ニュース
大洗町にかかわる人々の力を結集、聖地巡礼アプリの「ガルパン」特別編、ふるさと納税者向けに12月3日より提供開始
“デジタルのアプリ”と“アナログの町”を組み合わせたら何ができるか実感してほしい――
2016年12月2日 19:23
茨城県大洗町のふるさと納税者向けの返礼品として、GPS/AR/QRコードを組み合わせたスマートフォン用の街中オリエンテーリングゲーム「ガールズ&パンツァーうぉーく!(以下、ガルパンうぉーく!)」の提供が12月3日にスタートする。アニメ「ガールズ&パンツァー」のキャラクターとアプリ上でコミュニケーションを取り、町内に70体以上設置された等身大パネルに付いたQRコードを読み込みながらミッションをクリアしていくもので、ソニー企業株式会社が提供するアプリ「舞台めぐり~アニメ聖地巡礼アプリ~」上で楽しめる特別編ゲームとして提供する。当初、10月下旬~11月上旬の提供開始を予定していたが、アプリの内容・機能の拡充を図るため延期されていた。
ふるさと納税の返礼品として提供されるのは、主人公・西住みほが所属する「あんこうチーム」のメンバーをパートナーにしたメインストーリー。初級(西住みほルート)・中級(武部沙織ルート、秋山優花里ルート、五十鈴華ルート)・上級(冷泉麻子ルート)が設定された5つのルートから選択し、A・B・C・Dの4エリアに存在する各ミッションをクリアしていく。1ルートのコンプリートは約3時間を想定。特定キャラクターのルートをクリアするなどの条件を満たすと“トロフィー”を入手することができる。5ルートすべてをクリアしたプレーヤーは、大洗リゾートアウトレット内の「ガルパンギャラリー」に行くと先着3000名に認定証が贈られる。トロフィーの一部はこの認定証を入手する際に提示することになる。
ふるさと納税者以外にも、舞台めぐりアプリの一般ユーザーが楽しめる体験版として、サブストーリー「島田愛里寿のはじめての大洗」を用意。町内各所に設置された“愛里寿パネル”を探すミッションとなっており、ガルパンうぉーく!がどういったものか体験できる。
ふるさと納税者への提供に引き続き、ガルパンうぉーく!を体験できるチケットをApp StoreとGoogle Playで年明けより販売する予定であることも新たに発表された。これにより、ふるさと納税者以外の一般ユーザーも楽しむことができるとしている。
なお、一般ユーザー向けサブストーリーの暫定版は、すでに11月13日に行われた大洗町の地元イベント「大洗あんこう祭」において公開されていたが、当日は大量のアクセスにより正常に起動できないトラブルがあるほどの人気ぶりだった。
初級コース「西住みほルート」に挑戦
ガルパンうぉーく!の提供開始を前に11月30日、大洗町で記者発表会を実施。ガルパンうぉーく!を実際に現地で体験することができた。
初級コースの「西住みほルート」では、プレイヤーは大洗女子学園の生徒として転校してきたところから始まる。あんこうチームに加わり、大学選抜チームと世界に1つだけという「スペシャルゴールデンボコ」をかけた争奪戦ゲームを繰り広げることになる。
筆者は始めは徒歩で移動していたが、途中でレンタルサイクルを用意。20分の休憩を挟んで3時間程度でクリアできた。シナリオの詳細については実際に体験し、確認していただきたい。
ものを買うだけではない“第2の故郷作り”へ
従来より展開している大洗町のふるさと納税「大好きです大洗寄附金」は、2015年に大きなリニューアルを実施。クレジットカード決済の対応や、株式会社JTB西日本のポイントサイト「ふるぽ」との連携を行うとともに、返礼品を26種類から230種類へ拡充。2015年度は約2億円の寄付金が集まったという。
しかし、各自治体で行われる返礼品に関して、換金性の高い商品券やポイント、転売可能な家電製品などがラインアップされることに関して、メディアでも批判的な意見が見られるようになり、総務省からも自粛するよう指導が入ったそうだ。
そのような状況の中、大洗町では今年、ガルパンとコラボした「行ける!ふるさと納税」をラインアップし、ガルパンのキャラクターグッズ、ガルパンうぉーく!のゲームパスポート、同町で使える入浴・食事券などを組み合わせた納税パックを用意した(グッズの詳細については「茨城県大洗町が「行ける!ふるさと納税」開始、AR聖地巡礼アプリの「ガルパン」特別編などが返礼品」参照)。
