清水理史の「イニシャルB」

「フレッツ 光クロス」を自宅に導入して10Gbps化! あえて光コラボではなく回線とISPを別々に契約してみた
2025年4月7日 06:00
久しぶりに自宅のネット回線を変更した。Wi-Fiルーターなどの接続検証用として残していた1Gbpsのフレッツ 光ネクストを10Gbps対応のフレッツ 光クロスに変更した。現状は光コラボでの契約が主流だが、あえて回線とISPを別々に契約してみた。契約はスムーズだったが、速度は……。
光コラボではなく従来の分離型で契約
筆者宅では、これまで仕事やYouTube配信で使っているメイン回線としてauひかりと、テスト用のフレッツ 光ネクスト(ISP:ぷらら)の2回線を利用していた。
このうち、今回、変更したのが後者のフレッツ 光ネクストの回線だ。この回線は、主にWi-Fiルーターの動作チェック用として利用していたものとなる。一般家庭でまだ多く存在する1Gbpsのフレッツ 光ネクストで、かつPPPoE接続とIPv6 IPoEのIPv4 over IPv6(DS-Lite)を併用できるようにして、Wi-Fiルーターのインターネット接続自動判定などが正しく動作するかを検証するために利用していた。
しかしながら、昨今、10Gbps対応回線の利用者も増えてきたことから、フレッツ 光クロスの検証環境に移行することにした。
切り替えるにあたって悩んだのは、契約形態をどうするかだ。フレッツ光の契約形態は大きく2種類ある。
ひとつは、光コラボレーション(以下、光コラボ)での契約だ。光コラボは、ISPが、フレッツ光の回線とインターネット接続サービスをセットで提供する方式となる。光コラボの方が割引サービスも豊富で、契約の窓口も一本化されることから、現在の主流となりつつある。
もうひとつは、回線とISPを別々に契約する分離型だ。光回線となるフレッツ光をNTTと契約し、インターネット接続サービスをISPと契約する。従来はこの方式が主流だったが、もはや少数派だ。
NTT東西それぞれのエリアでフレッツ光向けの接続サービスを提供するISPは、以下のリンク先から見つけられる。フレッツ 光クロス対応というだけで対応ISPが減るが、さらに接続サービスのみを単独で提供するISPとなると、かなり数が少なくなる。
▼フレッツ光向けのISPのリスト
フレッツ 光クロスIPv6 IPoE対応プロバイダ(NTT東日本)
プロバイダーについて(NTT西日本)
筆者としては、検証でISPを変更するケースもあるため、柔軟にISPを変更できる分離型で契約したいのだが、この選択肢がかなり限られる。具体的には、ASAHIネット、BB.excite、インターリンクなどだ。
もちろん、素直に光コラボを選択するという手もあるのだが、今回は、事例の少ない分離型で契約してみることにした。
なお、光コラボの導入体験記に関しては、僚誌ケータイWatchに掲載された法林氏の記事を参照されたい。同じような状況で困るユーザーは多いはずなので、大変参考になるし、リアルな怒りの感情も伝わってくるため読み物としても面白い。
残っている「いにしえのサービス」に注意が必要
今回、筆者の手続きのフローは、以下のようになった。
- NTT東日本にフレッツ 光クロスへの変更申し込み(ウェブ)
- NTT東日本から工事日の連絡
- 既存のISPの解約手続き
- 工事(ONU、ルーターなどの機器設置)
- 既存ISPの解約完了待ち
- 新規ISPの契約(即日開通)
まず、回線の契約についてだが、これは非常にスムーズだった。光コラボと異なり、NTT東日本との直接のやり取りになるので、フレッツ 光ネクストで利用していたサービスのうち、何を継続して利用できて、何を廃止しなければならないのかが明確だった。
具体的に、筆者宅では以下のような継続、廃止の手続きとなった。
継続
- 光電話
- フレッツテレビ
廃止
- フレッツ・あずけ~る(オンラインストレージサービス)
- フレッツ・セッションプラス(セッションの追加)
筆者の対応をしてくれたNTT東日本の担当者がサービス内容について詳しく理解していたおかげで、何が変わるのかが明確だった。
機器構成が、従来のONU一体型ホームゲートウェイから、フレッツテレビを利用するための分岐用ONU(V-ONU)、10G対応のONU、ひかり電話を継続するためのルーター(XG-100NE)の複数台になることも事前に説明された。
また、フレッツ 光クロスへの移行にあたって解約しなければならないサービスとして、「フレッツ・あずけ~る」と「フレッツ・セッションプラス」が説明され、その場で解約となった。
フレッツ・セッションプラスに関しては、すっかり忘れていたのだが、ぷららの固定IPサービスを利用していた時にPPPoEセッションを複数同時利用するために利用していたことを思い出した。また、かつてぷららが4th MEDIAという映像配信サービスを提供していたのだが、このときにも利用していた。
先に紹介した法林氏のケースでは、セッション・プラスについて、光コラボ提供事業者側が理解していないことが契約の障壁となっていたが、さすがにNTT本家での契約では、こうしたトラブルはなかった。古くからフレッツを使っているユーザーほど、こうした「いにしえのサービス」が残っている可能性が高いので注意した方がいいだろう。
ちなみに、回線変更の申し込み後、担当者からの連絡があるまでは10日前後かかり、連絡から工事までは3日ほどだった。最初のコンタクトに時間がかかったものの工事の手配はスムーズだった。時期にもよるが、このあたりのスムーズさも回線とISPを分けたメリットがあったかもしれない。
