清水理史の「イニシャルB」

もっと「できる」はず! ZTEのWi-Fi 7ルーター「Inazuma BE7200 Pro+」に、あえて苦言を呈したい
2026年4月13日 06:00
国内通信事業向けの機器として採用例も多いZTEから、家庭用のゲーミングルーター「Inazuma BE7200 Pro+」がリリースされた。ゲーミングと言っても、ゲーム向けの特別な機能があるわけではなく、派手さもないが、高い処理性能と高精度のアンテナが特徴で、ベンチマークテストでも優秀な結果を示す製品だ。
ただし、家庭用として、まだまだできることが多く残されている印象の製品となっている。あえて厳しい視点で検証した。
Sora、Kumoに続く「Inazuma」
今回、取り上げる製品は、本連載で2025年8月に取り上げたZTEの家庭向けWi-Fiルーターの、次世代モデルだ。
2025年に発売された「Sora」「Kumo」の2製品はWi-Fi 6対応の低価格な製品として登場したが、2026年3月に、Wi-Fi 7対応のゲーミングモデル「ZTE Inazuma BE7200 Pro+」と、Soraの名前を引き継いだWi-Fi 7対応ミドルレンジモデル「ZTE Sora BE3600 Pro」の2製品が新たに加わった。
ZTEは、通信事業者(NURO 光、CATV事業者など)向けの通信機器を提供するベンダーとして国内でもお馴染みだが、本格的な家庭向け製品の提供は昨年からの参入となっており、国内の家庭向け市場での動向が注目されていた。昨年のモデルの販売実績が順調だったのかどうかは分からないが、今回の新モデルの投入によって、さらなる拡大を図ろうということだろう。
特に、今回取り上げる「Inazuma」は、従来のエントリークラスではなく、ゲーミングルーターとして位置づけられており、ミドル~ミドルハイのレンジを狙った製品となっている。同社としては日本の新しいユーザー層を狙った戦略的な製品で、価格やデザインだけではなく、パフォーマンスという直球勝負で、どこまで競合と戦えるのかが注目されるところだ。
本製品「Inazuma BE7200 Pro+」は発売直後に購入し、記事執筆の準備をしていたのだが、後日、ZTE側から製品レビューの打診を受けた。筆者からは、これに対して、すでに購入済してレビューしている旨と、以降に書いたような内容を返信した。
その後、記事を執筆・制作して一旦完成していたのだが、記事の公開前に、ZTE側でいくつかの見直しが行われた。具体的には、Amazon.co.jpに掲載されている情報が修正されており、2.4GHz帯の最大通信速度が「1440Mbps」から「1376Mbps」に、「高出力FEM」が「高性能FEM」になっている。今回の記事は、これらの修正が行わる前の情報に基づくものとしてお読みいただきたい。
記事の完成から公開まで時間が空いたが、その間に見直しが行われたことは、素早い対応だったと言える。以降に書いたそのほかの点についても、ファームウェアアップデートなどによる改善を検討するとの連絡を受けている。
ゲーミング向けの高いスペックと外付けアンテナ
スペックは、Wi-Fi 7ことIEEE 802.11be対応のデュアルバンド対応モデルで、速度は2.4GHz帯が1376Mbps、5GHz帯が5765Mbps。いずれも4ストリーム対応となっている。有線LANはWAN側が2.5Gbps×1、LAN側が2.5Gbps×1+1Gbps×3となっており、WAN/LAN共に2.5Gbpsに対応。さらに、8コアのCPU、1GBのメモリと処理能力に余裕を持たせた高性能な性能となっているのが特徴だ。
ただ、現状、Wi-Fi 7対応でミドルハイのレンジに位置づけられる製品は、WAN側が10Gbps対応というのが現在の主流だ。例えば、ASUS ROG STRIX GS-BE7200X(実売3万円前後)、NECプラットフォームズ Aterm AM-7200D8BE(実売3万円前後)、TP-Link Archer BE7200(実売2万円前後)は、いずれも無線のスペックは今回Inazumaと同じだが、WAN側に10Gbps対応のポートを搭載している。
国内では、現状、10Gbps回線への移行が徐々に進んでいる状況で、ミドルハイの製品はWAN側10Gbps対応へのニーズが高い。そう考えると、WAN/LANともに2.5Gbps対応というのは少々物足りない印象がある。
では、本製品の特徴はどこにあるのか? というと、最大の魅力は外付けのアンテナだ。本製品には、1本あたり16cmほどもある巨大なアンテナが8本搭載されている。2.4GHz×4本、5GHz×4本と、4ストリームずつ全て外付けという構成で、環境に合わせた電波状況の改善ができるようになっている。
昨今の製品は、アンテナ内蔵がトレンドだが、あえて外付け、しかも巨大であることが、本製品の個性ということになる。
| 項目 | 内容 |
| 価格 | 2万4800円 |
| CPU | 8コア |
| メモリ | 1GB |
