清水理史の「イニシャルB」

ディスプレイなしでも大丈夫! マウスコンピューターの小型サーバー「MousePro RV-X3S01」にBMC経由でProxmox VEをインストール
2025年10月20日 06:00
マウスコンピューターの「MousePro RV-X3S01」は、中小企業向けのサーバー市場で存在感を高めている小型サーバーだ。NASよりも幅広い用途に使える製品となっており、管理機能なども充実しているのが特徴だ。一般的にはWindows Serverで使われるケースが多いが、今回はProxmox VEを使った仮想環境としてセットアップしてみた。
汎用サーバーの使いやすさを再確認
久しぶりに、汎用サーバーを使ってみたが、やっぱり自由度が高いっていいなぁ、と実感した。
昨今は、小規模な環境だけでなく、個人でもNASが使われたり、いわゆるミニPCをサーバーとして使ったりすることも可能になったため、汎用のサーバーを無理して買わなくてもいいのではないか? と思っていた。しかし、あらためて実機を使ってみると、コンパクトだし、管理機能は充実しているし、基本スペックは高いしと、「あれ? これ、個人でも結構実用的なのでは?」と感心した。
マウスコンピューターから販売されている「MousePro RV-X3S01」は、中小企業のフロアに設置されることを想定した小型のサーバーだ。サイズが210×283×240mm(幅×奥行き×高さ)と、あまり設置面積を要求しないコンパクトなサイズのおかげで、さまざまな場所に設置できる製品になっている。
それでいて、CPUはXeon E2314で、メモリは8GB、HDDも標準で1TB×2が搭載済みと、スペックは充実している。ネットワークこそ1Gbps×2と控えめだが、Xeonが搭載されていることを考えると、4ベイクラスのNASと比べると処理性能が高い(詳細なスペックや価格、納期は以下のリンク先を参照)。
▼マウスコンピューター オンラインショップのページ
MousePro RV-X3S01(マウスコンピューター)
今回は、Windows Server 2025 Essentials搭載モデル(500GB SSD搭載済みで30万9980円)を利用したが、メモリ8GBのOSなしモデルなら14万2780円と、比較的手に入れやすい価格になっている。
これなら、仮想マシン環境としていろいろなサーバーを動かすのに使った方がよさそうなので、今回は無料の仮想マシンプラットフォーム「Proxmox VE」をインストールして使ってみることにした。
映像出力がD-subだけ! でも問題なし
とりあえずProxmox VEをインストールしようと、キーボードやディスプレイをつなごうとしたのだが、ここで思わぬ障壁があった。
本製品の背面にはディスプレイ接続用ポートとして「D-sub」しか搭載されていない。困ったことに、手元にD-sub接続のディスプレイも、変換アダプターもなかったため、画面が表示できないことに気づいたわけだ。
しかし、すぐに、そもそもローカルでインストールしようとしていたことが間違いだったと気づいた。
本製品には、BMC(ベースボードマネジメントコンソール)として、ASUSの「ASMB11-iKVM」が標準で搭載されている。背面のLANポートのうち、左側のUSBの上にあるLANポートがBMC用になっているので、これを利用してネットワーク経由でOSをインストールすればいいわけだ。
ということで、BMC用ポートをLANに接続し、ネットワーク上のPCから、ブラウザーを使ってこのポートのIPアドレス(ルーターやDHCPサーバーで確認)にアクセスし、管理用コンソールを表示することができた。
BMCでは、ダッシュボードでサーバーの状態を確認したり、センサーで電力や温度を確認したり、システムインベントリで装着されているメモリやストレージを確認したりできるツールで、もちろんリモートから電源をオン/オフしたり、ディスプレイ出力を取得してリモートコントロールしたりすることが可能になっている。
つまり、このリモートコントロール機能を利用すれば、サーバー本体にキーボードやディスプレイなどを接続しなくても、ネットワーク経由でOSをインストールできるわけだ。
Proxmox VEのISOイメージでブートする
ということで、BMCの「Remote Control」から「H5Viewer」を選択して、サーバーのコンソールを表示し、右上の「CD Image」の「Browse」ボタンからProxmox VE 9.0.1のISOイメージを登録した。
その後、一旦BMCに戻って、「Power Control」からサーバーの電源をオンにした。なお、標準ではネットワークブートが優先されるので、待ち時間が結構かかる。できればBMCの「BIOS」画面でブート順を変更しておくといいだろう。
これでH5Viewerの画面に戻ると、マウントしたイメージから起動し、Proxmox VEのインストールが可能になる。
ここでは詳細なインストール方法は省くが、ポイントのみ紹介すると、以下のような流れとなる。
以上でインストールは完了だ。その後、「https://192.168.50.175:8006/」のように管理画面のアドレスが表示されるので、ブラウザーでそこにアクセスすれば、Proxmox VEを利用できる。
このBMCを使ったインストールは非常に楽だ。ネットワーク経由でISOイメージを利用するため、若干、インストールに時間がかかる印象があるが、BMCポートにケーブルを接続しておけば、サーバー本体がどこにあろうとインストール作業ができる。
家庭でも目立たない場所にサーバーを設置しておいて、手元のPCから簡単にインストールや管理ができるだろう。
Proxmox VEで利用する場合の注意点
このように手軽に仮想マシンプラットフォームとして構成できるMousePro RV-X3S01だが、Proxmox VEで利用する際は2つのポイントに注意する必要がある。
1点目はRAIDの構成だ。本製品は、IntelのVROCを利用して2台のHDDがRAID 1で構成済みとなっている。VROCは、CPUの機能でRAIDを構成するが、このRAIDはProxmox VEでは認識できない。
通常のシングルドライブとして認識されるので、BIOS側であらかじめRAIDを解除しておく必要がある。HDDの冗長性を確保したい場合は、Proxmox VEでZFSを使うことを検討するといいだろう。
2点目はネットワークだ。もちろん、MousePro RV-X3S01に搭載されている1Gbpsのネットワーク(Intel i210AT)は2ポートともProxmox VEで問題なく認識できるのだが、10Gbpsなどにアップグレードしたい場合は注意が必要だ。
試しに、流行りのRTL8127を採用した10Gbpsのカードを装着してみたが、これは利用できなかった。RTL8127搭載カードは、Linuxカーネル6.16以上が前提となるため、現状のProxmox VE 9.0.1(カーネル6.14)では認識されない。
せっかくなので、10Gbps化したかったのだが、あいにく他に使えるカードが手元になかったので、今回はあきらめることにした。新たに10Gbps対応カードを購入する際は、事前にネット上でProxmox VEでの対応状況を確認することをおすすめする。
BMCの使い勝手がいい
以上、マウスコンピューターの小型サーバー「MousePro RV-X3S01」にProxmox VEをインストールしてみた。
OSなしモデルは安く買えるので、Proxmox VEと組み合わせると、自宅用に結構パワフルな仮想マシンプラットフォームを構築できる印象だ。NASとしてはもちろんのこと、さまざまなサーバーやテスト用のWindowsなどを動かして、いろいろ遊ぶことができる。
何より、標準で利用できるBMCの使い勝手がいい。企業向けと思われがちだが、サーバーが目立たない場所に置かれるケースもある家庭でもかなり重宝する。
ハードウェア、ソフトウェアともに柔軟性や自由度を求める人にとっては、NASよりも使い勝手のいい選択となりそうだ。