なお、工事内容は機器の交換と近くの電柱での光回線の収容先変更で1時間前後の時間がかかった。工事費用はネット関連は無料だったが、フレッツテレビのV-ONU設置で3000円ほどかかった。
意外な落とし穴だった不通期間の調整
このように回線そのものの契約はスムーズだったのだが、課題となったのはISPの移行だ。
筆者のケースでは、旧フレッツ 光ネクストで利用していたぷららが、フレッツ 光クロス向けの接続サービスを提供していなかった(2024年3月で新規受付終了)ため、ISPを変更する必要があった。
アカウントを残しておく必要もなかったので、サービス全体を解約したのだが、この解約完了が「手続き月の月末」となっていたのを見逃していた。
今回の移行では、元のフレッツ 光ネクストもIPv6 IPoEを利用していたため、旧ISPとの契約が終了しないと(IPv6接続を解除してくれないと)、新しいISPと契約できない。
このため、契約月の20日前後には回線は開通していたものの、そこから新しいISPと契約できるまでに10日ほど待つことになってしまった。複数の事業者との契約と解約、工事までの期間などが複雑にからみあうので、不通期間を最小限にするための調整には慎重を期す必要があるだろう。
インターリンクの固定IPサービスを利用
今回、新たに契約したのはインターリンクのZOOT NATIVEの固定IPオプションありというプランだ。
前述したように単独で提供されているISPは現状少なく、探すのに苦労するほどだが、インターリンクはフレッツ 光クロス対応で、しかも固定IP(IPIP接続)を利用可能なサービスを提供している。
固定IPサービスというと、以前はサーバーを公開する人向けに提供されていたが、最近ではポート数の制限を回避するためにも利用される。IPv6 IPoE環境のIPv4接続では、DS-LiteやMAP-Eが利用されるが、DS-Liteであれば事業者側のキャリアグレードNATで、MAP-Eであれば利用者宅に設置されたルーターのNATで、利用できるポート数が1024や240などに制限される。
その一方で、前述したインターリンクのZOOT NATIVEの固定IPサービスは、IPIP接続によって固定でIPv4アドレスが割り当てられ、契約者が単独で全てのポートを利用できる。宅内に多くの機器が存在するケース、組織へのVPN接続で固定IPが必要なケース、さらにはゲームなどのオンライン対戦でのマッチングの問題を回避したいケースなどでメリットがある。今回は、このサービスを利用することにした。
インターリンクは、サービスの自動化やセルフサポートなど、効率化を追求したISPとなっており、ウェブサイトでの申し込みから、30分もあれば開通するスピーディさが特徴となる。前述したように、以前のISPの解約手続きにさえ注意すれば、最低限の不通時間で移行できるだろう。
回線速度はいつでも1Gbps前後
肝心の回線速度だが、これは期待していたほどではなかった。
Speedtest.netでの計測では、いつでも1Gbps程度となっている(もちろん、回線から端末まで有線10Gbps接続時)。
うっかり、以前のフレッツ 光ネクスト時代の速度を計測しておくことを忘れてしまったので、正確な値ではないが、以前のフレッツ 光ネクストで、しかもPPPoE接続の場合は、200~300Mbps、夜間などのピーク時間帯は十数Mbps程度にまで落ち込むこともあったので、それに比べれば高速で、実用性も十分と言える。
面白いのは、時間帯や曜日にあまり左右されない点だ。まれに500Mbps前後になることもあるが、ピーク時間帯の平日21時前後でも、だいたい1Gbps前後で通信できる。かといって空いているはずの時間帯でも速くなることはなく、早朝5時台などでも、やはり1Gbps前後となる。
併用しているauひかりは、混雑時と空いているときで、2~5Gbps前後で計測値に開きがあるが、筆者宅のフレッツ 光クロスは、そういう傾向も見られず、常に1Gbps前後となっている。
1Gbps前後でも実用性は問題ないので、そのまま利用しようと思っていたのだが、せっかく10Gbpsの回線を使っているのだから、空いている時間帯くらいは、せめて4~5Gbps前後の速度を見てみたい。
そこで、ウェブ経由でNTTのサポートに問い合わせてみたところ、センター側から通信が問題なくできていることを確認してもらったうえで、初期不良の切り分けのためにONUとルーターが交換という対応になった。
この対応もスムーズで好印象だったが、結果、ONUとルーターを交換しても、速度は変わらず1Gbps前後だった。
時間帯による上下の幅が狭い点は気になるが、近隣での利用者が多いなどの影響で速度があまり上がらないのではないかと考えられる。ISPの変更(というかVNEの変更)も検討する余地はあるが、1Gbpsでも安定しているので、当面はそのまま利用してみることにする。
接続サービスのみの提供が減ったのは悲しい
以上、筆者宅の回線をフレッツ 光クロスに変更した経緯を紹介した。誰にでもおすすめするわけではないが、工事やNTT側のサービス停止などが必要になる場合、光コラボで手続きするよりも、NTTとISPに個別で手続きをした方が何かとスムーズな印象だ。
特に、フレッツ・セッションプラスの話は、一部界隈では「あるある」の地雷になっているので、光コラボで申し込む場合は、自分で事前に解約するなどの手続きをしておくことをおすすめする。
それにしても、フレッツ接続サービスのみを提供するISPが減ってしまったことは残念だ。筆者としては、ISPを変更できるメリットもあると思っているのだが、もうそういう時代ではないのかもしれない。