| 無線LANチップ | - |
| 対応規格 | IEEE 802.11be/ax/ac/n/a/g/b |
| バンド数 | 2 |
| 最大速度(2.4GHz) | 1376Mbps(1440Mbps)[※1] |
| 最大速度(5GHz-1) | 5765Mbps(5760Mbps)[※1] |
| 最大速度(5GHz-2) | - |
| 最大速度(6GHz) | - |
| チャネル(2.4GHz) | 1-13ch |
| チャネル(5GHz-1) | W52/W53/W56 |
| チャネル(5GHz-2) | - |
| チャネル(6GHz) | - |
| ストリーム数(2.4GHz) | 4 |
| ストリーム数(5GHz-1) | 4 |
| ストリーム数(5GHz-2) | - |
| ストリーム数(6GHz) | - |
| アンテナ | 外付け×8 |
| WPA3 | 〇 |
| メッシュ | 〇 |
| IPv6 | 〇 |
| IPv6 over IPv4(DS-Lite) | 〇 |
| IPv6 over IPv4(MAP-E) | 〇 |
| 有線LAN | 2.5Gbps×1+1Gbps×3 |
| 有線WAN | 2.5Gbps×1 |
| 有線LAN(LAG) | - |
| 引っ越し機能 | - |
| サードパーティー製セキュリティ | - |
| USB | USB 3.0×1 |
| USBディスク共有 | 〇 |
| VPNサーバー | - |
| DDNS | 〇 |
| リモート管理機能 | 〇 |
| 再起動スケジュール | - |
| 動作モード | ルーター/ブリッジ/メッシュ |
| ファームウェア自動更新 | 〇 |
| LEDコントロール | 〇 |
| ゲーミング機能 | - |
| サイズ(mm) | 278.69×236.85×45.5 |
[※1]……同社のスペックシート上の表記。1440Mbpsは制御用のパイロットキャリアも含めた場合の通信速度と推測される。チップ上の性能上限となるが、通常はパイロットキャリアは含めない実効で速度を計算するため実効速度は通常と同じ1376Mbpsとなる
改善はみられるが……
以前、本連載でZTEのSoraとKumoをレビューした際、国内回線の自動判別機能が万全ではない点について「使い勝手が前世代」と評したが、今回の製品ではこのあたりの改善が実施されている。
同社によると、日本のユーザーからのフィードバックを反映し、アプリやUIなどの日本環境へのローカライズをブラッシュアップしたということで、例えば回線の設定項目が「DS-Lite」「v6plus」「IPv6オプション」と増えていたり、スマートフォンアプリ「ZTE Smart Life」からの初期設定ができたり(以前はアプリで初期設定ができず、リモート管理用だった)と、改善されている。
もちろん、一歩ずつ前進している最中なのは理解できるが、個人的には「もっとできるんじゃない?」と気になるポイントがいくつか目につく。
1440Mbps表記について
まず、本製品は、2.4GHz帯の速度が場所によって異なる。例えば、Amazon.co.jpの製品名は「1376Mbps」なっているが、スクロールした画像には「1440Mbps」と書いてあったり、プレスリリースでも1.44Gbpsと記載されたりしている。
Wi-Fi 7ことIEEE 802.11beの2.4GHz帯の最大速度は、MCS13(4096QAM、エラー訂正5/6)の4ストリーム、40MHz幅、GI0.8で1376.5Mbpsとなっており、1440Mbpsという定義はない。想像するに、単なる間違いか、制御用のサブキャリアを含めた場合の速度ではないかと思うが、速度の高さをアピールしたいとしても非現実的な速度を記載すべきではない。
標準20MHz幅の速度設定
しかも、本製品では、上記の2.4GHz帯の帯域幅の設定が標準で20MHzとなっている。もちろん、こうした設定は珍しくはないし、きちんとした理由はある。2.4GHz帯は干渉の影響も受けやすいので20MHz幅の方が安定しやすい。また電波の出力を考えても40MHz幅よりも20MHz幅の方が高くできるため、長距離での通信状況を改善しやすい。
しかし、それは安定性を重視した保守的な製品での話だ。本製品は「Inazuma」と名付けられるほど高いパフォーマンスを目指した製品なのだから、このマーケティング的な思想と実際の設定状況に矛盾を感じてしまう。
2.4GHz帯が20MHz幅の場合、一般的なPCやスマートフォンなど2ストリーム対応の製品での最大速度は344Mbpsに抑えられてしまう(40MHz幅2ストリームなら688Mbps)。仮に4ストリームで使えたとしても、前述した1440Mbpsどころか、1376Mbpsにも届かないとなると、ユーザーの期待を裏切ることになる。標準設定で40MHz幅にしておいた方がよかったのではないだろうか。
「高出力」FEM?