大洗町まちづくり推進課課長の小川悟氏は、行ける!ふるさと納税について「単にものを買うだけでなく、納税者に実際に訪れてもらい、お金を落としてもらえるような第2の故郷作りを目指す」ものだと説明する。例えば、ガルパンうぉーく!に関しては宿泊施設とのタイアップなど、工夫を凝らしているそうだ。
ふるさと納税にガルパンを組み合わせたのはファンの声が大きい。大洗町に協力したいというガルパンファンから、ふるさと納税をはじめとした寄付がもともと行われていたことが大きく影響している。なお、9月15日に受付を開始してから現在までの申し込み数は約600件に上るという。ガルパンうぉーく!は、キャラクターが各スポットを解説する役目も持っており、同町ではガルパンファンだけでなく、一般のユーザーにも楽しんでもらいたいとしている。
一からデザインしたグッズや、現地のサービスを体感できるチケット
直売物産所「大洗まいわい市場」を2009年から営業しているOaraiクリエイティブマネジメント株式会社は、返礼品、グッズを担当。温泉浴券/食事券として使えるふるさと納税者限定のチケット、クリアファイル、タペストリー、缶バッジ、ポロシャツなどをそろえている。
代表の常磐良彦氏が特におすすめするのは11種類セットのオリジナル缶バッジで、大洗町の商工会により一個一個手作りされたものだという。同町では各商店で買い物客・利用客に缶バッジをプレゼントする取り組みが行われているが、これは東日本大震災復興支援「がんばっぺ!大洗プロジェクト」から始まったものだという。現在は300種類以上をラインアップ。ガルパンのライセンシーを取得して、キャラクターのイラスト入り缶バッジを各商店で配布している。
「一見、既製品と同じものがあるように思われるかもしれないが、実際は一からデザインし、商工会とタイアップするなど自分たちの想いを着実に商品に込めた」という。
「舞台めぐり」はガルパンからはじまった――ノリと勢いでできた聖地巡礼アプリ
ガルパンうぉーく!の開発に携わるソニー企業事業開発室コンテンツツーリズム課の安彦剛志氏は、同アプリが画面の中に閉じた遊びではなく、「町を使った遊び」がコンセプトになると主張する。GPS/AR/QRコードを活用して「スマホを使った、町で実施するオリエンテーリング」を目指しているという。
「舞台めぐり」アプリはもともと2013年3月に「ガルパン舞台めぐり」としてリリースされたもので、“ガルパンを楽しんでもらうための専用アプリ”として生まれた。サービス展開にあたり、各地域との連携が不可欠だが、安彦氏はこれらの取り組みが“1つのテーマパークを作ることに近い”と形容する。
なお、ガルパン専用のアプリとしてリリースした経緯だが、2012年に聖地巡礼プロジェクトを立ち上げた際、バンダイビジュアルから大洗を舞台にしたアニメとの連携企画が持ち込まれたことが事の発端になったそうだ。「複数の作品の候補が挙がっており、当時は某秩父のアニメが話題になっていたが、バンダイビジュアルから話をいただいた経緯からこの作品にかけてみようと思った」という。「一番初めに“女子高生が戦車に乗る”と聞いたときは『これ大丈夫?』という思いもあったが、作品のPVを見た時点で可能性があり、面白い作品だと思った。大洗町とともにやるということで、一緒にのってみようと比較的気軽な気持ちで組ませていただいた」と述べ、アプリ開発は“ノリと勢い”で作ったと暴露してくれた。
常磐氏も、安彦氏のノリの良さと、協力体制を求めるのが大変上手い点を評価。「行政・商工会・商工会青年部・商工業者・民宿関係・観光業界の有志が集まったボランティア組織『こそこそ作戦本部』があるが、いつの間にかそこにも入り込んでいた」と会場の笑いを誘った。
ガルパンはアニメ放映から4年が経過していることもあり、商店街の中にも浸透しているそうだ。そのため、「初めて会う人に企画を持ち込んでも快く許可を得られるような協力体制になっている」という。
安彦氏は「デジタルのアプリケーションとアナログの町を組み合わせたらどんなことができるのか実感してもらいたい」とアプリ体験への期待を語った。