ニュース
NTT東西、「ネットワーク品質向上に向けたシンポジウム」で、大規模通信障害を繰り返さないための取組を発表
2023年にMoUを締結した各社が参加
2025年9月19日 11:15
NTT東日本株式会社とNTT西日本株式会社は9月18日、サプライヤーや通信業界の関係者向けに、NTT東西と通信機器メーカー5社がネットワーク品質向上に向けた取り組みを発表する「ネットワーク品質向上に向けたシンポジウム」を開催した。
NTT東西は、2023年4月にフレッツ光の大規模通信障害が発生したことを受けて、2023年6月に通信機器メーカー5社(Cisco Systems、Juniper Networks、日本電気株式会社、Nokia、富士通株式会社)とMoU(覚書)を締結している。シンポジウムでは、ネットワーク品質向上への取り組みや、今後の展望などについて、MoUを締結した各社が発表した。
ここでは、NTT東西の発表内容を紹介する。
2023年4月の大規模通信障害を踏まえ、通信機器メーカーとの連携を強化
NTT東西でのネットワーク品質向上の取り組みについて、NTT東日本株式会社の太田憲行氏(先端テクノロジー部 ネットワーク技術部門 部門長)が発表を行った。
過去5年間(2019年~2023年)に発生した重大な事故に該当する通信障害で、年間平均1000万人のユーザーが影響を受けたという。太田氏は、現代のあらゆる生活・産業を支える社会インフラとなっている通信ネットワークにおいて障害が発生することが、多くの人に影響を与えてしまうとし、ネットワークの品質を向上させ、安定的に運用していくことが非常に重要になると述べた。
2023年4月3日に発生した、NTT東西のフレッツ光サービスにおける大規模通信障害では、16都道府県で約44.6万回線に影響を与えた。この通信障害は、加入者収容装置に未知の不具合が存在し、パケット転送部が再起動を繰り返したことが原因であった。
この大規模通信障害を受け、NTT東西が発表した再発防止策の中には「通信機器メーカーと新たな連携体制の構築」という内容があり、その後2023年6月に、通信機器メーカー5社と、品質向上に向けて共同で検討を進めていく内容のMoUを締結した。
MoU締結後、NTT東西の具体的な機器構成や使い方を踏まえた共同検討や、通信機器メーカーと共同での強化検証、開発者とのネットワーク品質向上に関する戦略の議論など、さまざまな取り組みを行ってきたという。
太田氏は、具体的なNTT東西での取り組みの例として、機器導入前の試験・検証を挙げた。通信機器メーカーでの検証に加え、NTT東西で、商用環境での動作や複数の装置やシステムがつながったネットワーク全体としての動作の検証も行っている。
さらに、商用環境での不具合を未然に防ぐために、検証カバレッジ(網羅率)の拡大にも取り組んでいる。検証カバレッジを拡大すれば要する時間も増えるが、可能な限り人手を介さずに連続で試験を実行できるよう自動化することで、従来の検証と同程度の期間で実施できるようになった。
不具合が発生時を想定し、影響を小さくするための取り組みとしては、ネットワーク構成のシンプル化や、装置冗長化の方式の見直しを行っている。これらにより、トラブルの波及する範囲を限定的にし、影響も限定的にしている。
太田氏は、ネットワーク品質向上を非常に重要な課題だとし、通信事業者だけでなく通信機器メーカーとの連携を深めることで、さらなる品質向上を図っていくとした。