インタビュー

「ドスパラ」に入社して33年、サードウェーブ社長に就任した永井正樹氏が語る「当たり前のことをやろう」の成長戦略

クリエイター支援、AI活用など、挑戦を続ける組織が次に見据えるテーマは?

サードウェーブ 取締役社長執行役員兼最高執行責任者(COO)の永井正樹氏

 「新たなことに挑戦するだけでなく、新たなことを世の中に広げる活動に取り組む。そこにサードウェーブの特徴がある。これから1年は、PCのラインアップ強化や店舗の拡大だけでなく、AIに力を注いでいくことになる」――。2025年2月に社長に就任したサードウェーブの永井正樹社長兼COOはこう語る。

 ハイスペックPCブランドの「GALLERIA(ガレリア)」や多様なニーズに応える「THIRDWAVE」、法人向けPCなどによるPC事業のほか、PCショップ「ドスパラ」を展開。売上高1000億円の達成を目指して、成長戦略を加速していくことになる。そして、「今後1年は、AIへの本気ぶりを示すことになる」とも宣言する。サードウェーブ社長の永井氏に、同社が目指す方向性などについて聞いた。

「ドスパラ」の歴史と共に歩んで33年目

――永井社長は、1993年4月にサードウェーブに入社しました。これまでの経緯を振り返ってもらえますか。

永井氏:気がついたら、サードウェーブに入って、33年目となりました(笑)。私が最初に触れたPCは、小学校5年生のときに買ってもらった三洋電機のMSXで、プログラムを勉強して、簡単なゲームを作ってみたり、音楽やドット絵を描いてみたりといったことをしていました。

 高校は工業系で、卒業後には大手企業で3年間、システムエンジニアをやっていたのですが、そこからサードウェーブに転職しました。秋葉原には、ドスパラの店舗が1店舗しかない時代だったのですが、ドスパラのショップスタッフとして入社し、約1年後には店長になりました。その後、本社に異動し、企画や購買、工場、人事など、ほとんどの仕事を経験しています。

 それぞれの立場から、お客様にはどんなPCが求められているのか、どのメーカーからどんなパーツを調達すれば競争力を発揮できるのか、優れたPCを作り、いち早くお客様に届けるにはどうするかといったことを考えてきました。ドスパラは1992年暮れに第1号店を出店していますから、ドスパラの歴史と、私のキャリアはほぼリンクしています。

――サードウェーブへの入社のきっかけはなんだったのですか。

永井氏:就職情報誌を見ていて、秋葉原のPCショップがスタッフを募集しているのが目に留まり、軽い気持ちで受けたことがきっかけです。当時の店長から「いつから来れるの?」と聞かれ、「4月3日からならば出社できます」と答えて……(笑)。その場で合格をいただけたのも縁かなと思い、入社を決めました。ドスパラの店名が、もともとはDOS/Vパラダイスであったことからもわかるように、当時はまだMS-DOSが主流で、Windows 3.1が登場したタイミングでした。

――これまでの経験は、経営トップとしてどう生かすことができますか。

永井氏:さまざまな部門や立場で経験をしていますから、社内でうまくいっているところや、うまくいっていないところ、いまどんなことに対処すべきかといったことを理解し、さらに、全体を俯瞰した上で経営判断ができることは、私の強みだといえます。サードウェーブが目指すビジョンに対して、いまなにをやるべきかといったことを、明確にしていきたいですね。

「新しいことをやらないと気が済まない」社風が強み

――永井社長から見たサードウェーブの強みとはなんでしょうか。

永井氏:自由な発想をもとに、新たなことに挑戦をし、さらに、新たな動きを捉え、それを世の中に広げるための活動に取り組むことができる企業だという点です。これはサードウェーブのDNAといえる部分です。新しいことをやらないと気が済まない会社なんですよ(笑)。

 サードウェーブは、PCパーツの販売からスタートした会社であり、お客様からの要望をもとに、店舗でPCを組み立てて販売し、そのニーズの拡大に伴って、工場を構え、PCの集中生産を開始しました。さらに、ドスパラではゲームをプレイするお客様が多いことから、ゲーミングPCブランドの「GALLERIA」を立ち上げ、この分野にフォーカスしてビジネスを成長させてきました。新しいパーツが届いたら、突貫で検証を行い、お客様にいち早く届けることにはこだわってきましたし、受注したら最短2日間で出荷するという仕組みを継続しているのもサードウェーブの強みであり、こだわりです。

