清水理史の「イニシャルB」

NTT東日本「ギガスマートWi-Fi」、新しいレンタルメッシュルーターの実力を1~3台構成で試す
2025年10月27日 06:00
NTT東日本の「ギガスマートWi-Fi」が、2025年8月5日から提供されている。Wi-Fi 6対応のWi-Fiルーターをレンタルで提供するサービスだが、メッシュに対応しており、複数台での利用もできる点が特徴だ。実機を借りることができたので、実際の環境で検証してみた。
月額880円でメッシュ環境に
NTT東日本のギガスマートWi-Fiは、メッシュ環境を手軽に構築できるサービスだ。
これまでも、フレッツ 光クロス向けに月額550円でWi-Fi 6対応ルーターが提供されていたり、ひかり電話対応機器向けに月額330円で無線LANカードが提供されていたりしたが、今回のギガスマートWi-Fiは「メッシュ」対応の機器が提供されるのが最大のポイントとなる。
価格は1台月額495円で、2台セットの場合で月額880円となっており、3~4台目は1台ごとに月額385円で追加可能になっている。
仮に2台セットを2年使ったとすると880円×24カ月で2万1120円となる。現状、市販のメッシュルーターは、Wi-Fi 6でもWi-Fi 7でも、エントリークラスが2台2万円前後で販売されている。そう考えると、2台で月額880円のレンタル料は、妥当な設定と言えそうだ。
なお、自分で設置することも可能だが、NTT東日本での訪問設置サービスも利用可能になっており、フレッツ光の工事と同時の場合で初期費用として2750円、回線工事とは別に依頼する場合は1万1000円で設置・設定を依頼できる。
市販のルーターも訪問設置サービスを利用できるケースはあるが、本製品の場合、回線と一緒に済ませられるうえ、費用を抑えられるのがメリットとなる。
思ったよりスペックは低くない
スペックは、Wi-Fi 6ことIEEE 802.11axに対応しており、速度は5GHz帯が最大4804Mbps(4ストリーム)、2.4GHz帯が573Mbps(2ストリーム)のデュアルバンド構成となっている。
レンタルルーターなので、てっきりスペックは控えめで、5GHzも2ストリーム2402Mbpsなのかと思っていたが、4ストリーム対応とミドルレンジクラスの実力を備えていたのが意外だった。5GHz帯は、メッシュ構成時のバックホール(親機と子機の間の無線通信)にも使う可能性が高いので、4ストリーム対応であることで、中継のロスを少なくできることが期待できそうだ。
| 項目 | 内容 |
| 価格 | 月額495円(2台で880円) |
| CPU | - |
| メモリ | - |
| 無線LANチップ | - |
| 対応規格 | IEEE 802.11ax/ac/n/a/g/b |
| バンド数 | 2 |
| 320MHz対応 | - |
| 最大速度(2.4GHz) | 573Mbps |
| 最大速度(5GHz-1) | 4804Mbps |
| 最大速度(5GHz-2) | - |
| 最大速度(6GHz) | - |
| チャネル(2.4GHz) | 1-13ch |
| チャネル(5GHz-1) | W52/W53/W56 |
| チャネル(5GHz-2) | - |
| チャネル(6GHz) | - |
| ストリーム数(2.4GHz) | 2 |
| ストリーム数(5GHz-1) | 4 |
| ストリーム数(5GHz-2) | - |
| ストリーム数(6GHz) | - |
| アンテナ | 内蔵 |
| WPA3 | 〇 |
| メッシュ | 〇(EasyMesh) |
| IPv6 | 〇 |
| IPv6 over IPv4(DS-Lite) | 〇 |
| IPv6 over IPv4(MAP-E) | 〇 |
| 有線(LAN) | 1Gbps×1 |
| 有線(WAN) | 1Gbps×1 |
| 有線(LAG) | - |
| 引っ越し機能 | - |
| 高度なセキュリティ | - |
| USB | - |
| USBディスク共有 | - |
