側に新しい設備を設置する場所を確保できるかどうか、確保できたとしても新しい設備をどれくらいの納期で調達できるかなどを検討しなければならない。

 となると、対象となるエリアに「25Gbps回線」に興味があるユーザーがどれくらい存在し、加入する見込みがどれくらいあるかが非常に重要になる。投資に見合うユーザーが獲得できそうな場所からエリアが広がっていってもおかしくない。

 そう考えると、筆者の住んでいる地域がエリアに含まれるのは、いつになることだろうか……。中央区は無理でも、新宿区や渋谷区に住んでおくべきだったか……、と非常に悔やまれる。

VNEやISPの対応も課題

 もちろん、「フレッツ 光25G」を利用するには、実際にインターネット接続サービスを提供する事業者の存在も欠かせない。

 李氏によると、「現状のVNEやISPのネットワークは、25Gbpsのスループットを前提に設計されているケースは少ないと思いますので、そうしたネットワーク側の対応は必要になるかと思います」という。

 問題は、25Gbpsサービスとして、どれくらいの実効速度をユーザーに提供するか? という点だろう。例えば、現状の10Gbpsサービスの場合、ISPによって2~3Gbpsの実効速度になるケースもあれば、6~8Gbpsの実効速度になるケースもある。

 25Gbpsと言われて、ユーザーが期待するのが20Gbps以上の実効速度なのか、10Gbpsを超えれば満足するのか? といった点は、VNEやISPが頭を悩ませるところになるだろう。それを基準にバックボーンのネットワークも見直さなければならなくなる可能性が高い。

 なお、込山氏によると、「PPPoE接続については対応予定になっています」ということだ。地方の小規模なISPは、VNEからの卸売りでIPoEサービスを提供するのではなく、自らPPPoEサービスを提供しているケースも存在する。こうしたケース向けに25GbpsのPPPoEサービスも検討しているとのことだ。

月額2万7500円をどう考えるか?

 月額2万7500円(税別で見れば2万5000円)という料金設定については、正直、筆者は安いと感じてしまう。「好きだから」「ネタになるから」と指摘されれば、その通りなので反論できないが、個人的にはもっと高いと予想していたので、予想を下回ったからという理由も大きい。

 というのも、やはり設備側のコストがかなりかかっていることが容易に想像できるからだ。ネットワークのしくみから推測しても、従来の『フレッツ 光クロス』よりも混雑を少なくするための工夫がなされていることが伺える。

 実際、「弊社としてはかなり攻めた料金設定にしています(李氏)」という通り、当初は加入者数が想定を上回ったとしてもコスト負担は大きいと想像できる。込山氏によると、「25G端末などのコストやエリア展開については、今後、ユーザーが増えていけば、次第にハードルも低くなっていくと予想できます。そういった意味でも(サービスを開始した)4月以降の契約数には注目しています」という。

 まあ、「回線サービスのあるある」ともいえるが、サービス開始当初はユーザーが少なく、ほぼ帯域を占有できるので、この体験がこの金額なら安いと、個人的には思ってしまう。正直、2026年の段階でこのサービスを利用すれば、少なくともNTT東日本の責任範囲内のネットワークでは潤沢な帯域を思う存分楽しめるはずで、「あぁ、今、この地域で一番速いのは自分なんだ」とか、「今、自分だけが潤沢に帯域を使っているだ……」と、悦に入ることができるだろう。これは、シンプルにうらやましい。

エリア拡大を期待

 以上、NTT東日本の担当者に「フレッツ 光25G」の詳細を聞いたが、思った以上に手の込んだサービスになっているという印象だ。詳細が明かされなかった部分も多いが、そこに工夫や苦労が詰まっていることは、声のトーンからも容易に想像できた。

 前述したように、エリア展開には時間がかかりそうなので、筆者宅で使えるようになるのは、だいぶ先のように思えるが、早く対象エリアになることを望みたい。中央区の方々には、ぜひ全国の通信マニアのためにも、なるべく前向きに導入を検討してもらいたいところだ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。「できるWindows 11」ほか多数の著書がある。YouTube「清水理史の『イニシャルB』チャンネル」で動画も配信中