本製品の特徴ともいえる外付けアンテナだが、このマーケティングメッセージも少々過剰な印象を受ける。「8枚内蔵アンテナチップ搭載(販売サイト画像より)」「8本の高性能外部アンテナと各アンテナ独立搭載の高出力FEM(リリースより)」などの表記が見受けられるが、各アンテナに独立したFEM(フロントエンドモジュール:アンプやフィルタなどのチップ)が搭載されるのは、さほど珍しいことではない。
もちろんFEMが「高品質(スペックが高く高価なチップ)」という意味なら分かる。場合によっては、PCから送信された電波を受信したときの信号を取り出す精度が高くなる可能性はある。しかし、「高出力」というのは誤解を招く恐れがある。
日本の法律では、5GHz帯の場合で、20MHz幅なら10mW/MHz、40MHz幅なら5mW/MHz、80MHz幅なら2.5mW/MHz、160MHz幅なら1.25mW/MHzと電力(細田空中線電力)が定められており、これを超えることはできない。
もちろん、その範囲内でなるべく高いギリギリのチューニングをしている可能性はあるが、それにしても「高出力」という表現が適しているとは言い難い。
回線自動判別とスマホアプリ
前述した回線自動判別機能やスマートフォンアプリも、欲を言えばさらなる改善を求めたい。筆者宅のASAHIネットの自動判定もできなかったので、今回も手動設定したが、Amazon.co.jpの販売ページ下部のQA項目には、以下のような記載がある。
確かに現状のIPv4 over IPv6の設定はVNEによって細かな違いがあり、全ての方式をサポートするのは容易ではないが、それにしても国内大手と言っていい「OCN」や「Internet Multifeed(transixなので自動判別で接続できそうだが……)」などが非対応だと、本製品を購入できるユーザー層が限られてしまう。
国内のIPv6接続仕様は、JAIPAが公開している以下の資料のように標準プロビジョニング方式(DNSを起点にHTTPで接続情報を取得する方式)も用意されているので、こうした方式を組み込めば、もう少し対応を広げられると思うので、ぜひ改善を願いたい。
▼JAIPAの資料公開に関する発表
IPv6マイグレーション技術の国内標準プロビジョニング方式 【第1.2版】公開!(JAIPA)
また、それに関連するが、非対応の回線を使っている場合、スマートフォンアプリでの初期設定に失敗する。
これは、スマートフォンアプリの設定の流れが(1)InazumaへのWi-Fi接続→(2)Inazumaの発見→(3)Inazuma用プラグインのダウンロード→(4)Inazumaの初期設定という流れで進むためだ。自動判別ができない回線を利用している場合、(3)のプラグインのダウンロードに失敗するため、その後の初期設定に進めない。
インターネット接続設定をするためにインターネット接続が必要という仕様なので、せめて(3)のプロセスをスマートフォン側の4G/5G回線でも実行できるようにした方がいい。
USB共有の改善も必須
本製品には、USB 3.0ポートが搭載されており、Samba、FTP、DMS(メディアサーバー)機能を利用できるのだが、ファイル共有用のSambaのプロトコルが古い。
具体的にはSMB1.0となっているため、USBメモリやUSB SSDを接続し、Windows 11から共有フォルダーにアクセスしようとしても通常はエラーが発生する。現状のWindows 11ではSMB1.0は無効化されているため、「Windowsの機能の有効化または無効化」で「SMB1.0」を追加しないと共有フォルダーにアクセスできない。
これは非常に悩ましいというか、よろしくない。SMB1.0のままユーザーに使って欲しいなら、その旨をマニュアルなどで説明すべきだが(本製品には画面を使った丁寧なマニュアルが同梱されるので初心向けの配慮は感じられるが……)、そもそもなぜSMB1.0が標準で無効になっているのかをよく考える必要がある。
SMB1.0には脆弱性があり、かつてランサムウェアのWannaCryの感染経路としても悪用された経緯がある。Microsoftも公式に利用中止を呼び掛けており、利用は推奨されない。ユーザーにSMB1.0のインストールを強いるのは推奨できないため、早急に改善すべきだ。
