清水理史の「イニシャルB」

最大のライバルは自社の優秀すぎるWi-Fiルーターか? TP-Linkのコンセント直結型中継機「RE220BE」の実力
2026年3月30日 06:00
2026年2月に発売されたTP-Linkの「RE220BE」は、Wi-Fi 7に対応した中継機だ。かつては各メーカーからさまざまな製品が販売されていた中継機も、今や取り扱うメーカーは少なく、Wi-Fi 7対応となるとTP-Link製のみという状況だ。
微妙な立ち位置になりつつある中継機の現状にも触れつつ、本製品の実力を紹介する。この製品の最大のライバルは自社製品かもしれない。
選択肢が限られる中継機
現状、Amazon.co.jpで「Wi-Fi 中継機」で検索すると、TP-Link製品がズラリと並ぶ。
もちろん、バッファロー、エレコムなどの製品もリストアップされる場合はあるが、Wi-Fi 7対応となると、事実上TP-Link一択となる状況だ。しかも、似たような見た目の製品ばかりで、見分けるのに苦労するかもしれない。
数年前、リモートワークが普及し始めたタイミングで、Wi-Fiの通信エリア拡大目的で中継機の需要が高まったこともあったが、需要が一巡すると、メーカーから登場する新製品も少なくなり、気づけばTP-Link製品ばかりという状況となっている。
それなりに需要はありそうだが、他社から新製品が登場しない理由は、正直、よくわからない。
リモートワーク需要の時に買ったWi-Fi 6対応製品で満足しているユーザーが多く買い替えが進まないのか、そもそもWi-Fi 7ルーター単体で十分と考えるユーザーが多いのか、さらにはメッシュ製品への移行が進んでいるのか、何らかの理由により開発に踏み切れないのだろう。
しかし、その一方でTP-Linkは、現状、中継機だけで新旧規格を合わせ20モデル近くラインアップしており、Wi-Fi 7対応だけでも3モデルもあるという状況だ。グローバルメーカーだからと言えばそうなのかもしれないが、他社とのギャップを考えると、果たして現在の市場の中継機需要は高いのか? それとも低いのか? 頭がこんがらがってしまいそうだ。
とはいえ、中継機が欲しいと思っている人にとって、今回、TP-LinkからリーズナブルなWi-Fi 7中継機「RE220BE」が登場したこと自体は、歓迎すべきことだ。コンセント直結でスマートにWi-Fiエリアを拡大するのに役立てることができる。
Wi-Fi 7対応+コンセント直結で唯一のアンテナ内蔵中継機
TP-Linkの「RE220BE」は、Wi-Fi 7ことIEEE 802.11beに対応した中継機だ。デュアルバンド対応で、速度は2.4GHz帯が688Mbps、5GHz帯が2882Mbps対応となっており、1Gbps対応の有線LANポートも1つ搭載する。実売価格も1万円前後と、現状、Wi-Fi 7対応中継機としては、最もリーズナブルな製品となっている。
| 項目 | 内容 |
| 価格 | 1万800円 |
| CPU | - |
| メモリ | - |
| 無線LANチップ | - |
| 対応規格 | IEEE 802.11be/ax/ac/n/a/g/b |
| バンド数 | 2 |
| 最大速度(2.4GHz) | 688Mbps |
| 最大速度(5GHz-1) | 2882Mbps |
| 最大速度(5GHz-2) | - |
| 最大速度(6GHz) | - |
| チャネル(2.4GHz) | 1-13ch |
| チャネル(5GHz-1) | W52/W53/W56 |
| チャネル(5GHz-2) | - |
| チャネル(6GHz) | - |
| ストリーム数(2.4GHz) | 2 |
| ストリーム数(5GHz-1) | 2 |
| ストリーム数(5GHz-2) | - |
| ストリーム数(6GHz) | - |
| アンテナ | 内蔵×2 |
| WPA3 | 〇 |
| メッシュ | 〇 |
| IPv6 | 〇 |
| IPv6 over IPv4(DS-Lite) | - |
| IPv6 over IPv4(MAP-E) | - |
| 有線LAN | 1Gbps×1 |
| 有線WAN | - |
| 有線LAN(LAG) | - |
| 引っ越し機能 | - |
| サードパーティー製セキュリティ | - |
| USB | - |
| USBディスク共有 | - |
| VPNサーバー | - |
| DDNS | - |
| リモート管理機能 | 〇 |
| 再起動スケジュール | 〇 |
| 動作モード | - |
| ファーム自動更新 | 〇 |
| LEDコントロール | 〇 |
| ゲーミング機能 | - |
| サイズ(mm) | 78×36×149 |
本体サイズは78×36×149mm(本稿執筆時点での公式サイトの記述は97×46×158mmとなっているが、実測するともっと小さいので、おそらく記載ミス)となっており、コンパクトと言うほどではないが、薄型の設計になっている。
本体背面に電源接続用コネクタが搭載されているコンセント直結型で、奥行きが36mmほどと抑えられていることで、壁からあまり出っ張らずに済む。また、2口のコンセントの上部に装着した場合、下側のコンセントが利用可能(大型のACアダプターなどの接続は難しいが……)となっており、利便性がしっかりと考慮されている。
最大の特徴は、アンテナ内蔵タイプであることだ。TP-Linkの中継機は、アンテナが外付けのタイプと内蔵のタイプの2種類が存在する。Wi-Fi 7対応の既存の2製品はいずれも外付けタイプなので、今回のRE220BEがWi-Fi 7対応中継機で唯一のアンテナ内蔵モデルということになる。