 お客様は少しでも早くPCが欲しいと思っていますから、それに対して、いち早く届けて、喜んでいただきたい。これは、言うのは簡単ですが、実行し続けるのは難しいことです。社員が、こうした基本的なことに、実直に、真面目に挑戦し続けていることは、私が自慢できる部分です。

 また、モノづくりだけではなく、2010年には約10日間にわたるゲームイベント「秋葉原PCゲームフェスタ」を開催したり、まだeスポーツが広がっていない2018年には、eスポーツ施設である「LFS(ルフス)池袋esports Arena」を、他社に先駆けて開設したり(現在は終了)、高校生eスポーツ大会に協賛するといったように、市場を盛り上げることにも、率先して取り組んできました。お客様のニーズの拡大とともに成長を遂げてきたわけですが、それだけでなく、市場をどう広げていくかといったことにも投資を続けてきました。

サードウェーブでは生産・物流の中心を担う綾瀬本社工場、営業やコールセンター業務の拠点である平塚物流センター、そして開発・サポート拠点である海老名事業所と、自社で大規模な拠点を複数擁している。写真は平塚物流センター

――その一方で、サードウェーブが変えなくてはならない課題はなんですか。

永井氏:新たなことへの挑戦が多いので、失敗はたくさんあります。ただ、これまでの私の経験からも、前向きな挑戦に対しては、失敗しても叱られることはないですね。新しいものはやってみないとわからないですし、やり切って失敗して、この先に進む道がないということがわかれば、それはそれでよかったと。別の道を探せばいいだけの話ですからね。

 むしろ、やってみたけど、行き止まりを見つけられなかったほうが失敗だと思っています。売れると思っていたものが、売れないのはどうしてかということがわかればいいのです。

 あえて、課題を挙げるとすれば、私たちのブランドに対する認知度が低いことです。ドスパラとGALLERIAのブランドは、浸透してきた印象がありますが、サードウェーブという名前を聞いたことがないとは、よく言われます。2024年から法人向けPCにも本格的に力を入れていますが、法人ユーザーからは、「サードウェーブって、どんな会社なんだ」、「知らない会社のPCを入れて大丈夫か」といった声もあり、認知度をもっとあげていく必要を感じています。いま、テレビCMや交通広告、YouTubeなどでの配信を開始しました。今後の成長に向けて、企業としての認知度を高めていかなくてはなりません。

――学生時代などに「GALLERIA」を使っていたユーザーが、企業のPC担当になるケースもあるのではないですか。

永井氏:そうしたケースは確かに増えています。ドスパラでいつも購入していただいたお客様が、ある日、宛名に企業名を入れた領収書が欲しいということもありますからね。中小企業では、PCに詳しいからという理由で、PCの指導役や導入担当になるケースが多いのですが、そこにドスパラのお客様や、GALLERIAユーザーが就く場合があるようです(笑)

「ドスパラでいつも購入していただいたお客様が、ある日、宛名に企業名を入れた領収書が欲しいということもあります」

永井社長体制で目指すのは「おもしろい会社」

――2025年2月に社長に就任して、社内に対してはどんなことを言ってきましたか。

永井氏:最初に言ったのは、「当たり前のことをやろう」ということでした。

――それは、どんな意図を込めた言葉なのですか。

永井氏:サードウェーブにとって当たり前のこととは、いい製品を作るとか、いい接客をするとか、納期をきちんと守るといったことであり、こうした「当たり前」は、日々の仕事のなかで数多くあります。ただ、当たり前のことをやり続けるというのはとても難しくて、続けているうちにおろそかになる部分が出てきたり、改善が止まってしまったりということが起こりやすい。

 サードウェーブが掲げている企業理念やミッション、100年ビジョンを実現するには、守らなくてはいけないことがあり、逆に変えていかなくてはならないこともたくさんあります。それらをひとつずつ丁寧にやり続けることが大切です。自分たちがやるべき当たり前のことができているのかどうかを確認し、それを徹底して磨いていくことが重要だと思っています。

