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ミクシィが2四半期連続赤字、「つながり」重視で再成長を目指す

「リストラのようなことは一切していない」と朝倉社長

株式会社ミクシィ代表取締役社長の朝倉祐介氏

 株式会社ミクシィは8日、2013年度第2四半期(7~9月期)の決算について、報道関係者向けに説明会を開催した。同四半期の売上高は18億3500万円、営業損失3億1300万円の赤字だった。

 売上高18億3500円の内訳は、SNS「mixi」における課金が12億4900万円、広告が3億2800万円、求人サイト「Find Job!」での売上が1億9600万、その他が6000万円。なお、課金売上の大半が「mixiゲーム」によるもの。近年のモバイル端末市場の変化に伴い、フィーチャーフォン版mixiゲームの売上が減少傾向にあるとした。

 同様に、広告収入も減少傾向にある。最盛期の2011年度第3四半期は20億9100万円だったが、前期(2013年度第1四半期)は4億7200万円、今期は3億2800万円となった。なお、縮小幅自体は、2013年度第3期以降、減少する見込みという。

 このほか、費用の面では、アルバム作成サービス「ノハナ」の利用者増にともなって製造原価が上昇。中国拠点の閉鎖に伴う人件費減少についても、今期のトピックとして挙げている。

今期の売上および損益
四半期単位での売上内訳

 前期に引き続いての赤字となったが、再成長に向けての投資は拡大している。代表取締役社長の朝倉祐介氏は、事業領域を「メディア・コンテンツ領域」「マーケティング領域」「ライフイベント領域」という3つに再整理し、その上で社の理念である「つながり」の提供を目指すとした。

 「メディア・コンテンツ領域」では、11月中旬からmixi内のコミュニティ機能を一部オープン化し、インターネット検索の対象とさせることで、利用者および価値の増大を目指す。朝倉氏は「mixiコミュニティは、mixiがスタートした当初からある機能で、今回の変更はそれほど派手なものではないと思われるかもしれない。しかし私たちにとっては、ある種の宗旨変えに近い気持ちでこの施策を決定した」と明かしている。

 従来のmixiは、限られたユーザー同士が集まってコミュニケーションする「箱庭」としての側面が強かった。ただ、オープン化はコミュニティの管理者を中心に長年要望されており、今回ついに変更に至ったという。

 また、月額制有料会員プランである「mixiプレミアム」の機能強化も実施。日記、コミュニティ、メッセージの各機能を利用するためのスマートフォンアプリも相次いでリリースした。

「mixiコミュニティ」の一部コンテンツをインターネット検索の対象にできる
新規事業の「ノハナ」は会員50万人に

 加えて、SNSのmixiとは直接関係のない、スマートフォン向けネイティブゲーム「モンスターストライク」も10月にリリースした。Bluetoothによるアドホック通信のサポートにより、同じ場所に居合わせたユーザー同士が同時にゲームを楽しめるようにするなど、ここでも「つながり」にこだわったという。

 「マーケティング領域」では、mixiの会員規模を活かしたリサーチ(ユーザーアンケート)事業を推進。また、リアル店舗での覆面調査を行う「ミステリーショッピング」についても、事業買収によって参入する。

 「ライフイベント領域」では、人生の行事にあわせたサービスを提供する。ノハナもその1つだが、直近では、結婚支援サービスや“街コン”の運営を事業とする会社を買収した。

 一方、赤字からの脱却も大きな課題だ。朝倉氏も「言わば“健全な赤字”であるノハナやモンスターストライクへの新規投資分を除き、営業損失は一刻も早く退治しなければ」と危機感を表した。来期(2013年度10~12月期)の赤字幅は、今期とほぼ同等になるとの業績予想がすでに発表されているが、これを2014年度には改善させたいという。

赤字改善に取り組む
SNS「mixi」以外の事業領域も拡大させる

 ただし、説明会の場では、収益拡大に向けた投資方針が多数示された一方、固定費削減などの具体案にはほとんど触れなかった。また、一部のニュースサイトで取り沙汰された、従業員への過度な退職勧奨疑惑について、朝倉氏は「リストラという言葉が出たが、そのようなことは一切していない。通常の人事異動を行っている」と質疑応答時に回答した。

 mixiでは2004年のサービススタート以来、「全ての人に心地よいつながりを」という理念のもと、各種サービスを提供してきた。しかし、この「つながり」の定義は、時代によっても少しずつ変わると朝倉氏は指摘。端末に応じてmixiのサービス形態を変えるのはもちろん、今後は会社としてのミクシィグループ全体でも「つながり」提供していきたいという。「携帯電話会社が言う『(電波の)つながりやすさナンバー1』ではないが、私たちは『つながりナンバー1』という思いでビジネス拡大に努めていきたい」(朝倉氏)

(森田 秀一)