グーグル、中小企業をITで支援する「みんなのビジネスオンライン」開始


 グーグル株式会社は9月13日、中小企業支援を目的としたオンラインサービス「みんなのビジネスオンライン」を発表、同日提供を開始した。サービスは1年間無料で利用でき、1年経過後は、月額1470円で利用できる。

 サービス提供には、KDDI株式会社および株式会社KDDIウェブコミュニケーションズがパートナーとして参画。「みんなのビジネスオンライン」では、KDDIウェブコミュニケーションが提供するホームページ作成支援サービス「Jimdo(ジムドゥー)」が採用されている。

 中小企業基盤整備機構および特定非営利法人 ITコーディネータ協会が連携団体として参画し、全国でセミナー開催などを支援することで、「みんなのビジネスオンライン」の活用を促進。1年間で15万社の利用を目指す。

写真左から、KDDI株式会社 代表取締役社長 田中孝司氏、先行事例として「みんなのビジネスオンライン」でのホームページ制作に取り組んだ神津島村商工会 土屋良顕(よしあき)氏と関庄商店 代表 関 亮彦(かつひこ)氏、独立行政法人 中小企業基盤整備機構 理事長 前田正博氏、グーグル株式会社 代表取締役社長 有馬 誠氏

 

簡単&1年間無料で始められるホームページ作成支援サービス

 「みんなのビジネスオンライン」は、業種別に最適化された中小企業向けのウェブサイトを無料で簡単に作成できるサービス。テンプレートは業種別に用意されており、14業種、約100種類のテンプレートを用意。業種に沿ったテンプレートを用意することで、テンプレートのテキストを書き換えるだけで企業サイトが開設できる。また、独自ドメイン(.jp)も無料で取得できる。

 編集画面は、実際にサイトで表示されるウェブページと同じで、タイトルや本文などをクリックして編集するWYSIWYGインターフェイスのため、サイト作成後の更新や管理も手軽にできるという。アクセス解析も標準でGoogle Analyticsに対応しており、ウェブサイトのテンプレートができた時点から、自動的にAnalyticsでの解析もスタートするため、手動での設定は不要だ。

 携帯電話向けのサイトも自動生成する機能をもつため、携帯電話向けのサイトを別途メンテナンスする必要もない。

 Eコマース機能も装備。商品の説明と画像、価格を設定するだけで、簡単に商品を販売することができる。販売できる商品数は15個まで。決済サービスも合わせて用意され、Paypalでの決済に対応する。

 SEOについては、Google検索結果で特別な扱いはないが、標準でSEO機能を装備しており、設定でSEO機能をオンにすることで、SEOでの最適化を自動で行う。

 なお、.jpの独自ドメインが無料で取得可能だが、すでにホームページを開設していて「みんなのビジネスオンライン」にドメインを持ち込んで移行したいといった場合には、メールによるサポートで対応するという。

 ITに詳しくない企業や事業主の利用を促進するため、全国でセミナー開催を予定するほか、電話とメールによるサポート窓口も設置する。

 利用に特別な制限はなく、中小企業や個人事業主であればだれでも利用可能だが、海外からの利用や複数登録を防ぐため、登録時に携帯電話での認証を採用している。個人用途の利用を排除する仕組みはないが、ホームページのテンプレートが業種別に特化されているため、個人用途での利用はあまりないだろうと見ている。

中小企業向けウェブサイト作成ツールを1年間無料で提供1年間で15万社の利用を目指す
14業種84テンプレートを用意Google Analyticsを標準搭載する

 

ITで日本経済を支える中小企業を元気に

グーグル株式会社 代表取締役社長 有馬 誠氏

 グーグル株式会社 代表取締役社長 有馬 誠氏は発表会で、「情報を整理して提供するのがグーグルの使命。最初はネット上にある情報を、必要な時に必要な人が利用できるように提供するというところからスタート。その後、書籍をスキャンしてのせる、町や風景の画像がないので専用の車を走らせてストリートビューをグーグルマップで提供するなど、ネット上にのっていない情報をデジタル化して提供するというサービスに取り組んできた。多くの情報が得られるほど、人々のナレッジ・知恵は良いものになるだろうという信念でサービスを提供させていただいている」とグーグルの基本姿勢を紹介。

 続いて、日本はブロードバンドのインフラでは世界一だが、インターネットの利活用では世界で16位に甘んじているというデータを紹介。さらに、日本では99.7%が中小企業だが、サイトを持つ中小企業は24%に過ぎず、ネットで情報を提供していないことによる機会損失は非常に大きいのではないかとして「インフラはあるわけだから、まだまだ日本にはネットを活用する余地があるということ」と指摘した。