――永井社長体制では、中期的にどんな会社を目指していきますか。

永井氏:ひとことでいえば、「おもしろい会社」です。1984年にサードウェーブが誕生してから40年以上に渡り、成長を遂げた理由は、「好きな人たち」が集まっている会社であることだと思っています。PCが好きだとか、パーツが好きだとか、あるいはゲームが好き、eスポーツが好きという人たちが社員として働いています。

 言い換えれば、自らもユーザーの立場であり、お客様の気持ちが理解しやすい立場の社員が多いともいえます。お客様がデジタルの世界で、さまざまな楽しみ方を発見することを、社員が一緒に楽しみながらお手伝いをし、さらにいい環境を作るための努力をすることで、サードウェーブらしい価値をお届けできていると自負しています。

 それを、社員が「おもしろい」と思うだけでなく、お客様にも、ワクワクしてもらい、「おもしろい」と思ってもらえる世界を提供する。そんな会社になりたいと思っています。この目標にゴールはありませんし、サードウェーブであれば、まだまだできると思っています。

 いまは、店舗スタッフの採用者の半分が文系です。テクノロジーへの熱量が低くなっているのではないかという指摘があるかもしれませんが、お客様がなにを欲しいと思っているのか、という点での感度が高く、専門用語を使わずに、わかりやすく、正しい提案をしています。そして、デジタルの世界で、なにかおもしろいことをしたいという熱意に変わりはありません。

PCユーザーのクリエイティブな活動を支援する「DCP」

――ユーザーと「おもしろい」ことを共有する取り組みには、どんなものがありますか。

永井氏:先に触れたゲームフェスタの開催や、eスポーツ施設の開設も、その一例です。また、昨今では、AIフェスティバルの開催や、ドスパラ会員の創造活動応援プログラムであるDospara Creative Production(DCP)も、お客様と一緒になって、おもしろいことをやろうという姿勢の表れのひとつです。

 たとえば、DCPでは、クリエイティブな活動をしている人、あるいはこれからやりたい人たちが、どうすればうまくいくかといったことを、「DCP参加登録」しているドスパラ会員であれば無償で受講できるセミナーなどを通じてサポートしています。ゲーム配信の視聴者数を伸ばしたい人にとって、ヒントになる情報が盛りだくさんですし、ライブで参加すれば講師に質問することもできます。VTuberやフォト、DTM、イラスト、AIなど、テーマは多岐に渡っており、ドスパラ会員(要DCP参加登録)であれば、誰でも参加できるプログラムなので、ぜひ多くの方々に参加していただきたいですね。

 また、DCPの参加者を対象に、配信者向けGTA5オンラインサーバーを「DCPグラセフサーバー」として提供しています。このように、PCを販売することや、PCを修理することだけがドスパラの役割ではなく、お客様のやりたいことをサポートすることで、一緒になって、PCを楽しんでもらうことを目指しています。DCPだけで見れば、投資が先行しているので収益面ではかなり大変なのですが(笑)、お客様に楽しんでいただくために、新たなことに挑戦するサードウェーブの姿を象徴した取り組みのひとつだと思っています。

Dospara Creative Production(DCP)はオンラインで無料登録可能、ドスパラ会員ならチェック1つで登録できる。各種セミナーやイベントの予定をチェックし、参加できるほか、オンラインセミナーのアーカイブ動画の視聴も可能
2025年8月25日に開催された、お絵描き魔王ことディープブリザード氏によるオンラインセミナー「VTuberを描く!?Live2Dイラストセミナー 第2弾 立ち絵の描き方・応用技術編」の様子
DCPではリアルイベントも行われる。こちらは、2025年7月26日に開催された、写真家の青山裕企氏による「第6回DCPフォトウォーク in 稲毛海浜公園」の様子。写真はデジカメWatch「あの青山裕企さんがポートレート撮影をアマチュアに指導」より

AIの発展への貢献を目指す「AIフェスティバル」

――AIフェスティバルも、サードウェーブらしい取り組みのひとつですね。

永井氏:もともとは、2022年に開催したAIアートグランプリに、サードウェーブが協賛したことが発端になっています。AIを活用したアート作品を募集するもので、動画や静止画、アニメ、音楽、ハードウェア、パフォーマンスなどの表現物やツールを表彰しています。AIアートグランプリの第2回目を開催するときに、AI分野で先行するクリエイターなどによるトークセッションや、24時間AIハッカソン、会場での作品展示などを加えた形へと拡張し、開催したのがAIフェスティバルです。

