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日本人は電子ペーパーよりアプリが好き?! 楽天koboが市場動向を解説

楽天の白石翼氏

 楽天株式会社は19日、「楽天kobo」iOS版アプリの公開にあわせて、報道関係者向けの説明会を開催した。独自タブレット端末の市場投入方針、アプリ版サービスが海外以上に日本で受け入れられている現状などが解説された。

 説明を行ったのは、楽天株式会社の白石翼氏(イーブック事業 企画管理部 部長)。楽天koboはもともと、モノクロ電子ペーバー方式の専用端末向けにサービスを開始したが、2012年12月にAndroid版アプリを追加した。「その直後からiOS版も期待されていたが、クオリティをどんどん上げようと頑張り、ようやく最適化が完了した」と、白石氏は胸をなで下ろしていた。

 専用端末版と比較し、iOS/Androidアプリ版サービスは、手持ちのスマートフォンをそのままリーダーとして使える。また、ディスプレイの構造上、電子ペーパーよりもページ送り速度が速い。このため、ページ数が多く、かつ読み進むスピードが小説などより段違いに速い漫画作品との相性もいい。また、カラー表示のメリットを生かせるコンテンツを、楽天koboでも拡充する計画だ。

スマホアプリ版koboは、ページ送りやカラー表示の面で有利
ソーシャル機能の充実は特に力を入れている部分という

フィーチャーフォンが“電子読書”を変えた?

フィーチャーフォンと漫画の存在が、日本の電子書籍市場に大きな影響を与えているようだが……?

 日本と国外では、サービスの受け入れられ方にも違いあるという。専用端末の発売が先行していた国外では、スマートフォンアプリ版サービスは補完的な側面が強かった。しかし、日本ではフィーチャーフォンが長らく市場を席巻。小さな画面でケータイ小説を読むといった行為への慣れがあるので、スマートフォンアプリでの読書にも抵抗がない───。白石氏らは、Android版koboリリース後の実感から、そう考えるに至ったという。

 このため、iOS版アプリのリリースによって、「専用端末を買うにはまだ早い」と考えている新規ユーザー層の獲得効果が期待される。スマートフォンアプリ版がきっかけでkoboを使い始めたユーザーに対し、専用端末の導入を促すキャンペーンなども視野に入れている。

 また、電子書籍の購入単価についても、日本と海外で違いがある。「日本にはやはり漫画があるため、購入冊数が海外ユーザーよりも多い。ただし、単価を見ると、漫画は若干安め。結果として読む量は日本の方が多かった」(白石氏)。

 総じて、「日本では電子書籍を(専用端末でなくても)アプリでも十分読んでいただける」というのが、Android版アプリ公開から約4カ月で得た白石氏らの見立てだ。実際、アプリ版における販売実績は、事前の期待値より大きかったという。

 一方、読書をする上での全体満足度は、専用端末を用いた場合に高くなるとの分析もある。楽天では、専用端末とアプリという2つのサービスを組み合わせ、相乗効果を狙っていくとしている。

独自タブレットを日本でも

タブレット版koboの日本市場投入を検討中

 サービスの将来的な拡張に向けて、タブレット端末の投入を検討する。白石氏は「海外ではすでに『kobo arc』という、Androidベースの7インチ液晶タブレットが発売されている。日本でも、他社製品に負けないだけのコンテンツを用意して、近日中に出せるよう、検討している」と明言した。現在は、発売済みの海外版を日本市場向けに最適化するか、あるいは次機種の発売を待つのか判断する時期のため、具体的な発売日などには触れなかった。

 タブレット版koboは、単なる電子書籍リーダーにとどまらず、その他のデジタルコンテンツ販売の窓口としても期待できる。「例えばKindle Fireでは、電子書籍だけでなく動画や音楽の販売も行える。楽天であれば、いかに楽天市場へお客様をご案内できるか(が重要)」と、白石氏はその波及効果についても言及していた。なお、PC版koboサービスの開発にも着手しているという。

(森田 秀一)