インタビュー

高速・安定・高コスパを実現した法人向け10ギガ回線―NTT東西の「フレッツ 光クロス Biz」担当者にサービスの狙いを聞く

 6月3日にNTT東西が発表した「フレッツ 光クロス Biz」は、10Gbps対応の中小・中堅企業向け光回線サービスとして、非常に意欲的なサービスだといえる。

 上り下り最大10Gbpsの高速回線に10Mbpsの帯域確保が加わり、安定性が向上。99.99%のSLA(サービス品質保証)に、24時間のサポート受付および出張修理サービスと、サポート面も充実している。

 事業の基盤として信頼できる高速回線が、税込約2万円(2万735円。別途ISPの契約が必要)というのは、多くの企業で検討に値するだろう。今回はNTT東西の同サービス担当者に伺った内容をもとに、サービスの特徴を紹介する。

NTT東日本 ビジネス開発本部 クラウド&ネットワークビジネス部 基盤ネットワークサービス担当 桶谷晃平氏
NTT東日本 ビジネス開発本部 クラウド&ネットワークビジネス部 基盤ネットワークサービス担当 久保田弘太氏
NTT西日本 ビジネス営業本部 光ビジネス営業部 コミュニケーション基盤部門 サービスデザイン担当 課長 中村純氏
NTT西日本 ビジネス営業本部 光ビジネス営業部 コミュニケーション基盤部門 サービスデザイン担当 主査 清水大誠氏

広がる「フレッツ 光クロス」提供エリア、東はすでに全都道県域

 NTT東西が提供する最大10Gbpsの光回線サービス「フレッツ 光クロス」は、2020年4月に提供が開始された。それから5年あまりで、ほぼ全国の都道府県域に展開している(都道府県庁所在地など、各都道府県内のどこかのエリアでは利用可能な状態である)。

 NTT東日本では、2025年3月で、サービス提供エリアの全都道県域に提供エリアを拡大した。NTT西日本では、2025年6月時点で石川県、富山県、福井県、鳥取県、島根県、山口県、沖縄県が未提供だが、2026年1月に石川県、富山県、福井県、沖縄県、2026年3月に鳥取県、島根県、山口県での提供開始の予定が発表されている。

 このように提供エリアが広がり、全国の法人で、10Gbpsの光回線が現実的な選択肢になっている。そして、「フレッツ 光クロス」の法人向けサービスとしては、「フレッツ 光クロス オフィスタイプ」が2023年3月から提供中だ。

 「フレッツ 光クロス オフィスタイプ」は家庭向けの「フレッツ 光クロス」に保守サービスが強化された内容で、月額料金は24時間出張修理サービス付きのプランが、NTT東日本では8580円、NTT西日本では7480円で提供されている(いずれも、各種割引を最大限適用した場合の金額)。

 これに加わるかたちで、2025年6月に新たに発表されたのが、冒頭の「フレッツ 光クロス Biz」である。

帯域確保や高SLAで、より頼れる通信回線を提供

 「途切れない」「遅延しない」ビジネスインフラとしての信頼性を高める、10Mbpsの帯域確保、および99.99%という高いSLAが、「フレッツ 光クロス Biz」の大きな特徴となる。

 NTT東西の担当者によれば、「フレッツ 光クロス」の法人利用が広がる中で、速度に加えて安定性の高いサービスを求める声が多く寄せられており、そうした中で、中小・中堅企業向けに最善の選択肢となるサービスを作ることを意図したという。

 通信速度が出て大容量のデータを高速にやり取りできることはもちろん重要だが、オンラインでの会議や商談、拠点間のデータ転送などの用途においては、通信の安定性も求められる。ウェブ会議で映像や音声がしばしば途切れるようでは困るし、データの転送が遅れたり、タイムアウトしたりするようなことがあると、業務効率に影響するだけでなく、データの破損など大きなトラブルの原因にもなりかねない。

 「フレッツ 光クロス Biz」の帯域確保では、OLT(NTT局内の光回線終端装置)から会社内に設置されるのONU(光終端装置)の間に10Mbpsの回線を確保し、近隣での通信の混雑などがあっても影響を受けにくい通信環境を実現する。

 最大10Gbpsの回線の話をしている中で10Mbpsという帯域は、少ないと感じられるかもしれない。しかし、参考までに主要なウェブ会議サービスのネットワーク要件を見てみると、Microsoft Teamsでは1.5Mbps以下、Zoomでは上り3.8Mbps/下り3.0MbpsでHDビデオ画質での利用が可能とされている。完全なベストエフォートでなく、常に10Mbpsの帯域が確保されていることは、非常に頼もしいことだと分かるだろう。

 また、99.99%という高いSLAが提供され、もしもNTT側の原因で回線が停止した場合、返金が行われる。「途切れない」「遅延しない」に加え、「止まらない」ことの信頼性も高い。