 2025年11月8日には、東京・秋葉原のベルサール秋葉原で、3回目となる「AIフェスティバル 2025」を開催します。AIアートグランプリやハッカソン、落合陽一氏をはじめとする著名スピーカーによる講演会に加えて、今回は新たにAIクリエイターズマーケットを開催します。これは、AIに関係する同人誌や同人グッズ、アート、ツール、ソフトといったAI関連商品を販売、展示できる場となります。いわば「AIのコミケ」が誕生することになります。

 サードウェーブが、AIの発展に対して、どういう関わり方ができるのか、あるいはどう貢献ができるかといったテーマに対する答えのひとつが、AIフェスティバルだといえます。これまでの経験からも、新たなものが登場したときには、多くの人に触れる場がないと、市場が認知されにくく、市場そのものが広がりにくいことを痛感しています。AIフェスティバルは、クリエイターがAIを使って生み出した作品をアウトプットできる場づくりであり、AIを広げるための重要な取り組みのひとつとなって、そこにサードウェーブは貢献できると考えています。

 実は、この取り組みは、社長に就任する前から、私がずっと関わっているもので、全国5カ所で開催している「全日本AIハッカソン 2025」の地方大会にも全部訪れ、1日中、参加者と会話をしています(笑)。大きな声では言えないですが、AIハッカソンのプロジェクトマネージャーは私であると思っているぐらいですよ(笑)。最近、注目しているのは、AIハッカソンに参加している人は、必ずしも理系ではないということなんです。そして、プロンプト入力は文章ですから、文系のセンスが問われるともいえますし……。AIが広がることによって、さまざまな変化が起きていることを現場で感じています。

AIフェスティバル 2025」は11月8日開催予定
2024年11月8日に開催された「AIフェスティバル 2024 Powered by GALLERIA」内「第三回AIアートグランプリ」絵画部門受賞作品発表の様子。写真は窓の杜「『第三回AIアートグランプリ絵画部門』結果発表! グランプリ受賞は『不易流行』【AIフェスティバル 2024】」より

クリエイター向けハイエンドPC「GALLERIA」のブランド定着を目指す

――サードウェーブの経営指標としては、なにを重視しますか。

永井氏:2026年7月期には、売上高1000億円を目指しています。また、サードウェーブのブランド認知度を高めることなど、いくつかの経営指標の達成に取り組みます。

――今後、国内PC市場の縮小が見込まれるなかでは、かなり挑戦的な目標ですね。前年比20%以上の成長が必要です。

永井氏:できないことではない、と思っています。私ができないと思ったら、達成は不可能ですからね。

――2025年8月から始まったサードウェーブの新年度において、個人向けPCでは、どんな点に力を注ぎますか。

永井氏:これまでゲーミングPCブランドと位置づけていた「GALLERIA」を、個人向けハイエンドPCというポジションに再定義し、ゲームからクリエイションに至るまでをカバーする製品群に拡張しています。ただ、ゲーミングPCブランドというイメージが定着しすぎていますから、なかなかこのメッセージが伝わっていないという反省があります。

 「GALLERIA」を使えば、ゲームだけでなく、創造的な使い方はなんでもできるということを理解してもらい、マルチに活用してもらうための提案をしていきたいと思っています。また、ハイコストパフォーマンスモデルと位置づける「THIRDWAVE」ブランドのPCは、コストを重視するとか、PCで最低限のことができればいいといったニーズに対応したもので、必要に応じてオプションを追加して、用途に最適化することができますから、その点についても改めて訴求していきたいですね。

クリエイター向けPCとして展開する「GALLERIA」ノートPC(GALLERIA ZL9C-R57-C7

法人向けPCはAI活用にフォーカス

――法人向けPC事業では、どんな点に力を注ぎますか。

永井氏:まだまだ実績が少ない分野ですし、柱といえるものがまだ確立できていません。まずは、サードウェーブが得意とするグラフィックパワーが求められる領域からアプローチしたり、AIの活用においてリソースが必要とされる領域にフォーカスしたりといったことを考えています。AI活用のニーズは確実に広がっていきますし、法人ユーザーのなかには外にデータを出したくないといったニーズが想定されます。

