清水理史の「イニシャルB」

10Gbps対応スイッチングハブを買おう! XikeStorのL2アンマネスイッチ「SKS1200-8XGT」を試す

XikeStoreの3万円前後の10Gbps対応8ポートスイッチ

 購入しやすい価格帯の10Gbps対応スイッチングハブ(以下、スイッチ)が増えてきた。小規模メーカーが製造する独自ブランド製品だが、Amazon.co.jpで8ポートでも3万円前後で購入できる製品が複数確認できる。今回は、その中から、ネット上での評価が悪くないXikeStor(シーカスター)の「SKS1200-8XGT」を購入してみた。

NASやPCを10Gbpsでつなぎたい人に

 10Gbps対応インターネット接続サービスや10Gbps対応NASが増えてきたことで、10Gbps対応のネットワーク機器に注目が集まっている。

 2.5Gbpsもまだなのに、もう10Gbpsか! と思う人も少なくないかもしれないが、もちろん、まだ誰もが手軽に買えるほにはなっていない。安くなったとは言っても、Thunderbolt接続の10Gbpsアダプターで1万5千円前後、8ポート対応のスイッチで3万円前後なので、それなりに負担は大きい。

 しかしながら、10Gbps対応ネットワーク機器の状況は変わりつつある。数年前は、基本的に法人向け製品のみで選択肢が少なく、価格も高かったが、近年は、中国の新興ベンダーによって低価格なチップを採用した製品が数多く登場しつつある。

Amazon.co.jpでは新興ネットワーク機器ベンダーの存在感が高まっている

 信頼性という点で「パス」と即断する人も多いが、実際の価格差を目の前にすると、検討すらしないというのは、それはそれでもったいない。

 例えば、10Gbps対応のスイッチは、数年前は低価格モデルであってもポート単価で1万円前後(8ポートで8万円、4ポートで4万円前後)であった。しかし、現在の格安スイッチは、ポート単価3700~4000円前後、つまり8ポートモデルで3万円前後と、かなり買いやすい状況になってきている。

 もちろん、10Gbpsスイッチだけ買っても意味はないのだが、家庭内に10Gbpsに対応した機器が導入されるケースも珍しくなくなってきた。クラウドファンディングで話題となったUGREENのNASyncシリーズの4ベイ以上のモデルなどがいい例だ。

 「よし、家庭内LANを10Gbps化するぞ!」という全体的な計画ではなく、たまたま購入した機器が10Gbpsに対応していることで、 「せっかく購入したのだから、高性能な10Gbps対応機器の性能をフルに発揮させたい!」という理由で、ネットワーク全体の10Gbps化を検討している人も少なくないことだろう。

UGEENのNASの例のように、思いがけず10Gbps対応機器を導入することになり、せっかくなのでネットワーク環境を整えて10Gbpsで使ってみたいという人が増えている

製品をリスト化するのに一苦労

 というわけで、2025年3月3日現在、Amazon.co.jpにて購入できる10Gbps対応スイッチのリストを作成してみた。メーカーのウェブサイトの情報をそのまま記載しておきたかったので、ところどころ単位が異なっている点はご容赦いただきたい(サイズなどは、誤記載と思われる表記も見られたがそのまま記載している)。

10Gbps対応スイッチの一覧(編集部注:クリックで拡大してご覧ください。製品情報ページへのリンクを記事末尾の「関連リンク」に記載していますが、FOXNEOのFNS-3200Xは公式サイトがなく、XikeStorの「SKS8300-8T」「SKS8300-8X」は公式サイトに情報がないため、リンクがありません)

 思った以上に数が多かったのでわかりにくいかもしれないが、注目してほしいのは、「RJ45対応ポートを8ポート搭載」した「L2」の「アンマネ」のスイッチだ。

 「RJ45」は、一般的なLANケーブルで採用されているコネクタの形状のことで、家庭で使っているLANケーブルをそのままつなげられる機種になる(SFP+は基本的に光ファイバー接続用)。「L2」(レイヤー2)は、データを転送する層を表したもので、ポートに接続された機器のMACアドレスを記憶して、それを宛先としてデータを転送する方式となる(L3がルーター機能)。「アンマネ」(アンマネージド)は管理機能を持たないという意味で、設定画面を持たず、ネットワークを論理的に分割する機能などを利用できないシンプルな製品という意味になる。

 要するに、「RJ45」「L2」「アンマネ」は「汎用的でシンプルなスイッチングハブ」であることを表しており、ホームネットワークに十分な製品と考えていい。

 具体的には、上記の表のうち黄色でマークしているTP-Linkの「DS1008X」、XikeStorの「SKS1200-8XGT」、FOXNEOの「FNS-3200X」、keepLiNKの「‎10G Network Switch」などがある。TP-Linkの「DS1008X」のみ価格的に若干高く3万9001円となっているが(価格的には5ポートのDS105Xがおすすめ)、そのほかは約3万円となっており、クーポンや割引でさらに安くなる場合もあってリーズナブルだ。

 TP-LinkのDS1008Xは搭載チップの仕様が公表されていないため断言できないが、ほかの3製品は、スペックを見ても基本的な仕様は同じ(Realtekチップ採用製品)と考えられ、正直、デザインと価格で選んでも大きな差はないだろう。