| VPNサーバー | - |
| DDNS | - |
| リモート管理機能 | - |
| 再起動スケジュール | - |
| 動作モード | ルーター/ブリッジ |
| ファーム自動更新 | 〇 |
| LEDコントロール | - |
| ゲーミング機能 | - |
| サイズ(mm) | 130×130×58 |
有線は2ポートで、どちらも最大速度は1Gbpsとなっている。このため、一応、1Gbpsの「フレッツ 光ネクスト」でも10Gbpsの「フレッツ 光クロス」でも利用可能だが、メインのターゲットは1Gbps環境になる。メッシュの場合、最大速度を追求するというよりは、通信エリアの拡大と安定性の向上が主な目的になるので、有線が1Gbpsでも実用上は問題ないだろう。
ちなみに、箱や底面のラベルには、「KAON BROADBAND CO.,LTD」と記載されており、KAON製の製品であることがうかがえる。あまりなじみのないメーカーだが、調べてみると、国内の他の通信事業者でも採用例もあり、事業者向けの製品としては実績があるようだ。
本体は130×130×58mmとコンパクトで設置場所を選ばないうえ、デザインもシンプルな印象だ。
そういえば、NTTグループは、2025年7月から新しいコーポレートロゴに変更になったが、今回試用した製品全面のロゴは変更前のロゴとなっていた(設定画面内は新ロゴ)。最近はロゴやLEDも控えめな製品が多くなっているので、その影響もあるが、この旧ロゴや、文字付きで数も多いLEDを見ると、どことなくレトロな印象を受けてしまう。
1台目は簡単にセットアップできる
設定については、最初からメッシュで使うことが想定された市販製品のように、専用のアプリが提供されるわけではない。どちらかというと、Wi-Fiルーターとして販売されている市販製品をメッシュモードに切り替えて使う方法に近い。
とりあえず1台目の設定は非常に簡単だ。試しに、筆者宅の環境(フレッツ 光クロス、ASAHIネット)で接続してみたが、回線に接続して電源を入れるだけで、自動的に回線が自動的に判別され、利用可能になった。
基本的には「つなぐだけ」でOKとなっており、設定らしい設定は必要ない。無線で接続するためのパスワードも、設定画面にアクセスするための管理者パスワードも標準で複雑な文字列が設定済みとなっているため、特に設定は必要ない。
ただし、環境によっては設定変更も必要になる。同梱されているセットアップガイドにも記載されているが、上位にホームゲートウェイ(IPv4接続有効な場合)やルーターが存在する場合は、ブリッジモードでの利用が推奨されている。
この設定は、設定画面([ネットワーク]-[モード])にあるので、PCからブラウザーで設定画面にアクセスし、変更する必要がある。
メッシュ利用時はモード切り替えが必要
また、メッシュで使う場合も、同様に設定の変更が必要になる。2台セットで提供されるとはいえ、メッシュで構成済みになっているわけではないうえ、標準設定は1台目(コントローラー)として構成されており、2台目以降(エージェント)として使う場合はモードの切り替えが必要になる。
前述した方法と同じ操作でモードを「ブリッジ」に変更し、さらにメッシュ設定を「エージェント」に切り替える必要がある。
市販のメッシュ対応ルーターでもこうしたモード切り替えが必要な製品は存在するが、背面の切り替えスイッチで対応できるケースがある。本製品は、設定画面にアクセスしてモードを切り替える必要があるので、この点は難易度が高いと言える。
モードさえ切り替えてしまえば、あとはEasyMeshで設定できる。WPSによるボタン設定、または有線LANケーブルで1台目と2台目を直結(黄色のLAN2ポート同士)することで自動設定され、WPSボタンを1台目、2台目と各1秒ずつ押すだけなので簡単だ。
市販のメッシュ製品にはアプリで自動的に検出して設定されるものもあるが、そうではないうえ、事前にモード切り替えが必要なので、メッシュ設定が初めてだと、苦労するかもしれない。心配な場合は、前述した訪問設置サービスを依頼することをおすすめする。1台目の設置だけでなく、メッシュの設定まで代行してくれるとのことだ。
