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KDDI、AR情報サービスのトライアル~森永、ニッセン、Francfrancなどが参加

KDDI株式会社新規ビジネス推進本部長 雨宮俊武氏

 KDDI株式会社と仏Total Immersion S.A.は、商品パッケージやカタログなどを活用したAR情報サービスのトライアル提供を1月17日より開始する。AR技術を使って、スマートフォンやタブレットのカメラ越しに家具レイアウトのシミュレーションが可能な「TryLive Home」も同じく1月17日より提供を開始する。

 KDDI株式会社新規ビジネス推進本部長 雨宮俊武氏は、「KDDIでは2011年に『SATCH』というAR開発ツールのデファクトスタンダードを目指す新ブランドを立ち上げた。ARに関心がある企業の抱える「ARを使うとコストや手間がかかる」、「ユーザーにきちんとリーチできるのか」といった問題点をクリアするべく、2011年12月ソフトウェア開発キットSATCH SDKをリリースした。2012年3月にはプロトタイプ版『SATCH VIEWER』を提供開始し、2012年10月に『SATCH VIEWER』を大幅リニューアルした」とこれまでのKDDIの取り組みを説明。

 開発キットとARブラウザーだけでなく、2012年11月には「くまモン」コンテンツを投入し、12月には「てのりん」の提供を開始するなど、コンテンツ面の充実にも取り組んでいるとした。開発者も順調に拡大しており、現在2500人を超える開発者が登録し、ARアプリは『SATCH VIEWER』の中で現在40アプリを公開中だという。

 雨宮氏は「アプリは当初キャンペーン用途がほとんどで、実用的なアプリがなかったが、2012年に実施した『察知人間コンテスト』で『ARレントゲン』、『とびでるぬりえ』など楽しいだけでなく実際に学習ツールに使えるようなアプリが生まれてきている」と述べた。察知人間コンテストは昨年に続き今年第2回を開催、5月下旬に決勝戦を行う予定で準備を進めているという。

 「順調にユーザーも伸びている。auスマートパス経由でSATCH VIEWERをダウンロードしているのは、女性が60%。女性に親和性が高いと見ており、今後非常に期待できる。」(雨宮氏)

 雨宮氏は今後は、医療、自動車、教育、食品、家具、住宅、カタログ、広告ポスターなどさまざまな分野での実用化を目指すと述べ、1月17日から5月末まで実施する今回のトライアルでも幅広いジャンルの企業・団体に参画していただいていると手応えを述べた。

KDDIは2011年にAR技術のブランド「SATCH」を立ち上げた
2011年12月にAR開発ツールキットの提供を開始。問題解決の1年だった
ARアプリは現在40本
ARブラウザーアプリの女性ユーザー率は60%。女性層に親和性が高いという

パッケージやカタログから画像を検索、商品購入や商品情報サイトへアクセス

 対象端末は、Android 2.2以上またはiOS 5.1以上のスマートフォン。App StoreおよびGoole Playでそれぞれ対応ARブラウザー「SATCH VIEWER」をダウンロードすることで対応サービスが利用可能。「SATCH VIEWER」の画像検索機能を使って、対応している商品パッケージやカタログなどを認識することで、商品情報を取得したり、インターネットで商品を購入することができる。

 KDDI研究所が開発した大規模画像認識技術をARブラウザー「SATCH VIEWER」に採用したことで、最大約10万件の画像データベースから高速に画像を特定できる。対応する商品パッケージにスマートフォンをかざすと、「2~3秒で画像検索ができる」(雨宮氏)。上限が10万件という画像データベースに収録可能な点数の多さと、高速な検索が特徴だ。

商品にスマホをかざして画面いっぱいに表示、1回だけタップする
当該商品の画像検索に成功すると、アイコンが浮かび上がってくる
アイコンをタップすることで、FacebookのファンページやTwitter、商品情報ページや購入サイトにジャンプできる

 トライアル開始当初は参画企業・団体16社と連携し、サービスを提供していく。参画企業・団体は、ニッセン、森永製菓、ジュピターテレコム、ディスカバリーチャンネルなどテレビコンテンツ提供会社、東京都現代美術館、東急電鉄、カンロ、富士急ハイランド、美術出版社など。

 株式会社ニッセンでは、提供する「カタログカメラ」でこの技術を採用。2013年度のニッセンカタログ全ページの商品情報の取得や、商品購入が可能となる。森永製菓では、対象となる商品パッケージにスマートフォンをかざすと、公式Twitterや公式ウェブサイト、販促映像などへのリンクアイコンが商品画像の上に表示される。企業では、既存のTwitterやFacebook、公式ウェブサイトや販促映像などのコンテンツに誘導をかけることで、新規にコンテンツを開発する必要がなく、既存コンテンツの活用ができる。このため、導入コストが小さくて済むというメリットもあるという。

 トライアル実施にあたっては、凸版印刷株式会社と、参画企業誘致および情報加工技術を利用したARサービス開発に関する協力体制を構築。トライアルサービスを順次拡大していく方針だ。

KDDIでは、凸版と協力して参画企業を誘致し、今後さまざまな生活シーンでの実利用を提案していく
発表会場でのデモ。森永製菓の商品にスマホをかざすことで、商品情報ページなどに簡単にアクセスできる

スマートフォンやタブレットのカメラ越しに家具をレイアウト「TryLive Home」

 「TryLive Home」は、ARアプリケーションを利用した家具・インテリア企業向けソリューション。「TryLive Home」で開発したアプリケーションは、自宅やオフィスなど家具を配置したい空間にマーカーを置き、タブレットやスマートフォンのカメラをマーカーにかざすことで、実際の部屋に家具の3Dデータを重ねて配置した画像を表示。サイズ感も含め、実際の部屋に置いた場合のレイアウトを体感できる。配置した家具の3Dデータは位置をずらしたり回転させたりも可能だ。

 家具の購入を検討するユーザーは、対応企業のウェブサイトなどからマーカーのデータをダウンロードして、A4用紙にプリント。実際に家具を置きたい場所にマーカーとなるA4用紙を置くことで、A4用紙のサイズから実際の家具のサイズも自動的に計算して、リアルの部屋の撮影画像と重ね合わせるという。

 第一弾として、株式会社バルスが提供するアプリケーションに採用が決定しており、同社が展開する「Francfrac(フランフラン)」の2013 Spring/Summerモデルを含む多数の商品レイアウトを自宅やオフィスで楽しめるという。家具の3Dデータは株式リビングスタイルが担当。「Francfranc」のサービス提供は2013年3月以降を予定している。

マーカーのデータをプリントしたA4用紙を家具を設置したい場所に置く
マーカーを置いた場所に、家具の3Dデータが表示される。回転したり、位置をずらしたりも可能。3月以後にFrancfrancで、トライアルサービスが提供される

(工藤 ひろえ)