インタビュー
Amazon担当者に聞く「Kindle Fire HDX」、LTEモデルの日本投入は検討中
(2013/10/17 13:08)
Amazon.co.jpは16日、タブレット端末「Kindle Fire」シリーズの第3世代機種となる「Kindle Fire HDX」と、プロセッサを高速化した「Kindle Fire HD」新モデルの予約受付を開始した。
Kindle Fire HDXは、7インチモデルでは1920×1200ドット、8.9インチモデルでは2560×1600ドットの高解像度ディスプレイを採用し、プロセッサにも高速なSnapdragon 800(2.2GHzクアッドコア)を搭載。一方で、前モデルよりも薄型軽量化されており、価格も7インチモデルで2万4800円、8.9インチモデルで3万9800円(いずれも16GBモデル)と安価に抑えられている。
Amazonが日本でKindleのサービスを開始してから約1年が経ち、電子書籍端末「Kindle Paperwhite」の新モデルに続き、タブレット端末のKindle Fireシリーズにも新モデルが投入された。今回の発表に合わせて来日した、Amazon.comでKindleデバイスのプリンシパルプロダクトマネージャーを務めるHerve Letourneur氏と、アマゾンジャパン株式会社Kindleデバイス&アクセサリー事業部事業部長の小河内亮氏に話を伺った。
「話題のものがどんどん売れる」電子書籍の速効性
小河内氏:日本でKindleを発売して約1年になりますが、Kindle Paperwhiteはたいへん好評で、日本でもナンバーワンになっている。タブレット(Kindle Fire)も多くのお客様に好評で楽しんでいただいている。日本のマーケットのポテンシャルと大きさに喜んでいます。
(Amazon.com CEOの)ジェフ・ベゾスもよく言ってることなのですが、Kindleのビジネスは、お客様にデバイスを売ったときに儲けるのではなくて、デバイスを使っていただいたときに収益を上げるものです。デバイスだけではなく、コンテンツやサービスも全部Amazonで提供しており、これら全体を1つのKindleというサービスとして提供している、そこに特徴があります。
コンテンツの部分も、この1年で大きく伸びました。たとえば電子書籍のタイトル数では、スタート時の約5万タイトルから約14万タイトルになりました。最近ですと「半沢直樹」の原作本が、特にドラマ放映中には売上が伸びましたが、電子書籍ならではの速効性を示す例だと思います。電子書籍であれば、購入すればすぐに読め始められますし、話題性のあるものがどんどん売れていくという状況は、やはりすごく面白いと思っています。
MP3の方も曲数がかなり増えており、こちらも「半沢直樹」の例と似ていますが、映画「風立ちぬ」関連の曲などが売上を伸ばしました。アプリの方も、1年前からはセレクションが倍くらいになっていて、パズドラやコロプラの「魔法使いと黒猫のウィズ」などを、多くのお客様に楽しんでいただいています。
高性能ハードウェアとコンテンツを楽しむためのソフトウェアにこだわって開発
Letourneur氏:今回発表した端末ですが、まず7インチモデルは薄く、20%軽くなりました。デザインもまったく新しいものになり、電源ボタンや音量ボタンなどは背面に配置されています。手に持ったときの感触も良くしました。また、背面には前モデルでも好評だったドルビーオーディオ対応のステレオスピーカーも付いており、音楽もとてもよい音質で楽しめます。
開発に特に手をかけたのが高解像度のHDXディスプレイで、これが大きな特徴となっています。7インチモデルでは323ppi、ピクセルが目には見えないレベルです。さらに色彩にもこだわっており、100%のsRGBが表現できます。
もう1つの特徴は、ダイナミックイメージコントラストと呼んでいる機能で、屋外でもコンテンツを見やすくするもので。周辺光に応じてコントラストを変えるのですが、全体のコントラストを上げるのではなく、画面の暗い部分は明るく、明るい部分はそのままといったように、周辺光に応じてコンテンツが見やすくなるよう、すべてのピクセルを再計算して表示しています。
次に重点を置いたのはパフォーマンスで、2.2GHzクアッドコアプロセッサを搭載しています。これにより、処理性能はCPUでは3倍、グラフィックエンジンでは4倍になり、特にゲームのようなアプリで性能を実感していただけると思います。これだけのパフォーマンスを持った7インチタブレットは他にないでしょう。
8.9インチモデルも、現在のモデルと手に持って比べていただくと、とても薄く、軽くなっているのがわかると思います。7インチモデルもそうですが、周囲をエッジ状にしてさらに薄く感じられるデザインになっており、手に持った時の感触もいいと思います。
