米連邦控訴審、FCCのネット規制権限を否定、Comcastが勝訴


 米国コロンビア地区連邦控訴審は6日、米連邦通信委員会(FCC)のインターネットを規制する権限を否定する判決を下した。

 勝訴した米ISP大手のComcastや他のISPは、一時的にせよ、特定のインターネットサービス(例えば自社サービスなど)を優遇するといった措置をとることが法的に可能になる。そのため、インターネットの中立性の問題に大きく影響する判決となりそうだ。

 この裁判は、FCCにインターネットを規制する権限があるのかどうかを争っていたものだ。FCCは2008年、ComcastがBitTorrentのトラフィックを一部制限し、「差別」していたことが、「インターネットの中立性」に反するとして、これを規制する原則を打ち出していた。

 連邦控訴審の判決は、裁判長Sentelle氏、巡回区判事Tatel氏、上級巡回区判事Randolph氏の3名が満場一致で下したものだ。

 FCCは、米議会から通信技術に関連した権限を付与されている。これには電話、ケーブルテレビ、携帯電話関連サービスなどが含まれている。問題は、FCCにインターネットを規制する権限が与えられているかどうかにかかっていた。これに対してFCCは、インターネット技術は通信技術の一部であり、法で定められている「補所的な権限」に含まれていると主張していた。

 これに対して、3名の判事を代表して意見書を記したTatel判事は、「この補助的権限を行使することが許されるのは、法によって付与された責任を効果的に発揮できる合理的な付随性がある場合のみである」との見解を示し、FCCの場合はこれに当たらないとの結論を下した。

 FCCは、例えばVoIP技術によって電話料金に影響を与えること、YouTubeやHuluなどのインターネット動画サービスが、ケーブルテレビ会社の料金設定に影響を与えることなどの実例や、これまでのさまざまな判例を用いて反論を試みたが、いずれも論拠として不十分であるとされた。

 今回の判決を受けてFCCのスポークスパーソンであるJen Howard氏は、「今日の判決は、オープンなインターネットを保持するための委員会のこれまでの試みを無効にした。しかし裁判所は、自由でオープンなインターネット保持の重要性に反対したわけでも、この重要な結論を導き出すための他の方法に道を閉ざしたわけでもない」とコメントしている。

 一方、勝訴したComcastもコメントを発表している。「我々の主要な目標は、自らの汚名を晴らすことだった。我々はいつも、消費者が望む品質の高いオープンなインターネット体験を提供することに力を注いできた。Comcastは、FCCのオープンなインターネット原則に今後もコミットし、FCCがブロードバンド普及率を高め、オープンで力強いインターネットを保持するための最善な方法を定めるときには、ともに建設的なやり方で働き続けたいと考えている」としている。


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(青木 大我 taiga@scientist.com)

2010/4/7 12:29