清水理史の「イニシャルB」

Wi-Fi対応でリモート接続がカンタンなIP KVM登場! GL.iNet「Comet Pro(GL-RM10)」
2026年4月6日 06:00
トラベルルーターなどでお馴染みのGL.iNetから、ネットワーク経由でPCをリモートコントロールできるIP-KVM「Comet Pro(GL-RM10)」が発売された。国内サイトで手軽に買えること、Wi-Fi 6に対応していること、独自のリモートアクセスの仕組みを備えているのが特徴で、サーバーなどのリモート管理が簡単にできる。実際の使用感をレポートする。
価格は高いが「3つの手軽さ」を備えたIP-KVM
GL.iNetの「Comet Pro」は、誰でも手軽に利用できるIP-KVMだ。
IP-KVMは、ネットワーク(IP)経由で「K」eyboard、「V」ideo、「M」ouseを制御できる装置だ。PCを遠隔操作することが可能で、サーバー管理などに利用される。
筆者の購入した目的も、当初は自宅で動かしているミニPCのサーバー(ルーター兼ファイルサーバー)の管理用だが、場合によっては、リモートワークなどの目的で自宅のPCを遠隔操作したいケースでも利用できるだろう。
同様の製品としては、NanoKVM Pro(詳細はPC Watchの記事参照)が存在するが、既存製品と比べたときの本製品の優位性は大きく3つある。
1つ目は手軽に買えることだ。Comet ProはAmazon.co.jpで購入できるため、Aliexpressやクラウドファンディングなどから購入する必要がない。安心して購入できる上、在庫さえあれば数日で手元に届く。
2つ目は手軽に無線接続できる点だ。本製品には、Wi-Fi 6モジュールが標準で内蔵されており、IP-KVM自体をWi-Fiで接続できる。通常、IP-KVMのような製品は、安定した通信が可能な有線で接続するのが一般的だが、家庭での利用を考えると、必ずしもコントロールしたいPCの近くに有線が引き込まれているとは限らない。このため、PCだけでなく、それをコントロールするためのIP-KVM自体もWi-Fiで接続できるのがメリットとなる。
もちろん、国内向け製品なので技適の取得も問題なく、2.4GHz、5GHzともに「211-251011」の番号で取得済みとなっている。Wi-Fi対応のIP-KVMはほかにも存在するが、海外製品は技適の取得状況の確認が難しい。その点、本製品は安心して利用できる。
最後の3つ目は、手軽にリモート接続できる点だ。外出先から本製品経由でPCをリモート操作する場合、接続用のポートをルーターで解放したり、TailscaleなどのVPNサービスを利用したりするのが一般的だ。本製品も、そのどちらでも利用できるが、さらにGL.iNet独自の接続サービスが提供されており、アカウント登録だけで簡単にリモートアクセス設定ができる。
以上の「3つの手軽さ」が実現されていることが、本製品のメリットだ。
Comet Proの欠点
ただし、その代償として、本製品は価格が高い。2026年3月20日時点でのAmazon.co.jpの実売価格は税込3万856円となっており、手軽に買えるとは言い難い。
また、この手の製品では必須ともいえる電源制御用のモジュールもオプション扱いとなっている。ATX電源用の「ATXboard($15.99)」に加え、物理スイッチを押す「Fingerbot($29.99、売り切れ)」がラインアップしているが、この両製品ともAmazon.co.jpでは販売されておらず、同社の公式オンラインストアから購入する必要がある。
▼GL.iNet Store
GL.iNet公式グローバルストア
筆者もATXboardを購入したが、当然海外からの配送になるため、なかなか手元に届かない。本当はFingerbotが欲しかったが、こちらも現状は手に入らない状況だ。実売価格で3万円もするのだから、ATXboardくらいは本体に同梱して欲しかったところだ。
つないで、リモート設定オンにするだけでOK
設定は非常に簡単だ。
まずは、Comet ProをPCに接続する。PCとディスプレイは本来HDMIケーブルで直結されているが、その間にComet Proを接続して映像をネットワーク経由で伝送できるようにする。本製品はHDMIパススルーが可能なため、ディスプレイ側にも映像を表示しつつ、Comet Proにも映像を入力できる。さらに、Type-CのUSBケーブルでPCと接続し、キーボードとマウス操作をエミュレートできるようにする。最後に電源を接続すれば完了だ。
Comet Proには、2.22インチのタッチスクリーンが搭載されているため、Wi-Fiの接続は本体から直接可能だ。SSIDを検索し、暗号キーを入力すれば接続が可能になる。もちろん、いったん有線で接続してから管理画面で設定することも可能だ。
家庭内ネットワークの内側だけで使うなら、設定はこれだけでかまわない。タッチスクリーンに表示されたIPアドレスにウェブブラウザーでアクセスすれば、棚などに設置したヘッドレスのサーバーを、手元のPCから管理ができる。
リモート接続は2種類から選択可能
遠隔操作のための設定は大きく2種類用意されている。