この軽さを実現するために、タッチパネル部分ではタッチレイヤーとカバーガラスを一体化しました。また、本体には軽くて丈夫なマグネシウムユニボティを採用しています。ただし、マグネシウムは無線との相性が良くないため、それを解決するために無線周辺には別の素材を使うといった工夫を施して、無線LANもつながりやすくしています。8.9インチモデルでは44%も軽くなりましたが、バッテリー持続時間は減っていません。
7インチモデルのバッテリー持続時間は11時間ですが、読書だけならさらに長くなります。読書時には自動的に省電力モードに入るようになっており、専用のメモリに必要なデータを保存することで、最長17時間連続で読書が楽しめます。
ユーザーインターフェイスはコンテンツを前面に出す形になっていますが、アプリを一覧できるグリッドビューも用意されており、上下のスワイプで簡単に切り替えられます。さらに右端からのスワイプで、すぐにコンテンツを切り替えられる「クイックスイッチ」も搭載しました。コンテンツに没頭できるよう、メール通知などの設定をコンテンツの種類ごとに変えられる「おやすみモード」も搭載しています。
ブラウザーやメールなどのアプリケーションを強化するとともに、仕事でも使えるようになっています。端末のユーザー領域の暗号化や、VPNをサポートし、各ベンダーのモバイルデバイス管理(MDM)ソリューションも対応します。
新しい「ORIGAMIカバー」もとてもこだわって開発したもので、折り曲げれば縦向きでも横向きでもスタンドになります。8.9インチモデルには背面カメラも付いていますが、カバーをスライドしてレンズを出すと、自動的にカメラアプリが立ち上がるようになっています。
LTEモデルの販売については検討中
――Kindle Fireに企業向け機能というのは意外な感じもしますが、要望が多かったのでしょうか。
小河内氏:米国ではとても多いですね。暗号化やMDMに対応してほしいという声が多くありました。この値段でこの処理能力であればとても有効に使えると思いますし、オフィス向けアプリの対応も進んでいます。
――競合製品と比べた場合のセールスポイントは、やはりコストパフォーマンスになるのでしょうか。
小河内氏:コストパフォーマンスと言うと一言になってしまいますが、コスト、つまり価格についてもポイントですし、パフォーマンスについてもポイントです。ディスプレイもプロセッサもタブレットの中では最高性能です。また、Kindleはデバイスで収益を上げるモデルではないので、価格も非常にお求めやすくなっています。
――一方で、AmazonのコンテンツやサービスはiOSやAndroidなどのデバイスでも利用できるわけですが、その中でKindleの位置付けはどうなるのですか。リファレンスモデルのような存在なのでしょうか。
小河内氏:我々は、お客様には選択肢を狭めない形でコンテンツやサービスを提供していますので、もちろんiOSでもAndroidでも利用していただけます。その中で、Kindleは「コンテンツを楽しむために一番良いデバイス」という位置付けで開発しています。「コンテンツをいかに楽しんでもらうか」を主眼に開発したといってもいいでしょう。
Letourneur氏:開発側から言えば、ハードウェアからコンテンツまで、すべてをコントロールすることで実現できる機能があります。たとえば、コンテンツによって通知の設定が変わる「おやすみモード」や、どのアプリからでも別のコンテンツにすぐに切り替えられる「クイックスイッチ」などがその一例です。
――無線LANについて。HDXに搭載されたプロセッサはIEEE 802.11acにも対応すると思いましたが、11acへの対応は?
Letourneur氏:検討はしましたが、現状ではアクセスポイントがまだそれほど普及していないため、今回は見送りました。しかし、搭載しているWi-Fiはデュアルバンド、デュアルアンテナMIMO、HT40対応で、現状でもタブレットの中ではとても速いものです。
――日本でLTEモデルの販売は?
小河内氏:今回は販売は発表していません。いろいろ検討はしていますが、日本ではポケットルーターのような各種のWi-Fiデバイスが普及していますし、まずはお求めやすいWi-Fiモデルを販売します。今後については検討中です。
――米国ではVerizonやAT&TのSIMをバンドルしての販売ですが、日本でもそうなるのでしょうか? SIMフリーモデルの販売の可能性は?
小河内氏:今後検討していくことですが、日本の市場に合わせた形で売るのが一番いいと我々は思っています。いずれにしても、将来的にどうするかは検討中です。