NASAやJAXAのデータを利用したアプリを開発、ハッカソンイベント近く開催


 米国航空宇宙局(NASA)や日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)などが公開している宇宙・地球環境・衛星関連のデータを利用してアプリ開発などを行う、世界規模のハッカソンイベント「International Space Apps Challenge(ISAC)」が4月21日・22日に開催される。日本でも東京大学・駒場リサーチキャンパスで同日、「Space Apps Challenge Tokyo(ISAC Tokyo)」が開催予定だ。これに先立って4月10日、アイデアソンと呼ばれるプレ勉強会が東京・渋谷のデンソーITラボラトリーで開催された。

「International Space Apps Challenge」のウェブサイト

 ハッカソン(ハックとマラソンを組み合わせた造語)とは、エンジニアやデザイナーなどが一個所に集まってソフトウェアを開発するイベントのこと。一方、アイデアソン(アイデアとマラソンを組み合わせた造語)とは、参加者がアイデアを出し合ってまとめていくイベントを意味する。

 ISACは、NASAやJAXAなどが公開しているデータを使って社会的に役立つアプリを開発するハッカソンだ。公開されているオープンデータには、宇宙や地球の写真、星の軌道やマイクロ波の観測データ、地球における海水の循環や大気の微粒子のデータなど、さまざまなものがある。これらのデータを使ってソフトウェアやオープンハードウェアの開発、市民科学、データの可視化といった問題解決のプロジェクトを行うことが目的となる。

 ISACは世界の各都市(4月11日現在、24都市)で開催されるほか、国際宇宙ステーション(ISS)や南極宇宙観測所なども参加する。ISAC Tokyoは東京大学空間情報科学研究センターの共催で、JAXAの後援により開催される。21日・22日の2日間のうちにアプリを完成させることを目標としており、使える時間が少ないため、今回のアイデアソンのような事前の準備イベントが大事となる。

 参加対象者は、宇宙観測データとテクノロジーによる課題解決に興味のある技術者やデザイナー、科学者、アーティスト、アントレプレナーなど。ISACは、ソフトウェア開発者だけでなく、開発スキルはないがアイデアだけは持っているという人も歓迎される。「宇宙関連のこんなアプリがあれば面白いでのは」といった自由な発想が求められる場でもある。

4月10日に行われたアイデアソン

 プレ勉強会はすでに3月26日に1回目が開催されている。ここでは各分野の識者から宇宙開発分野で使用されている標準的なデータ形式などについてレクチャーがあり、その後、グループに分かれてアイデア交換をした。今回のアイデアソンは2回目となる勉強会で、21日・22日の本イベントに向けてさらに内容の濃いミーティングが行われた。

 会場では、アイデアを持っている人が最初に企画を発表。「ISSの位置をGoogle Maps上に表示するツールの3D版を作り、地球環境データをマッピングした上でソーシャル機能を盛り込みたい」「3Dプリンターを使って宇宙のデータを形にしたい」「人工衛星画像を購入するのに役立つアプリ」「星が見える場所を教えてくれるアプリ」「太陽系外惑星カタログ」「宇宙の電波を利用して瞑想する装置」など、さまざまなアイデアが出された。さらに全員で自由に意見を出し合い、この中で「磁力線をテーマにしたアプリ」などユニークなアイデアも提案された。

 その後、アイデアごとに参加者が各グループに分かれてディスカッションを開始。アプリのコンセプトや機能の詳細、必要とされる技術などについて意見が交わされた。仕上げとして、最後にグループごとに成果を発表。終了後も引き続いてグループごとに活発な話し合いが行われた。

 アイデアソンで提示されたアイデアはまだ、21日・22日の本イベントで開発すると正式に決まったわけではないが、これらを叩き台として今後オンライン/オフラインでのミーティングが行われ、ISAC本サイトへの登録をはじめ本イベントに向けての準備が行われる。中にはすでにISAC本サイトに登録されているプロジェクトもある。

 ISAC Tokyoでは、アイデアソンに参加していない人も含めて、これから本イベントにかけて広く参加者やアイデアを募集している。なお、ISACの登録はグローバルサイトで一括管理されており、東京エリアへの参加希望者もグローバルサイトのレジストレーションページから登録する必要がある。登録方法の詳細や、アイデアソンの模様がわかる動画などはISAC Tokyoのサイトに掲載されている。

 本イベントでは、21日から22日午後にかけて開発が行われ、その後、各作品のプレゼンテーションや有識者による審査が行われる。そして最後に「Tokyo Space Apps Challenge Award」が発表される予定だ。

日本語サイト「Space Apps Challenge Tokyo」




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(片岡 義明)

2012/4/12 15:56