既存製品でも見られる外部のVPNサービスを利用した接続方法は、「App Center」から設定可能だ。2026年3月時点では、「Tailscale」と「ZeroTier」が可能になっている。Tailscaleは本稿でもかなり前に紹介したが、WireGuardを使ったVPNを構築できるサービスだ。
本製品の機能も簡単に設定可能となっており、Tailscaleのアカウントがあれば、App Centerから機能をオンにして、登録済みのアカウントでサインインするだけで本製品がTailscaleのネットワークに登録される。
外出先からアクセスする場合は、ノートPCなどにクライアントをインストールしておき、Tailscaleに接続すれば、同じネットワークに接続しているComet Proにアクセスできるというしくみだ。
もうひとつは、GL.iNetが提供しているクラウドサービスを利用する方法だ。こちらも簡単で、設定画面から「Cloud Service」をオンにし、GL.iNetのアカウントでサインインするだけで自動的に構成される(Googleアカウントなどですぐにサインイン可能)。
イメージとしてはNASのリモートアクセスサービスに近い。GL.iNetがアカウント認証を備えた中継サーバーを提供しており、上記の設定でComet Proがこのサービスに自動的に登録される。
外出先からアクセスする場合は、「GLKVM」にウェブブラウザーでアクセスし、アカウントでサインインすると、登録済みのComet Proが画面上に表示されるので、クリックすることで接続できるようになる(ネットワーク環境によっては中間サーバー経由)。
これら2種類の方法により面倒かつリスクの高いポート開放を設定不要な上、自宅側のネットワーク環境を問わず、簡単にリモートアクセスを実現可能だ。
使用感もいい
実際の使用感も悪くない。2560×1440の解像度で、音声再生ありの状態で動画を再生してみたところ、1.6~1.7Mbps前後のビットレートにおいて60fpsで利用できた。
もちろん、Windowsのリモートデスクトップと違い、BIOS画面を表示することも可能な上、Comet Proに内蔵されたeMMCにISOファイルを保存しておくことで、OSのインストールなどもできる。
また、スピーカーとマイクを有効にすれば、音声出力だけでなく、マイク入力(ウェブブラウザー本体のアクセス許可も必要)も可能なので、ビデオ会議や音声でのCopilotチャットなども可能だ。
気になるラグだが、ウィンドウをドラッグしたまま速く動かすと、若干気になるうえ、動きの激しいシーンでは画質がぼやける部分もあるので、正直、ゲームなどの利用は難しいと思うが、一般的なアプリの利用などは問題ない。
試しに、パススルーで外付けディスプレイを接続したローカル出力と、GL.iNetのクラウドサービス経由でリモート接続(別回線を利用してWAN経由で接続)時で、ストップウォッチの値を比較したのが以下の写真だ。
手元に解像度が1024×768のモバイルディスプレイしかなかったので解像度が低く(フレームレートは60fps)、ビットレートも500kbps前後と低いので、あくまでも一例と考えてほしいが、時間差はだいたい0.06~0.07秒ほどと、かなり低遅延で画面を再生できている。
もちろん、より高い解像度の場合やネットワークの接続状況が悪いケースでは、もっと遅延が大きくなると予想されるが、実用性は問題ないレベルと言えるだろう。
ただ、気になったのはクリップボード機能だ。本製品には、操作するPC上で入力した文字列をクリップボード経由でリモートPCに貼り付ける機能が搭載されているのだが、この機能が現状不安定だ。
「Japanese(日本語)」を選択しても、日本語が完全に抜け落ちてしまううえ、アルファベットでもたまに文字列を取りこぼすことがあった。このあたりは改善が望まれるポイントだ。
価格さえ納得できればいい製品
以上、GL.iNetから発売されたWi-Fi 6対応のIP-KVM「Comet Pro(GL-RM10)」を実際に試してみた。価格は高いものの、手軽に使えるIP-KVMに仕上がっている印象だ。特に独自のクラウドサービスによってリモートアクセスが簡単にできる点は好印象だ。日本市場向けにWi-Fiルーターを販売してきた実績もあり、安心して使える製品と言える。
ただし、まだ完成度としては甘いところもある。前述したクリップボード機能もそうだが、iPhone向けのモバイルアプリでGoogleアカウントでサインインできないなど、まだ実装されていない機能もある。
また、電源周りの制御用モジュールがオプションとなっている点もサーバー管理用としては厳しい。一応、Wake on LANでPCを起動することも可能だが、実際にリモートで起動できるかはPC側の対応次第と言える。
ということで、まだ発展途上であることと高い価格に納得できるのであれば、いい製品と言える。
なお、筆者もまだ使っていないので何とも言えないが、セルフホスト版のクラウドサービスサーバーも用意されている(以下のリンク先)ので、サーバーも自前で用意するのも面白いだろう。
▼glkvm-cloud(GitHub)
GitHub gl-inet/glkvm-cloud



