同社のアンテナ外付け中継機のアンテナは可動だが、動かせる範囲は前後(垂直〜水平)に限られており、筆者宅のような3階建て住宅で上下方向に電波を飛ばそうとすると、アンテナを水平にして「前へならえ」のようになり、壁からかなり出っ張ってしまう。
本製品はアンテナ内蔵タイプなので、方向の調整ができない一方で、アンテナが壁から前に出っ張ってしまうような使い方を避けられるのもメリットとなっている。 デザインもシンプルで、コンセントボックスや壁の色と合う白なので、目立たず設置できるだろう。
Archer BE220×2台と悩む……
使い方も簡単で、基本的にスマートフォンの「Tether」アプリやWPSボタンによって、さっと中継機として設定可能になっており、ハードウェアや使い勝手の面では、まったく問題ない。しかしながら、冒頭で触れた中継機市場全体の立ち位置とも関係するが、本製品にも、冷静に考えると「微妙」と思える点がいくつかある。
微妙と感じる最大のポイントは価格だ。本製品の執筆時点におけるAmazon.co.jpでの実売価格は1万800円となっており、Wi-Fi 6対応中継機と比べると割高だが、最新世代のWi-Fi 7中継機としては安い。
しかし、TP-Linkには、無線性能が同等で、現状トップレベルのコスパの高さを持つ「Archer BE220」というWi-Fi 7ルーターが存在する。この製品はメッシュに対応しているため、メッシュによる中継環境を構築するのであれば、RE220BEの代わりとして利用できる。
しかも、Archer BE220は、通常時の実売価格ですら8000~9000円とRE220BEより安いうえ、セールになると6000円前後にまで価格が下がることがある。実際、3月初頭に実施されたAmazon.co.jpの新生活セールでは実売価格は6490円だった。
要するに、「メッシュや中継可能な通信機器」というカテゴリで考えると、Archer BE220の方が安いし、セールを狙えば、少し予算を足して2台買うこともできるという状況にあるわけだ。
うーん。これは悩ましい。
では、RE220BEを選ぶメリットはどこにあるのか? というと、これはもうコンセント直結で利用できるという構造上のメリットになる。
いや、コンセントの場所が奥まっているケースなどでは、電源ケーブルを延ばして配置できるArcher BE220の方がいい、という意見もあるかとは思うが、例えば廊下など人が頻繁に行き来し、目につく場所に設置する場合は、RE220BEの方が明らかにいい。
つまり、どこに設置するか? が本製品を選ぶ際の大きな基準になるわけだ。
性能は問題ないが……
気になる性能だが、中継機として問題ない印象だ。以下は、木造3階建ての筆者宅で、1階にArcher BE220を単独で設置した場合と、1階にArcher BE220、3階に今回のRE220BEを中継機として追加した際の速度比較だ。
| 1F | 2F | 3F入口 | 3F窓際 | ||
| Archer BE220単体 | 上り | 947 | 552 | 417 | 178 |
| 下り | 948 | 894 | 618 | 299 | |
| Archer BE220+RE220BE(中継) | 上り | 932 | 530 | 386 | 346 |
| 下り | 942 | 843 | 620 | 498 |
※単位:Mbps
※サーバー:MINISFORUM MS-01 Core i5-12600H/RAM64GB/1TB NVMeSSD/10Gbps SFP+/Proxmox 9.1 LXC(Ubuntu 24.04)
※クライアント:Core Ultra 5 226V/RAM16GB/512GB NVMeSSD/Intel BE201D2W/Windows11 24H2
※アクセスポイント:アイ・オー・データ機器 WN-7T94XR(APモード、10Gbps接続)
RE220BEを中継機として追加することで、筆者宅では最も距離が遠く、遮蔽物も多く、さらに外部からの干渉も大きい過酷な環境で498Mbpsをマークした。中継機の有無で比較すると、+200Mbpsほどの効果が得られたことになる。
しかし、ここでもArcher BE220の存在が気になってしまう。
Archer BE220は、単体でも同じポイントで299Mbpsと高いパフォーマンスを発揮できている。要するに、筆者宅程度の狭い住宅なら、Archer BE220単体でも十分な性能を発揮できてしまうため、中継機としてRE220BEがなくても困らないのだ。
もちろん、単体で十分に自宅内をカバーできるかどうかは、住宅環境に大きく依存するのだが、TP-LinkのArcher BE220は安い製品のわりにパフォーマンスが高い。筆者は、この製品を何度かベンチマークテストしているが、その度に、「これで十分だな」と感じてしまう。
となると、やっぱりセールを狙ってArcher BE220を、それも少し予算を足して2台買った方がお得に思えてしまう。
もちろん、RE220BEそのものの性能や使い勝手に文句の付け所はないのだが、1年ほど前に登場した、同社のエントリーモデルとなるArcher BE220のコスパが良すぎるのだ。最大の競合が自社製品というのは、TP-Linkにとっても完全に想定外だろう。
コンセント直結で使いたい人向け
ということで、TP-LinkのWi-Fi 7中継機「RE220BE」をテストしたが、今や貴重な中継機として性能やデザイン、使いやすさなどの完成度は高い印象だ。
本製品は、あくまでも、「最新のWi-Fi 7」で「コンセント直結」で「目立たず」通信エリアを広げたいというニーズに対応する製品となる。Wi-Fiのエリアを広げる、という目的なら他の選択肢もあるため、広い視野で製品を探すことをお勧めする。