 愛知の鋳造機械加工メーカーの中小企業が、これまでB2B事業のみだったが、技術を活かして鍋を製造し、サイトを作成してアピールしたところ、口コミから広まりメディアで紹介されるまでに有名になり、その鍋は現在注文から14カ月待ちになっているという例を挙げ、「サイトを持つことでビジネスチャンスが広がる。僭越ながら、日本の中小企業を元気にしたいと思っている」と述べ、新サービス提供の意気込みを述べた。

ICT基盤は世界一だが、利活用は16位ウェブサイト利用企業は24%に止まる
ウェブサイト提供を通じて、中小企業を支援「みんなのビジネスオンライン」協力企業の連携体制

 

「日本の企業ドメイン取得は米国の1/10」KDDI田中社長

KDDI株式会社 代表取締役社長 田中孝司氏

 KDDI株式会社 代表取締役社長 田中孝司氏は、「日本の従業員30名以下の企業は91%であり、KDDIの企業顧客のうち30名以下の企業は80%」という数字を挙げ、「中小企業は日本経済の活力であり、KDDIのたいせつなお客様」だとして、「われわれとしても、中小企業をなんとかサポートしていきたいという気持ちがあった」とコメント。

 日本の企業ドメイン取得数は世界的に見て圧倒的に少なく、ドイツは日本の2.8倍、アメリカは10倍の企業ドメインを取得しているという数字を挙げ、「ITを活用することで、もっと元気になれるんじゃないか」とした。グーグルが「みんなのビジネスオンライン」の肝となるホームページ作成支援サービスのプラットフォームとして「Jimdo」に着目。「じゃあ一緒にやろうよということで、ビジョンが一致した」と協業の経緯を語った。

 田中氏は「KDDIグループには、2つの中小企業向け事業を手掛ける子会社がある。ひとつは『Jimdo』を提供するKDDIウェブコミュニケーションズで、もうひとつが『まとめてオフィス』という、オフィスIT化支援サービスを提供するKDDIまとめてオフィス株式会社」と紹介。まとめてオフィスは、「みんなのビジネスオンライン」サービス運営に直接的に関わるわけではないが、利用企業を支援していくという。

日本の企業ドメイン取得数は米国の1/10KDDIグループでは、KDDIウェブコミュニケーションズとKDDIまとめてオフィス株式会社がプロジェクトに参画する

「公民の中小企業支援のモデルに」中小企業基盤整備機構 前田理事長

独立行政法人 中小企業基盤整備機構 理事長 前田正博氏

 独立行政法人 中小企業基盤整備機構 理事長 前田正博氏は、「中小企業基盤整備機構では、東日本大震災の対応で、現在は仮設の店舗を多く作って無料で貸し出すという支援を行っているが、通常は、中小企業にかかわることは、金融を除くすべてを扱っており、経営や技術のアドバイスをはじめ、専門家の派遣、販路拡大、工業用地の準備、海外進出などさまざまな支援を行っている」と機構の取り組みを紹介。

 そのひとつとして、中小企業にとって販路開拓や新商品開発は簡単ではないため、「地域活性化パートナー制度」という、大企業が中小企業をサポートする取り組みを行っており、グーグルはそのメンバーとして、販路の開拓や新事業の開拓にこれまでに大きな貢献をしてきていると説明。

 前田氏自身も以前はIT企業にいたが、「現状は中小企業にとって、ITが活用されているとはいえない。IT化はしたもののまったく利益が上がらないという声がよく聞かれた。IT化を支援する企業も、税務署の申告書が早く書けますといった売り込みが多かった」と述べ、これまで中小企業のIT化があまりうまくいっていなかったと指摘。

 その上で、「経営に役立つ意思決定支援や、ウェブを使って海外への販路も迅速に開拓していくなど、IT利活用は、中小企業にとってたいへん意義あるものだと考えている。東日本大震災の被災地にある中小企業の立場からしても、被災地は農林水産品など地域の特産物が大変多いところだ。海外も含めて一気に販路を開拓するためにも、今回のサービスにはおおいに期待したい」とみんなのビジネスオンライン提供に期待を寄せる。

 「民間企業と公的セクターが協力して提供する、公民の中小企業支援のモデルになるのではないかと思っている。円滑な連携のもとに日本の中小企業がグローバルな競争を乗り越えて発展する一助となることを祈っている。」(前田氏)

商工会で先行利用に取り組んだ神津島の関庄商店のサイト
http://www.kozu-sekisho.jp/
発表会にも出席した関庄商店の関氏の自宅でのサイト制作の模様をはじめ、神津島でサイト作成に取り組んだ商店や企業の声が動画で紹介された


関連情報

(工藤 ひろえ)

2011/9/13 17:16