ICT活用で持続的な成長の実現を、総務省が2010年版「情報通信白書」


2010年版「情報通信白書」の表紙

 総務省は6日、2010年版の「情報通信に関する現状報告」(情報通信白書)を公表した。6日に全文と概要をサイトに掲載、7日に冊子を全国の書店などで発売するとともに、官公庁刊行物では初めて電子書籍としても近日中に発売する予定。

 2010年版情報通信白書の特集テーマは「ICTの利活用による持続的な成長の実現」。労働力人口減少下での持続的な経済成長や、将来不安の解消といった日本の抱える課題に対して、情報通信技術(ICT)の利活用がもたらす効果を分析している。

 日本の現状については、世界各国と比較してブロードバンド基盤整備は進んだものの、サービスの普及や利活用の面で遅れており、特に電子行政の取り組みの遅れが目立つと指摘。一方、公的サービス分野におけるユーザーのICT利用意向は高く、ブロードバンドサービスの普及が進むことにより名目GDPを1.5%(約7.2兆円)押し上げる効果があると試算している。

 人口減少と高齢化による地域コミュニティの希薄化に対しては、ソーシャルメディアや地域SNSなどのICTを活用した「絆」の再生が期待できるとして、高齢者のインターネット利用の推進を重要な課題として指摘。労働人口の減少に対しては、テレワークの導入を進めることで約150万人の新規労働力人口増が可能だと分析している。

 現在の情報通信産業の市場規模は全産業の約1割(96.5兆円)を占め、不況下においても一貫して日本経済の成長に寄与している。一方、主要10カ国の国際比較では、過去10年間における日本の情報通信資本の成長は最低水準となっており、情報化投資の加速とICT利活用の促進が今後の成長のために必要だと指摘している。

 また、日本のイノベーション環境については、「製品・サービスの洗練度」が高い一方で、「持続的変化対応力」「ビジネス基盤成熟志向」「科学技術ビジネス対応力」が米国などと比べて低く、これらを高めることが必要だとしている。


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(三柳 英樹)

2010/7/7 06:00