 XikeStor、FOXNEO、keepLiNKのいずれも中国の新興企業で、初心者向けのサポートなどに期待できないため、万人におすすめするものではないが、この価格で10Gbps対応の8ポートスイッチが手に入るのは魅力的だ。

FOXNEOの10Gbps対応8ポートスイッチ。基本的な仕様は同じ

XikeStore「SKS1200-8XGT」を購入

 というわけで、上記の中から、今回はSeekerが販売しているXikeStorブランドの「SKS1200-8XGT」を購入した。

 まずは、外観だが、サイズは320×207×44mmで、家庭に設置することを考えると少々大きい。イメージとしては、本製品の方が若干大きいが、A4コピー用紙の束(297×210mm。500枚で厚さ4cm程度)を考えてもらうとわかりやすい。

 前述したFOXNEOやkeepLiNK製品でも同程度のサイズだが、8ポート対応だと、それなりの場所を確保しておく必要がありそうだ。

正面
側面
背面

 デザインはスイッチなので、基本的には四角い箱でしかないが、漢字っぽいデザインのロゴもあって、いかにも中国メーカーらしい独特の雰囲気だ。この点は好き嫌いが明確に分かれそうなので、前述した別ベンダーの製品を選ぶポイントにもなるだろう。

 ポートは8ポートで、全てRJ45対応となっている。カテゴリー6A(55mまでならカテゴリー6でもOK)であれば、一般的なLANケーブルを使って配線が可能なので、家庭での利用に適している。せめて1ポートくらいはSFP+が欲しかったが、低価格なこともあって、このあたりは割り切った設計になっている印象だ。

 LEDは、各ポートに搭載されており、2.5/5/10Gbpsでリンクしている場合は左上がグリーンに点滅し、100/1000Mbpsの場合は右上がオレンジに点滅するという、非常にざっくりとした表示になっている。

 個人的には、家庭用に設置する可能性のある製品は、全てLEDをオフにできるようにしてほしいのだが(本体に表示オン/オフの切替ボタンを付けるなどして)、コストを考えると、これも贅沢な要望だろう。

 このほかインターフェース類は、通電時にポート右側のPWRランプが点灯する程度で、余計なLEDやボタンなどは存在しない。前述したように、アンマネスイッチなので、LANケーブルをつなぐだけ、という非常にシンプルな構成だ。

性能や安定性は問題ない

 安定性は、筆者宅で使っている限りは問題なさそうだ。まだ稼働させて1週間ほどだが、10Gbpsや5GbpsのPCを接続して、普段の仕事や動画視聴などに使っているが、今のところ問題はない。

 念のため、2台のPCを接続してiPerf3による速度を計測してみたが、上りで9.48Gbps、下りで9.27Gbpsの速度を確認できたので、速度的にも問題なさそうだ。ただし、スイッチの場合、接続台数が増え、かつ常時大量の通信が発生するようなケースでないと、パフォーマンスに影響は出ないので、参考程度に考えておいてほしい。

パフォーマンスも問題ない

 欠点は、動作音だろう。本製品に限らず、10Gbps対応、RJ45接続、8ポートクラスのスイッチは、ほぼファンが搭載されている。このファンが、低音ながら、常時、「フォー」と風を送っている音が聞こえてくる。

 今回は検証目的で購入したので、ケースも開けて確認してみたが、サイズは小さいものの厚みのあるファンが側面に取り付けられていることが確認できた。

内部の様子。残念ながらヒートシンクは取れなかった……
ファンが搭載されている

 オフィスなどであれば周囲の音に紛れて気にならないが、家庭に設置する場合は、この音が結構気になる。なので、音が気になる人には、おすすめしない。どの程度気になるかの感覚は個人差もあるが、筆者が他のスイッチやルーター、NASなどが常時動作する部屋で使っていて、そこそこ気になる印象だ。

 10Gbps対応スイッチ、特にRJ45ポート対応の8ポート以上の製品は、発熱が大きくなりがちなので仕方がないが、他のモデルの口コミを見ても、「ファンの音」を指摘する声は多い。

 また、TP-Linkの「DS1008X」の製品情報サイトには、ファン交換に対する注意事項が記載されている。ファンの音が大きいのは事実だが、10Gbps対応スイッチの場合、冷却性能が安定動作に大きな影響を与える点にも十分留意する必要があるだろう。

 なお、同じTP-Linkの製品でも、5ポート版のDS105X(TL-SX105も同等機種)はファンレス設計となっている。本体で放熱するため、設置場所に注意する必要があるが、実売価格も3万3256円と若干安いので、ファンの音が気になるという人は、こちらを検討すべきだ。

 現状、ファンがあれば「うるさい」と言われるし、ファンレスにすれば「熱い」と言われるので、メーカーとしても対応が難しい状況だが、現状は、ユーザー自身の判断で、音か熱か、我慢できない方を避けるしかないだろう。

割り切ればお買い得

 以上、今回は、Amazon.co.jpで存在感が高まっている格安の10Gbps対応スイッチを試してみた。

 価格も安く、動作も問題ないため、10Gbps環境への移行を検討している場合は、選択肢として考えてもいい製品と言える。今回は、XikeStorの製品を選択したが、他の製品を選んでも大きな違いはないだろう。

 課題は、ファンの動作音とサポート体制なので、このあたりを割り切れるかどうかが購入の決め手となりそうだ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。「できるWindows 11」ほか多数の著書がある。YouTube「清水理史の『イニシャルB』チャンネル」で動画も配信中