▼Microsoftの告知
Stop using SMB1(Microsoft)
ハードウェア設計やパフォーマンスは優秀
このように、改善してほしいポイントがいくつかあるZTE Inazuma BE7200 Pro+だが、もちろん良くできていると、感心するポイントもある。
まずは、ハードウェアの設計だ。前述したように本製品には8コアのCPU(リリースでは「独自開発の8コア64スレッドNPUを搭載したハイエンドSoC」と記載されているが、おそらく64「スレッド」は64「ビット」あたりの誤記と思われる)が搭載されており、処理性能が高い。
それに合わせて、放熱対策がなされているのだが、ほぼ基盤と同サイズと言える巨大なヒートシンクが搭載されており、効率的に放熱できるように工夫されている。同社の表記によると、連続40000時間の連続稼働も可能となっているので、かなり熱によるパフォーマンス低下に配慮している。
有線10Gbps対応の製品では、こうした巨大なヒートシンクが採用されるのは珍しくないが、本製品は2.5Gbps対応なのに、ここまで熱対策を徹底している点は高く評価できる。
外付けアンテナの威力は大きい
気になるパフォーマンスだが、これも優秀だ。以下は、木造3階建ての筆者宅の1階に本製品を設置し、1~3階でiPerf3による速度を計測した結果だ。上下方向の通信に合わせて、アンテナを水平方向に広げた状態で計測している。
| 通信 | 1F | 2F | 3F入口 | 3F窓際 |
| 上り | 1870 | 832 | 729 | 363 |
| 下り | 1640 | 1100 | 899 | 482 |
※サーバー:MINISFORUM MS-01 Corei5-12600H/RAM64GB/1TB NVMeSSD/10Gbps SFP+/Proxmox 9.1 LXC(Ubuntu 24.04)
※クライアント:Core Ultra 5 226V/RAM16GB/512GB NVMeSSD/Intel BE201D2W/Windows11 24H2
※アクセスポイント:アイ・オー・データ機器 WN-7T94XR(APモード、10Gbps接続)
1階の近距離は、2.5Gbpsの有線LANでサーバーを接続できることから、上り1870Mbps、下り1640Mbpsときちんと1Gbpsオーバーの速度で通信できている。
圧巻は、2階、3階入り口の速度だ。2階は下りで1100Mbpsと床1枚隔てた環境でも1Gbps越えを実現できた。また、3階入り口、本製品の真上の位置では下り899Mbpsと、こちらも有線1Gbpsに迫る速度で通信できている。
最も遠い3階窓際は、距離も遠く、遮蔽物も多く、窓からの干渉もあるという過酷な場所だが下りで482Mbpsと高速だ。同地点での計測では、中継機を使ってようやく400Mbpsを超える製品もあるだけに、単体で482Mbpsは優秀と言っていい。
筆者としても外付けアンテナの製品を久しぶりに使用したが、やはりアンテナの向きを環境に合わせて適切に調整すればパフォーマンスも上がることを実感できた。この製品の最大の魅力は、このパフォーマンスに尽きるだろう。
改善を待ってから購入した方がいい
以上、ZTEの新型Wi-Fi 7ルーター「Inazuma BE7200 Pro+」を実際に使ってみたが、率直に言えば「もっとできるんじゃない?」という印象だ。
ハードウェアとしての完成度は高いし、外付けアンテナや高性能CPUのメリットも生きているが、まだやはり日本市場向けのチューニングが足りないし、コンシューマー向けの工夫も、もっとできそうに思える。
細かな点では、スマホアプリで設定変更後に設定を保存するための右上に表示されるチェックボタンが、iPhoneの上部のインジケーターギリギリでタップしにくいなどの不満も感じた。
まだ国内ユーザーが少なく、フィードバックの数が少ないのかもしれないが、事前にベータテストすれば、簡単に判明しそうな点(SMB1.0の件など)も対応が漏れているのが残念だ。買うのであれば、こうした点が改善されてから検討すべきだろう。
前回モデルから日本市場向けに改善しようと努力している点は評価したいが、もっと本腰を入れないと、市場での価値を得られないかもしれない。