フレッツ 光クロス Bizのサービスイメージ(NTT東日本)
フレッツ 光クロス Biz/オフィスタイプの比較
サービスフレッツ 光クロス Bizフレッツ 光クロス
オフィスタイプ
月額利用料2万735円8580円(NTT東日本)
7480円(NTT西日本)
帯域保証/確保/優先帯域確保 上り下り10Mbps
(OLT~ONU間)
なし
SLA99.99%なし
故障受付24時間24時間
出張修理24時間24時間

※月額料金はいずれも税込みで計算
※フレッツ 光クロス オフィスタイプについて、NTT東日本は「フレッツ 光クロス オフィスタイプ スタンダード(24時間出張修理)」、NTT西日本は「フレッツ 光クロス オフィスタイプ(ファミリー)(24時間出張修理)」に関する情報を記載している
※NTT東日本のフレッツ 光クロス オフィスタイプ スタンダード(24時間出張修理)の料金はクロス月額割適用時の金額。13カ月目以降は9350円
※NTT西日本のフレッツ 光クロス オフィスタイプ (ファミリー)(24時間出張修理)の料金は2年契約の「光はじめ割クロス」適用かつ1、2年目の金額。3年目以降は9020円
※フレッツ 光クロス オフィスタイプには、出張修理が24時間でなく7時〜22時のみのプランもある
※両サービスとも、上記料金設定となる24時間出張修理オプション利用時に、後述する24時間以内の駆けつけ保証が付帯する

業界最高水準! 24時間以内に「必ず駆けつける」修理サービス

 「フレッツ 光クロス Biz」の発表と同時に、法人向けフレッツ光の24時間出張修理オプションに対する「24時間以内の駆けつけ保証」の追加が発表された。もちろん「フレッツ 光クロス Biz」でも利用できる。

 出張修理(オンサイト保守)サービスの依頼を24時間365日受け付ける従来の内容に加え、受け付けてから24時間以内に、必ず現場に駆けつけることを保証するものだ。NTT東西では業界最高水準の保守・サポートサービスであるとうたう。

 さすがに24時間以内の修理完了までは保証されないが、「止まらない」サービスとしての信頼性は、さらに高まる。

24時間駆けつけ保証のイメージ(NTT東日本)

ISP込みで月額2万円台を意識したサービス設計

 料金面について聞くと、サービス設計にあたって「導入しやすい料金水準であること」が強く意識されたという。

 法人向け回線で安定性を追及するなら、帯域保証が付いた専用線サービスもあるが、料金は大幅に上がってしまい、選択肢に入れられる企業は限られる。しかし、ベストエフォートのフレッツ 光クロスだけでは心もとない――そのように考える層に向けた最適なサービスが、これまで提供できていなかったとのことだ。

 同サービスが想定する主な用途は、中小・中堅企業からSOHO、個人事務所などにおける、インバウンド通信(オフィス内のサーバーからサービスを提供するなど、内部から外部への通信)だ。動画データ、CADデータ、医療データなど、さまざまなデータを扱う幅広い業種にニーズがあると見ている。

 ただ、それらに限定せず、学校などアウトバウンド通信(外部のサービスを利用するなど、外部から内部への通信)の多い環境でも、従来のフレッツ 光クロスより高品質な回線を求める向きに、最適な選択肢となることを目指した。

回線サービスの「帯域保証」とは、データセンターとONUの間など一定の区間に専用線を敷設し、専有可能な回線によって一定の帯域を保証することを指す。「帯域確保」は、ネットワーク上の一定の帯域を専用に確保することを指し、具体的にネットワーク上のどの区間を、どのような運用(専用線の敷設、ソフトウェア的なトラフィックコントロールなど)で確保するかは、事業者やサービスにより異なる。帯域保証と比べて、専用線を敷設するほどのコストは掛けずに、重大な遅延などを回避できるよう、最低限の帯域を確保できることが、帯域確保の特徴となる

 そのような幅広い層が導入しやすい料金として、フレッツ 光クロス Biz単体では税別で月額2万円を切る料金とし、ISPと合わせても月額2万円台にできることを意識してサービスを設計したという。

 ISPとしては、フレッツ 光クロスに対応するISPの一部がフレッツ 光クロス Bizでも利用可能となる見通しだ。本稿の制作時点ではASAHIネット(株式会社朝日ネット)が対応を発表しているが、具体的な料金などはまだ発表されていない。同社のサービスの詳細や、この後発表される対応ISPの情報に注目したい。

 フレッツ 光クロス Bizのサービス開始は、9月30日の予定。ただし、東京都新宿区・渋谷区・中野区の一部では、6月30日から先行提供が予定されている。NTT東日本ではウェブサイトまたは電話で申し込みを受付中。NTT西日本では、受付開始日を後日案内するとしている。