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イベントレポート

Linuxの開発は「今でも趣味」、Linus Torvalds氏講演


Linus Torvalds氏(左)とJim Zemlin氏(右)。講演は対談形式で行われた

 Linuxの技術カンファレンス「第1回Japan Linux Symposium」が21日、東京で開幕した。23日までの期間中には、東京・秋葉原の秋葉原コンベンションホールで各種の技術セッションが行われるほか、21日には東京・赤坂のANAインターコンチネンタルホテル東京で基調講演が行われ、Linux創始者のLinus Torvalds氏らが登壇した。

 Torvalds氏は、Linux FoundationエグゼクティブディレクターのJim Zemlin氏の質問に答える形で、Linuxの開発モデルや今後についての考えを語った。

 Torvalds氏が18年前にLinuxの開発を始めた際に、Linuxが現在のように広く利用されることを想定していたかという質問には「いいえ」とした上で、「システムは単に自分のために作ったもので、自分のコンピュータで使う以外の目的は無かった。それ以外のことはすべて、状況が変化したことで起こったことだ」と答えた。

 Linuxカーネルの開発作業について、Torvalds氏は「私は最小限の仕事だけをして、できるだけ開発者の間で作業を幅広く分散するようにしている。私がしているのは、主にコードを書くことではなく、コードを受け付ける作業。そしてその人たちと会話を持ち、すべてがまとまる場を提供している」と説明。Linuxは携帯電話からスーパーコンピュータまでに利用されるようになっているが、利害の調整はどのようにしているのかという質問には、「開発者がお互いに邪魔し合わないようにしており、滅多に大きな対立は発生しない。対立が多発するようであれば、開発プロセスが問題になっているということがわかるので、物事のやり方を変えていく。これはだいたい2〜3年に1回起こるが、この2年ほどはうまくいっている」と答えた。

 将来のイノベーションについてどのようなロードマップを提示しているかという質問には、「イノベーションは計画できることではないと思っている。5年後、10年後のテクノロジーがどうなるかは私にはわからないが、しかしLinuxはその新しいものに対して貢献するはず。イノベーションは予期しないところから起こってくる。私ではなく、誰かがそれをやることになるはずだ」とした。

 開発モデルとしてオープンソースを採用しているのは、「現実的に問題を解決するための手段であり、このやり方が他の多くの人と協力する素晴らしいやり方だと思っているからだ」として、哲学的な理由からではないと説明。Linuxのコミュニティは商業的な企業が近づきやすい環境になっていると思うとして、「コマーシャル対オープンソースという図式は考えたくもない。むしろ、オープンソースというのは1つの協力のあり方であり、コマーシャルな企業は新しい動機や課題、そして成功にとって重要な要素を提起してくれるものだ」とした。

 Torvalds氏は、Linuxの開発は18年前と変わらず「今でも趣味だ」と語る。Linuxはいまや航空管制や原子炉などのシステムにも採用されており、障害が発生すれば人命にも関わるといった役割の変化についてどう思うかという質問には、「Linuxがいろいろな用途に使われていることは誇りに思っているが、私はカーネルの開発者として、直接そういう用途に関与しているわけではない」とコメント。「また、開発は以前のように自由奔放にやっているわけではない。以前であれば、いったんすべてを破棄して、半年ぐらいかけて直せばいいといったこともできたが、今はそれはできない。そのために、我々は開発のプロセスを大きく変化させてきたし、これからも変化していくだろう。それが以前とは一番大きな違いだ」と述べた。

 講演の最後に、「この会場の中に、あるいはアジアの、世界のどこかにもう1人のLinus Torvaldsのような人がいるとして、その人にどのようなアドバイスをしたいか」という質問に対しては、「OSを手掛けるのはやめてください。競争は嫌です」と聴衆を笑わせた後、「成功するための計画を立てるのではなく、深く関心の持てるものを取り上げるべき。ベストを尽くすためには、10年間、毎日10時間頑張れるものを見つけること。他の人に役立つものであればなおいいが、そうでなくても自分が楽しければ必ず成功できる。自分もそうして18年間楽しんできた」と語り、講演を締めくくった。


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(三柳 英樹)

2009/10/22 06:00

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