 BTOの強みが発揮できる分野ともいえますし、GPUを搭載したPCを数多く取り扱い、熱処理などを含めてノウハウを蓄積してきた経験を生かせる分野でもあります。AIのニーズは多様化していくことになります。そうしたさまざまなニーズに応えられる体制を整えていきたいですね。

法人向けモデル「raytrek」ノートPC(raytrek R5-RL5R Adobe Creative Cloud推奨スペックモデル

――2025年10月には、Windows 10がEOSを迎えます。サードウェーブとしてはどんな点に取り組みますか。

永井氏:法人向けでは、2025年3月までに、ある程度、リプレースが進んだと見ています。ただ、大手企業に比べて、中小企業や個人事業者は少し遅れがあり、その需要が顕在化しているところです。また、個人市場では、ぎりぎりのタイミングに集中する傾向があり、その需要に応える準備をしていきたいと思っています。サードウェーブの特徴は、BTOによる対応であり、ユーザーに人気が高いCPUやGPUなどを把握できますから、それをもとに調達を進めるなど、ニーズをみながら柔軟に対応していくつもりです。

「ドスパラ」は、やりたいことを発見できる「体験型PC専門店」へ

――PCショップの「ドスパラ」の注力ポイントは、どんな点になりますか。

永井氏:新規出店や店舗のリニューアルは、継続的に行っていきます。お客様の近くで、ビジネスを拡大したいと思っていますから、ドスパラの店舗数は増やしていきます。これまではロードサイド店舗を中心に、物販やサービスを提供する拠点として拡張してきましたが、お客様に体験していただく「体験型PC専門店」としての取り組みを加速します。これはすでに開始している取り組みであり、地域や場所、規模、展示内容などを含めて試行錯誤の結果、そのノウハウを蓄積しており、方向性も定まりつつあります。

 ゲーム配信や楽曲制作といったクリエイティブな用途に最適な機器を揃え、それを体験でき、購入後もサポートする店舗はドスパラならではの新たな方向性だといえます。ただ、常に課題はありますし、現場のスタッフからもさまざまなアイデアが出てきますから、これからも試行錯誤を繰り返しながら、お客様に価値を提供できる店舗づくりを目指していきます。

 直販サイトはバーチャルですから、幅広い品揃えをベースに、選択してもらえるような構成にしていますが、リアルの店舗はスペースが有限ですから、どうしても取捨選択が必要になります。コアとなる部分は同じだとしても、工場が近いとか、学校が近いといったように、地域ごとに顧客層が違うという状況もありますので、店舗ごとにある程度の特性を持たせながら展開していくことになります。多くのお客様が、自分のやりたいことに対して、どんなPCが最適なのか、ということがわからないのが実態ではないでしょうか。直接、相談ができるリアルの店舗の役割は、これからも重要だと思っています。

 ドスパラとは別に、PCの修理やスマホの使い方をサポートする「デジタルドック」による店舗展開も進めています。困ったときに安心して利用できる環境を整えるのが、「ドスパラ」や「デジタルドック」で目指す姿です。

2025年9月時点で、オンラインショップほかに「ドスパラ」は全国で43店舗、「デジタルドック」は15店舗を展開する

――サードウェーブが目指すこれからの方向性について教えてください。

永井氏:1000億円企業に相応しい会社になることを目指します。そのためには、主力である「GALLERIA」のブランド価値を理解してもらうこと、法人向けPC市場の立ち上げに取り組むことが大切となります。また、1000億円企業として、サードウェーブの存在意義を広く知っていただくことも重要です。デジタル分野においてAIの普及や、クリエイティブ市場の拡大に対して、積極的な支援を行っている企業であるということを、しっかりと訴求し、それを知っていただく1年にしたいですね。

 また、この1年は、「サードウェーブがAIでなにかをするのか」といったところに注目してください。これは、非常に挑戦的なものになります。なにをやるのかは、いまはまだ言えませんが、きっと、「サードウェーブはAIに本気だ」ということを感じてもらえるものになります。ぜひ楽しみにしていてください。

「この1年は、『サードウェーブがAIでなにかをするのか』といったところに注目してください」