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2025年版 Wi-Fiルーター買い替えガイド〜優先事項別「お得に買いたい!」の最適な選択肢
2025年11月12日 06:00
最新のWi-Fi 7にするか? 安くなったWi-Fi 6か? Wi-Fi 7ならどの価格帯を狙うべきか?
Wi-Fiルーターの買い替えで、どのメーカーの、どのモデルを選べばいいかに悩んでいる人も多いことだろう。そこで、ここでは2025年11月時点での市場動向を考察しつつ、用途ごとにおすすめのモデルをピックアップする。Wi-Fiルーターの買い替えを検討している際の参考にしてほしい。
[目次]
※実売価格はいずれも2025年11月上旬時点の筆者調べ
手頃なWi-Fiルーターの選択肢が大幅に広がった2025年
2025年のコンシューマー向けWi-Fiルーター市場はWi-Fi 7対応モデルが充実した年だ。
2023年末に国内でWi-Fi 7ことIEEE 802.11beが利用可能になったが、当初は性能も高いが価格も高いハイエンドモデルが中心で、誰もが買いやすい状況とは言えなかった。
しかし、それから2年ほど経った2025年11月時点で、主要メーカーのWi-Fiルーターラインアップを見ると、Wi-Fi 7対応のエントリーモデルやミドルレンジモデルもそろいつつあり、必要な機能や用途に応じて複数の選択肢から選べる状況になってきている。
また、10Gbpsの光回線サービスの普及を受けて、市販のWi-Fiルーターでも10Gbps回線に対応したモデルが増えてきた。従来は、ハイエンドモデルにしか搭載されていなかったが、2~3万円前後のミドルレンジの製品でもWAN側に10Gbpsポートを搭載した製品が複数存在する。10Gbps回線を使う予定があるなら、10Gbpsポートの有無はチェックしておくべきだろう。
このほか、2025年は新たなメーカー・ブランドの製品にも注目が集まった年だ。Xiaomi、Amazonのeero、LinksysからWi-Fi 7対応製品、ZTEからWi-Fi 6対応製品が登場し、新たな選択肢として加わった。価格や設定面などの課題はあるが、これらの製品を選ぶことも可能になった。
もちろん、Wi-Fi 6対応製品も、現行モデルを含めてまだ多くの製品が存在するうえ、新製品も登場している。少しでも費用を抑えたい場合はWi-Fi 6を選ぶメリットもあるが、Wi-Fi 7でもエントリーモデルは安くなってきている上、各メーカーのメイン商品となるモデルがWi-Fi 7に移行した現状を考えると、Wi-Fi 7対応製品から選ぶことをおすすめする。
今回は、ハイエンド製品ではなく、ミドルレンジやエントリークラスの製品を中心に、なるべく安く購入できることを重視して製品をピックアップした。そのうえで、最優先したい事項が異なる4種類の「安く買いたい」ケースを想定し、それぞれに対応したおすすめモデルを見ていく。
ケース1「10Gbps回線で使える安い製品が欲しい」
まずは、10Gbpsの光回線サービスを利用していて、それを生かせて、なおかつリーズナブルなモデルがほしい、というケースだ。これから10Gbps回線の導入を考えている場合も、参考にしてほしい。
このクラスは、性能と価格のバランスがいい製品をピックアップした。価格的には2~3万円前後、速度は5764(5GHz)+1376(2.4GHz)Mbpsのデュアルバンド、そして何より10GbpsのWANに対応した製品となる。このデュアルバンド、10Gbps対応というWi-Fiルーターが増えてきたのは、今年の特徴でもある。
デュアルバンドというのは、無線の2つの帯域を利用できる製品だ。Wi-Fi 7は、2.4GHz、5GHz、6GHzの3つの帯域で利用できるが、このうち2.4GHzと5GHzのみに絞ったのがデュアルバンド対応モデルとなる。
Wi-Fi 7の特徴は6GHz帯で320MHz幅を使った高速な通信ができることだが、6GHz帯をサポートするトライバンド製品は価格が高くなるため、あえて6GHz帯を切り捨てることで、性能と価格のバランスをとったモデルとなる。
LAN側にも10Gbpsのポートがほしいと考えるとハイエンド製品が視野に入るが、10Gbps回線の通信速度を、複数のPCやスマートフォンで分け合って使う想定なら、以下のような製品で、十分に10Gbps回線のパフォーマンスを生かせる。
NECプラットフォームズ Aterm 7200D8BE(AM-7200D8BE)