複数台で検証
それでは、実力を検証していこう。今回は、3台借りることができたので、1台のみ、2台、3台のケースでiPerf3による速度を検証してみた。環境は、いつも通り、木造3階建ての筆者宅となる。1台の場合は1階のみ、2台の場合は1階と3階、3台の場合は1階、2階、3階の各フロアに設置して検証した。
なお、本製品は出荷時状態で、2.4GHz帯と5GHz帯のSSIDが個別に設定されているため、今回は全て5GHz帯で計測した。また、5GHz帯の無線設定が、標準で80MHz幅までの設定となっている。おそらく長距離での利用を想定して、あえて80MHzが選択されていると思われるが、これだと近距離の最大速度が1201Mbpsになってしまうので、160MHz幅まで可能な設定に変更して計測している。
結果は、下表およびグラフの通りだ。有線が1Gbpsなので、最大速度は1階の900Mbpsオーバーとほぼ有線上限の速度を実現できた。1台でも速度的には十分というか、むしろ高速な印象で、2階や3階入口で600~700Mbpsと優秀な結果が得られた。
| 1F | 2F | 3F入口 | 3F窓際 | ||
| 1台 | 上り | 914 | 446 | 324 | 167 |
| 下り | 902 | 783 | 638 | 225 | |
| 2台 | 上り | 933 | 273 | 303 | 225 |
| 下り | 900 | 395 | 379 | 358 | |
| 3台 | 上り | 924 | 314 | 275 | 238 |
| 下り | 944 | 400 | 386 | 381 |
※単位:Mbps
※サーバー:Core i3-10100/RAM32GB/1TB NVMeSSD/Intel X540-AT2/Windows11 24H2
※クライアント:Core Ultra 5 226V/RAM16GB/512GB NVMeSSD/Intel BE201D2W/Windows11 24H2
2台構成では、1階に1台目、3階階段付近に2台目を設置した。この場合、最も遠い3階窓際が下り225Mbps→下り358Mbpsに向上した。メッシュの恩恵で電波が届きやすくなったことがわかる。ただし、2階や3階入口でも300Mbps前後となり、1台構成よりも速度が低下している。
これはデュアルバンドメッシュでよくみられる現象で、2階での計測時に1階の親機(コントローラー)ではなく、3階の子機(エージェント)につながってしまっている状況だ。1台構成では2階から1階の親機に直結できていたが、メッシュ構成では中継のロスによって速度が低下してしまう。
3台構成のテストでは、1階、2階、3階のそれぞれに本機を設置した。結果としては今回の間取りでは過剰な印象で、2台構成の場合と結果はほとんど変わらない。分厚い鉄筋コンクリートのマンションなどであれば3台構成も有効に思えるが、日本の戸建てなら2台で十分という印象だ。
信頼のNTTブランド
以上、NTT東日本の「ギガスマートWi-Fi」を試した。全体としてお得感はあるが、メッシュの設定は、もうひと工夫欲しい。
ハードウェア的には不満はない。一世代前のWi-Fi 6対応となるが、4ストリーム対応となるうえ、ベンチの結果も不満のない速度となっている。費用的にも無理なく使えると言え、メッシュでなく単体で使うのであれば設定で引っかかる要素もなく、不満点はない印象だ。
ただし、やはりメッシュの設定の面倒さは気になった。最初にエージェントとして設定する操作をしていないと、WPSなど他の部分をいくら試行錯誤してもメッシュを構成できないことになる。慎重にマニュアルを読む人か、多少トラブルシュートの経験がある人でないと、気付かず苦労するかもしれない。
回線と一緒なら低価格で訪問設置を依頼できるので、これを利用するのが最適と言えそうだ。最終的にはNTTの手厚いサポートを受けられるという安心感が大きいので、費用がある程度かかっても「おまかせ」で使える状態にしたい人向けという印象だ。






