清水理史の「イニシャルB」

ディスプレイなしでも大丈夫! マウスコンピューターの小型サーバー「MousePro RV-X3S01」にBMC経由でProxmox VEをインストール

マウスコンピューターのコンパクトなサーバー「MousePro RV-X3S01」

 マウスコンピューターの「MousePro RV-X3S01」は、中小企業向けのサーバー市場で存在感を高めている小型サーバーだ。NASよりも幅広い用途に使える製品となっており、管理機能なども充実しているのが特徴だ。一般的にはWindows Serverで使われるケースが多いが、今回はProxmox VEを使った仮想環境としてセットアップしてみた。

汎用サーバーの使いやすさを再確認

 久しぶりに、汎用サーバーを使ってみたが、やっぱり自由度が高いっていいなぁ、と実感した。

 昨今は、小規模な環境だけでなく、個人でもNASが使われたり、いわゆるミニPCをサーバーとして使ったりすることも可能になったため、汎用のサーバーを無理して買わなくてもいいのではないか? と思っていた。しかし、あらためて実機を使ってみると、コンパクトだし、管理機能は充実しているし、基本スペックは高いしと、「あれ? これ、個人でも結構実用的なのでは?」と感心した。

 マウスコンピューターから販売されている「MousePro RV-X3S01」は、中小企業のフロアに設置されることを想定した小型のサーバーだ。サイズが210×283×240mm(幅×奥行き×高さ)と、あまり設置面積を要求しないコンパクトなサイズのおかげで、さまざまな場所に設置できる製品になっている。

正面
側面
背面

 それでいて、CPUはXeon E2314で、メモリは8GB、HDDも標準で1TB×2が搭載済みと、スペックは充実している。ネットワークこそ1Gbps×2と控えめだが、Xeonが搭載されていることを考えると、4ベイクラスのNASと比べると処理性能が高い(詳細なスペックや価格、納期は以下のリンク先を参照)。

▼マウスコンピューター オンラインショップのページ
MousePro RV-X3S01(マウスコンピューター)

MousePro RV-X3S01のページ

 今回は、Windows Server 2025 Essentials搭載モデル(500GB SSD搭載済みで30万9980円)を利用したが、メモリ8GBのOSなしモデルなら14万2780円と、比較的手に入れやすい価格になっている。

 これなら、仮想マシン環境としていろいろなサーバーを動かすのに使った方がよさそうなので、今回は無料の仮想マシンプラットフォーム「Proxmox VE」をインストールして使ってみることにした。

映像出力がD-subだけ! でも問題なし

 とりあえずProxmox VEをインストールしようと、キーボードやディスプレイをつなごうとしたのだが、ここで思わぬ障壁があった。

 本製品の背面にはディスプレイ接続用ポートとして「D-sub」しか搭載されていない。困ったことに、手元にD-sub接続のディスプレイも、変換アダプターもなかったため、画面が表示できないことに気づいたわけだ。

 しかし、すぐに、そもそもローカルでインストールしようとしていたことが間違いだったと気づいた。

 本製品には、BMC(ベースボードマネジメントコンソール)として、ASUSの「ASMB11-iKVM」が標準で搭載されている。背面のLANポートのうち、左側のUSBの上にあるLANポートがBMC用になっているので、これを利用してネットワーク経由でOSをインストールすればいいわけだ。

BMCによってリモートからブラウザーでサーバーを管理できる

 ということで、BMC用ポートをLANに接続し、ネットワーク上のPCから、ブラウザーを使ってこのポートのIPアドレス(ルーターやDHCPサーバーで確認)にアクセスし、管理用コンソールを表示することができた。

 BMCでは、ダッシュボードでサーバーの状態を確認したり、センサーで電力や温度を確認したり、システムインベントリで装着されているメモリやストレージを確認したりできるツールで、もちろんリモートから電源をオン/オフしたり、ディスプレイ出力を取得してリモートコントロールしたりすることが可能になっている。

 つまり、このリモートコントロール機能を利用すれば、サーバー本体にキーボードやディスプレイなどを接続しなくても、ネットワーク経由でOSをインストールできるわけだ。

リモートコントロール機能を使ってブラウザーでサーバーにアクセスできる

Proxmox VEのISOイメージでブートする

 ということで、BMCの「Remote Control」から「H5Viewer」を選択して、サーバーのコンソールを表示し、右上の「CD Image」の「Browse」ボタンからProxmox VE 9.0.1のISOイメージを登録した。