実売:3万228円
最大転送速度:5764+1376Mbps
WAN:10Gbps×1
LAN:2.5Gbps×1、1Gbps×3
ASUS ROG Strix GS-BE7200X
実売:3万5152円
最大転送速度:5764+1376Mbps
WAN:10Gbps×1
LAN:2.5Gbps×1、1Gbps×4
いずれも、5GHz帯が4ストリーム対応となるため、PCやスマートフォンの同時接続に強い製品となる。接続台数が多い環境でおすすめだ。
価格を考えればTP-LinkのArcher BE450が優秀だ。LAN側も2.5Gbps対応でコスパが高い。エレコムのWRC-BE72XSDも2万円台前半なのでお買い得だ。機能はシンプルだが性能も高い。
Aterm 7200D8BEやROG Strix GS-BE7200Xは、価格は少々上がるものの、それぞれ独自の機能を搭載しているのが特徴だ。Aterm 7200D8BEは、NECならではのワイドレンジアンテナPLUSでスマートフォンの向きを変えても安定した通信が可能。一方、ROG Strix GS-BE7200Xはゲーミングルーターとなっており、ゲームの通信を優先処理できるのが特徴。いずれも、ファンが多いブランドで、指名買いされる傾向がある。
ケース2「予算1万円で、なるべくいい製品が欲しい」
続いては価格を最優先しての選択となる。ここでは、ただ安いだけでなく、ある程度の数の機器や複数人での利用にも耐えられる、性能的におすすめできる水準を備えた製品をピックアップした。価格は1万円前後となる。
性能としては、速度は2882(5GHz)+688(2.4GHz)Mbpsのデュアルバンド対応で、有線は2.5Gbpsがあればうれしいが、1Gbpsの回線環境を想定しており、1Gbpsでも十分と割り切った製品となる。
この価格帯だとWi-Fi 6も視野に入るが、Wi-Fi 7なら最新のスマートフォンとの組み合わせでMLOも利用できるメリットがあるので、やはりWi-Fi 7を選びたい。
アイ・オー・データ機器 WN-7D36QR
実売:1万283円
最大転送速度:2882+688Mbps
WAN:2.5Gbps×1
LAN:1Gbps×2
価格で考えれば、Archer BE220が最もお得だ。ただ、エレコムのWRC-BE36QS(WRC-W701-B)がWAN側に2.5Gbpsポートを搭載しながら、実売9480円を実現しているため、コスパという観点では、この製品が優秀となる。将来的に10Gbps回線を導入した場合でも、2.5Gbpsまでとはなるが、1Gbps以上の速度で利用できる。
ちなみに、アイ・オー・データ機器のWN-7D36QR(白のみ)、およびバッファローのWSR3600BE4P(ホワイト/ブラック選択可能)なら、ホワイト筐体の製品も選択できる。設置場所に合わせてホワイトの筐体が欲しいという場合は、この2機種がねらい目だ。
ケース3「複数台でメッシュを構成したいが費用も抑えたい」
メッシュは、複数台のアクセスポイントを組み合わせて広いエリアでWi-Fiを使えるようにする技術だ。自宅が広くて、あるいは障害物があって、電波の届きにくい場所がある場合は、メッシュが効果的だ。
ただし、Wi-Fi 7対応の製品では、メッシュでの利用を前提とした専用モデル(メッシュルーター)は減りつつある方向で、通常のWi-FiルーターでもEasyMeshあるいはメーカー独自のメッシュ規格に対応し、メッシュを構成できる製品がほとんどとなる。
個人的には、性能を考えるとメッシュはトライバンド対応製品で使うべきだ(メッシュ機器間の通信「バックホール」も必要なので、3帯域が使える製品が望ましい)という主義だが、トライバンド製品は高価なのが難点だ。
ピーク性能よりも、通信エリアが広がることを目的とする場合は、2882(5GHz)+688(2.4GHz)Mbpsのデュアルバンド対応で十分と言える。価格帯としては2万円〜4万円(メッシュ構成可能な2台で)。有線は2.5Gbpsがあればうれしいが、1Gbpsでも十分だろう。
Xiaomi BE3600 Pro
実売:1万9800円(2台)
最大転送速度:2882+688Mbps
WAN:2.5Gbps×1
LAN:1Gbps×3
eero 7は価格が若干高めだが、セールのタイミングで安くなることがあるので、それを狙うといいだろう。デザイン的にも洗練されているイメージがある (余談だが、以前のレビューで通信速度を示す数値が日本では規制により出せない数値になっていたことを指摘したところ、販売サイトの速度表記が修正されており、国内仕様に合わせた「BE3400」となっていた)。
