「recommuni」改め「OTOTOY」、同一楽曲の再ダウンロード20円
株式会社レコミュニは20日、音楽配信コミュニティサイト「recommuni」の5周年記念イベントを東京・恵比寿で開催した。イベントの前半は、新サービスに関する発表会が行われ、名称変更や新機能の追加、低価格の再ダウンロードサービスなどを説明した。
●「音」と「TOY」から命名、運営からの楽曲プレゼントも
レコミュニの竹中直純代表取締役 |
「recommuni」は、2004年10月にサービスを開始した会員制の音楽配信サイト。当初は既存会員からの招待で利用登録できるSNSのような入会方法だったが、現在は登録申請を行えば事務局から招待メールが届く。
入会費や月額利用料は無料。サイトでは、音楽レーベルが提供した楽曲や、ユーザーがアップロードした楽曲をダウンロード購入できる。ファイル形式はMP3とWAVを用意。価格は1曲につき150円から。
ユーザーは、通常の音楽CDからリッピングした楽曲や自作曲など、著作権のある楽曲から著作権フリーの楽曲まで自由にアップロードできる。著作権のある楽曲については、運営事務局が権利処理を代行。権利処理が終了しない限りは、アップロードした楽曲が公開されないようになっている。加えてサイトでは、日記や友人登録といったSNS機能も用意する。
今回、サイト名称を「OTOTOY(オトトイ)」に変更した。レコミュニの竹中直純代表取締役は、「『recommuni』は発音しにくいし、欧文表記は綴りが覚えてもらえない。それに、もはや『レコード+コミュニティ』という時代ではなく、用途を限定したSNSでスケールメリットを追い求めるには時期が遅すぎる」と説明。新名称は「音」と「TOY」から付けた。「問い」もかかっているという。なお、社名は従来のままだ。
新機能としては、任意の楽曲やアルバムを選択できる「イイネ!」ボタンを追加した。「イイネ!」ボタンをクリックした全ユーザーの中から、1日につき1人に当該楽曲をプレゼントする。また、アルバムの場合は毎週1人にアルバム全曲をプレゼントする。「イイネ!」ボタンは1日につき何曲でも選択できる。竹中氏は、「ユーザー同士で楽曲をプレゼントできる機能が従来からあるが、利用者が少ないため、その機能を利用した新サービスを追加した」と説明した。
OTOTOYのトップページ | 楽曲ページにある「イイネ!」ボタン |
●楽曲データ消えても再ダウンロードが20円で可能に
今回、ユーザーが一度ダウンロードした楽曲を再度ダウンロードする際に、定価よりも安い価格で購入できるサービス「ライフタイム契約」を開始した。HDDがクラッシュしたときなどの救済処置として提供するという。
ユーザーがダウンロードした楽曲は履歴データに残っており、同一楽曲・同一フォーマットであれば20円で再ダウンロードできる。また、同一楽曲で異なるフォーマットのファイルは、定められた手数料を支払えば、新しいフォーマットでダウンロード可能だ。
例えば、同じ楽曲の高音質版を購入し直す場合、先に買ったファイルの価格(150円)と新しいファイルの価格(200円)の差額(50円)に、再ダウンロード料金の20円をプラスすることでダウンロードできるため、70円を支払うことになる。また、新たにダウンロードするファイルの価格が旧ファイルより安い場合は20円だけ支払う。
竹中氏は「本音では0円にしたかった」と述べたが、著作権管理会社に支払う料金(JASRACの場合はダウンロード7.7円)や音楽レーベルの収益、サービス運営コストなどを考えて20円に設定したという。「OTOTOY」では現在、500レーベルが参加しているが、そのうちの約1割が「ライフタイム契約」の考えに賛同し、同サービスに対応している。
「ライフタイム契約」の対応楽曲は、20日から順次データ投入していくという。また、現在対応していない楽曲を購入した場合でも、今後、レーベルの許諾が得られた場合は、「ライフタイム契約」扱いの楽曲になる。「いずれはすべてのレーベルに賛同してほしい」と竹中氏は話す。なお、将来的にレーベルが「ライフタイム契約」を変更、拒否した場合は、対応楽曲でなくなる可能性もあるという。
ライフタイム契約に賛同したレーベル | 再ダウンロード20円をOTOTOYを利用する理由に |
●今後はCD以上の体験が必要、CD超える音質の「HQD」を推進
竹中氏は、「recommuni」がサービスを開始した当時を振り返り、「コピーコントロールしない音楽配信は鼻で笑われた。しかし、現在はiTunes Plusなどでそれが当たり前になりつつある」と話す。同一楽曲の低価格再ダウンロードも、今後の音楽配信のスタンダードにしたいと意気込む。
また、現在の音楽配信は、CDに比べて“持っている感”が少なく、消えれば再び同じ価格で購入するという仕組みが、“CD派”を遠ざけている理由の1つだと指摘する。「音楽データを“持っている”感じをサービス開始当初から模索していた。『OTOTOY』では、データが無くなっても、再ダウンロードでいつでも聞き直せる。これにより、CDに匹敵する体験を構築していきたい」とした。
さらに、「音楽配信は物がなく、CDには劣るというイメージがある。今後はCD以上の体験を提供していく必要がある」とし、ジャケットや歌詞データだけでなく、さまざまな付随データの提供も検討する。これにより、ユーザー満足度を高めていく。“CD以上の体験”という点では、同社が推進している「HQD(ハイクオリティディストリビューション)」の楽曲配信を挙げる。
「HQD」は、通常のCDのビットレート(16bit)とサンプリングレート(44.1kHz)を上回る、24bit/44.1kHz以上のWAVファイルの名称だ。このクオリティは、「ミックスダウンしたままのマスター音源と同等の音質を実現している」という。「OTOTOY」では、2009年8月にクラムボンの新譜を「HQD」で独占配信。今後も「HQD」コンテンツを順次配信していく予定だ。
なお、「HQD」で配信された楽曲は、最新のiTunesやWindows Media Playerで再生できるほか、「iPhone」や「iPod」シリーズの最新モデルでも「非公式だが再生可能」としている。さらに、パイオニアの最新のiPod用ドッグにも対応しているとのこと。竹中氏は、「ハードを提供していない『OTOTOY』がこのようなサービスを進めるにはプラットフォームがカギとなる。ハードやデバイスがどうなるのかを見据えて提供していきたい」と述べた。
イベント後半はアーティストライブ | 今後「HQD」で楽曲配信するマイア・バルーが歌を披露 |
関連情報
(野津 誠)
2009/10/20 20:04
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