右上の「CD Image」でProxmox VEのインストール用ISOイメージを接続

 その後、一旦BMCに戻って、「Power Control」からサーバーの電源をオンにした。なお、標準ではネットワークブートが優先されるので、待ち時間が結構かかる。できればBMCの「BIOS」画面でブート順を変更しておくといいだろう。

BMCで電源オン
ブート順を変更しておくのがおすすめ

 これでH5Viewerの画面に戻ると、マウントしたイメージから起動し、Proxmox VEのインストールが可能になる。

 ここでは詳細なインストール方法は省くが、ポイントのみ紹介すると、以下のような流れとなる。

【ポイント1】インストール画面で「Install Proxmox VE(Graphical)」を選択する
【ポイント2】インストール先を指定する(今回はNVMe SSDを指定)
【ポイント3】管理者パスワードとメールアドレスを設定する
【ポイント4】ホスト名とIPアドレスを設定する

 以上でインストールは完了だ。その後、「https://192.168.50.175:8006/」のように管理画面のアドレスが表示されるので、ブラウザーでそこにアクセスすれば、Proxmox VEを利用できる。

インストールが完了し、Proxmox VEを利用可能になった

 このBMCを使ったインストールは非常に楽だ。ネットワーク経由でISOイメージを利用するため、若干、インストールに時間がかかる印象があるが、BMCポートにケーブルを接続しておけば、サーバー本体がどこにあろうとインストール作業ができる。

 家庭でも目立たない場所にサーバーを設置しておいて、手元のPCから簡単にインストールや管理ができるだろう。

Proxmox VEで利用する場合の注意点

 このように手軽に仮想マシンプラットフォームとして構成できるMousePro RV-X3S01だが、Proxmox VEで利用する際は2つのポイントに注意する必要がある。

 1点目はRAIDの構成だ。本製品は、IntelのVROCを利用して2台のHDDがRAID 1で構成済みとなっている。VROCは、CPUの機能でRAIDを構成するが、このRAIDはProxmox VEでは認識できない。

 通常のシングルドライブとして認識されるので、BIOS側であらかじめRAIDを解除しておく必要がある。HDDの冗長性を確保したい場合は、Proxmox VEでZFSを使うことを検討するといいだろう。

VROCでRAID 1で構成されていてもProxmox VE上からはシングルディスクとして認識される

 2点目はネットワークだ。もちろん、MousePro RV-X3S01に搭載されている1Gbpsのネットワーク(Intel i210AT)は2ポートともProxmox VEで問題なく認識できるのだが、10Gbpsなどにアップグレードしたい場合は注意が必要だ。

 試しに、流行りのRTL8127を採用した10Gbpsのカードを装着してみたが、これは利用できなかった。RTL8127搭載カードは、Linuxカーネル6.16以上が前提となるため、現状のProxmox VE 9.0.1(カーネル6.14)では認識されない。

 せっかくなので、10Gbps化したかったのだが、あいにく他に使えるカードが手元になかったので、今回はあきらめることにした。新たに10Gbps対応カードを購入する際は、事前にネット上でProxmox VEでの対応状況を確認することをおすすめする。

RTL8127搭載カードを装着してみたが利用できなかった

BMCの使い勝手がいい

 以上、マウスコンピューターの小型サーバー「MousePro RV-X3S01」にProxmox VEをインストールしてみた。

 OSなしモデルは安く買えるので、Proxmox VEと組み合わせると、自宅用に結構パワフルな仮想マシンプラットフォームを構築できる印象だ。NASとしてはもちろんのこと、さまざまなサーバーやテスト用のWindowsなどを動かして、いろいろ遊ぶことができる。

 何より、標準で利用できるBMCの使い勝手がいい。企業向けと思われがちだが、サーバーが目立たない場所に置かれるケースもある家庭でもかなり重宝する。

 ハードウェア、ソフトウェアともに柔軟性や自由度を求める人にとっては、NASよりも使い勝手のいい選択となりそうだ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。「できるWindows 11」ほか多数の著書がある。YouTube「清水理史の『イニシャルB』チャンネル」で動画も配信中