価格に加えて、設定のしやすさ、アプリの完成度などを考えると、おすすめはDeco BE22だ。管理アプリからネットワーク全体を管理できる上、2台目以降の設定も簡単。独自のメッシュ機能によって、専用にチューニングされたソフトウェアが搭載されるメリットもある。
実は、有線ポートが2.5GbpsとなるDeco BE25の方が2台セットの価格が若干安い(2万5047円)のだが、価格はタイミングによって変化するので、今回は1Gbps対応のBE22を取り上げる。場合によっては、BE25を選ぶのもおすすめだ。
ただ、価格だけでいえば、Xiaomi(シャオミ)は2台で2万円を切る上、バッファローのWSR3600BE4Pも2台で2万1960円と安い。WSR3600BE4Pは、自分でメッシュのセットアップが必要になるが、EasyMeshで本体ボタンや有線接続で簡単に構成できる。価格を重視するならこの2台を選ぶのも手だ。
ケース4「快適な6GHz帯を使いたい。できるだけ安く」
Wi-Fi 6EおよびWi-Fi 7で使用可能になった新しい周波数帯である6GHz帯は、まだ利用が少なく、住宅密集地などでも快適な通信が期待できる。Wi-Fiルーターを買い替えるなら、やっぱり6GHz帯を使いたい、と考えるなら、トライバンド対応の製品を選ぶ必要がある。
とはいえ、4ストリーム対応の製品はハイエンドモデルとなり高価なので、各周波数帯がいずれも2ストリームに対応した製品を選ぶことになる。予算感は2~4万円前後だ。
最初に紹介した10G回線向けのデュアルバンド4ストリームの製品と、ここで紹介するトライバンド2ストリームの製品では、10Gbps対応である点や2万円前後から購入できる点など共通点も多いが、トライバンドを選ぶ最大の差別化のポイントは、6GHz帯が使えることにある。利用者が少なく空いている上に、Wi-Fi 7対応のPCを接続するなら、6GHz帯で320MHz幅を利用した最大5764Mbpsの通信も可能だ。
TP-Link Archer BE550 Pro
実売:2万9800円
最大転送速度:5764+2882+1032Mbps
WAN:10Gbps×1(LAN使用可)
LAN:2.5Gbps×4(WAN使用可)
ASUS RT-BE92U
実売:3万9192円
最大転送速度:5764+2882+1032Mbps
WAN:10Gbps×1(LAN使用可)
LAN:2.5Gbps×4(WAN使用可)
コスパで言うならWN-7T94XRやWRC-BE94XSDが有利だ。WN-7T94XRは発売が2024年春なので新製品というわけではないが、10Gbps対応のトライバンドで2万円台前半はお買い得だ。
3万円以上の費用を出せるのであれば、Archer BE550 Proもスペック的には優秀だ(「Pro」が付かないArcher BE550もあるが、こちらは有線が2.5Gbps対応のみなので注意)。この製品と、価格は少々高いがRT-BE92Uに関しては、2.4GHz帯が3ストリームの1032Mbpsとなっているのが特徴となる。通常、2.4GHz帯が2ストリームでも困ることはないが、同一モデル2製品でメッシュを構成したときにバックホールで3ストリーム分の帯域を使えるなどのメリットがある。
2~3万円のなるべく新しい製品がおすすめ
以上、2025年11月時点でのおすすめのWi-Fiルーターを、ケース別に紹介した。
全体を通して、現状、おすすめしたいのは2~3万円のモデルだ。10Gbps回線での利用も想定して、デュアルバンド4ストリームの10Gbps対応モデル、もしくはトライバンド2ストリームの10Gbps対応モデルがおすすめとなる。
メッシュの場合、2台必要になるので、スペック的には少し妥協してデュアルバンド2ストリームのエントリークラスを選べば2~3万円の予算で収まるだろう。
なお、安くなった型落ちモデルや販売終了間際の製品を狙う手もあるが、個人的にはおすすめしない。Wi-Fiルーターのサポート期限は、メーカーにより異なるがだいたい販売終了から5年(NECプラットフォームズは3年)なので、サポート期限が早く訪れてしまい、結果的にお得感が低くなる。
前述したように、Wi-Fi 7対応の現行モデルでも、1万円台から購入できるので、なるべく新しい製品を選ぶことをおすすめする。
































