地図とデザイン

新しい地図表現、求む! “主題図”を広く募集するプロジェクト「Map Museum 2026」が始動。秀作に賞金50万円

私・片岡義明も審査員やります

 特定のテーマに沿って作成された地図を意味する“主題図”を募集するプロジェクト「Map Museum 2026」を開催することを、365y株式会社が11月21日に発表し、作品の募集を開始した。

 主題図とは、特定の地理的事象に関係する情報を表示し、色分けやグラフ、大小の円、ドットなど多彩な表現手法を使って強調した地図のこと。汎用的な“一般図”とは異なり、特定の情報を強調することで複雑な事象を理解しやすい。

 主題図の例としてよく知られるのが、1854年にイギリスの医師のジョン・スノウ氏がコレラの大発生時に作成したコレラ死亡者の分布図。ほかにも、人口分布図や地質図、土地利用図、土地条件図などさまざまな主題図がある。最近話題になったものとしては、クマの出没地点を地図上にプロットした“クマ出没マップ”も主題図の一種と言える。

ジョン・スノウによるコレラ死亡者の分布図(ジョン・スノー - Map of the book "On the Mode of Communication of Cholera" by John Snow, originally published in 1854 by C.F. Cheffins, Lith, Southhampton Buildings, London, England.The uploaded images is a digitally enhanced version found on the UCLA Department of Epidemiology website., パブリック・ドメイン,https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2278605による)
「地理院地図」で表示した土地条件図(数値地図25000・土地条件)

 Map Museumは、このような多種多様な主題図を募集し、表彰するプロジェクト。対象となるのは過去3年以内に制作または発表された主題図で、デジタル/アナログや使用するソリューションなど作品の形態は問わない。参加希望者は、応募する主題図の詳細を「note」の記事に書いて、「#MapMuseum」のタグを付けて発表したうえで、Map Museum公式サイトの応募フォームに記入して申し込むことでエントリーできる。

 応募作品の点数制限はなく、優秀作品には賞金が授与される。賞金は秀作には50万円、優作に30万円、佳作に10万円、note大スキ賞(応募者による紹介note記事で最も“スキ”が多かった作品)に10万円。募集期間は2026年3月31日までで、結果発表は地図・位置情報に関する企業・団体が出展する展示会「ジオ展2026」(2026年4月28日開催)のプレゼンテーションにて行われる。審査員は「ジオ展」の運営責任者であり、元・株式会社MIERUNE代表取締役会長の朝日孝輔氏、青山学院大学・地球社会共生学部の古橋大地教授、そして本連載の筆者である私・片岡義明(「GeoNews」代表)の3名。

 Map Museumを運営する365yの代表を務める小山文彦氏は、2016年にジオ展を初めて開催した創始者でもあり、Map Museumを開始した理由として以下のように語る。

 「ジオ展のフォーマットをアップデートするコンテンツとして以前から考えており、今年、第10回となる『ジオ展2025』が盛況に開催できたことで、次なるステップとして着手することにしました。ジオ展自体は、ブース展示とプレゼンテーションという強いコンテンツがあります。それらは法人・個人問わず誰でも参加できるようになっていますが、物理的にこれ以上、出展者を増やしにくい状況に成長しました。(これに対して、Map Museumは)より簡便に参加できる仕組みになるのではないかと期待しています。また、ジオ展の来場者に対して、新しい地図表現の取り組みを知ってもらい、毎年アップデートすることで、ジオ展への参加満足度や参加効果を高めていただきたいという願いがあります。」

 同様のイベントとしては、地理情報システム「ArcGIS」を提供するESRIの「マップギャラリー」などがあるが、Map Museumは特定のソリューションに限定されることなく、アナログ作品でもOKである点が特徴だ。アナログ作品について小山氏は「アナログ表現の場合はウェブサイトがないことも多いでしょうから、noteで紹介記事を書いていただくことでオンラインで広まり、関心のある方から問い合わせを受けることも容易になると考えています」と語る。

 さらに小山氏は読者へのメッセージとして、以下のように語った。

 「とにかくどなたでも気軽に登録していただきたいです。地図の国立国会図書館のような、あらゆる地図表現がここに集まり、現代的で素晴らしい地図表現を有識者の審査員に見出してもらい、たくさんの方に知っていただきたいです。それにより、地図表現がますます進歩していくことに寄与できたらと考えています。モダンな地図表現、斬新な地図表現を広く集めています。何も裏はありません。表彰は単なるインセンティブです。応募していただければ、こちらでウェブサイトに一覧としてまとめ、ジオ展ブースで閲覧しやすく紹介させていただきます。ぜひお気軽にご登録ください。」

 デジタル/アナログを問わず、作成手法や使用ツールも自由ということで、地図に関する専門知識やプログラムスキルが無くても気軽に参加できるこのプロジェクト、今までにないアイデアで勝負するか、デザインなどビジュアル面で勝負するかは参加者次第なので、地図が好きな人はぜひ注目していただきたい。審査員の1人として、素晴らしい作品をお待ちしています!

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INTERNET Watchでは、2006年10月スタートの長寿連載「趣味のインターネット地図ウォッチ」に加え、その派生シリーズとなる「地図と位置情報」および「地図とデザイン」という3つの地図専門連載を掲載中。ジオライターの片岡義明氏が、デジタル地図・位置情報関連の最新サービスや製品、測位技術の最新動向や位置情報技術の利活用事例、デジタル地図の図式や表現、グラフィックデザイン/UIデザインなどに関するトピックを逐次お届けしています。

片岡 義明

フリーランスライター。ITの中でも特に地図や位置情報に関することを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから測位システム、ナビゲーションデバイス、法人向け地図ソリューション、紙地図、オープンデータなど幅広い地図・位置情報関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報トラッキングでつくるIoTビジネス」「こんなにスゴイ!地図作りの現場」、共著書「位置情報ビッグデータ」「アイデアソンとハッカソンで未来をつくろう」が発売。