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「.pink」「.red」「.blue」など、もう何が何やら……新gTLDが100種超え

商標保護の観点から有効な「TMCH」とは

 ドメイン名・IPアドレスの割り当て管理を行うICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)が1月18日付で、「.photo」「.link」「.club」「.rich」「.guitars」「.pink」「.red」など、16種類の新gTLDをルートゾーンに追加。すでに追加されていたものと合わせてこの時点で新gTLDは100種類を突破し、計107種類となった。その後も「.tools」「.cool」「.community」「.watch」「.tokyo」など15種類が追加されており、1月29日時点で新gTLDは122種類。

 新gTLDは今後もまだまだ増え続け、1000種類以上が登場する見込みだ。その中には企業が自社名をそのままTLDにするものなど、ドメイン名登録サービスが一般には解放されないものも含まれるが、半数以上は「.com」などのようにドメイン名が広く登録できる新gTLDだという。実際、すでに一般からの登録サービスを開始しているgTLDもある。

 このような状況になってくると、厄介になってくるのが企業などのブランド保護の観点での対策だ。従来のようにTLDの種類が割と限られている状況であれば、めぼしいTLDが新設された際には、実際に使用するかどうかにかかわらず自社のブランド名の文字列を用いたドメイン名を取得しておき、第三者に登録され、それを不正に使用されることを事前に防止できた。あるいは、第三者が登録して不正使用していないか監視し、そういった事例を発見した場合は紛争処理手段に持ち込んでそのドメイン名を停止させたり取り上げるといった対応も可能だったが、新gTLDが数百種も出てくるとなればそうもいかない。

 そこでICANNが新gTLDの導入と合わせて用意したのが「Trademark Clearinghouse(TMCH)」という仕組みだ。TMCHは、商標保護のための一元化されたデータベースで、すべての新gTLDで共通に参照される。各国で認められている商標の所有者は、その文字列をTMCHに登録しておくことで、商標保護に役立つサービスを受けられる。すでに2013年3月から提供されている。

「Trademark Clearinghouse(TMCH)」のウェブサイト

 具体的には、その商標と同じドメイン名をそれぞれの新gTLDで優先的に取得できるようになる。TLDが新しく登場した際は商標権者が優先的にドメイン名を登録申請できる「サンライズ期間」が最初に設けられるが、新gTLDでは、登録した商標と同じドメイン名(一部の記号の置き換えは可能)をサンライズ期間に申請するには、TMCHに登録済みであることが条件となる。TMCHへ自社の商標を申請し、登録が認められると、SMDキーというものが発行される。サンライズ期間におけるドメイン名登録申請は、このキーが必要になる。

 一方で、新gTLDで商標と同じドメイン名を取得したいわけではない場合も、TMCHは有効だ。サインライズ期間が終了し、一般からの登録受付が始まった後、商標を含むドメイン名を第三者が申請しようとすると、それがTMCHに登録されている商標であることがその申請者に通告される。それでも申請者がそのドメイン名の登録手続きを進めた場合は、TMCH商標登録者側に通知が届く。これにより、新gTLDにおいて自社の商標関連ドメイン名が第三者によって取得されたことを把握でき、必要に応じて、URS(Uniform Rapid Suspension)またはUDRP(Uniform Domain Name Dispute Resolution Policy)のような従来と同様の紛争処理手段に出ればいいというわけだ。

 この第三者への通告およびTMCH商標登録者への通知サービスは、それぞれの新gTLDにおいて一般登録受付が始まってから90日間にわたって機能する。また、期間終了後は、希望するTMCH商標登録者には延長サービスが用意されるという。延長サービスでは、TMCHに登録した商標と一致するドメイン名がどこかの新gTLDで登録された場合に通知を受けられる。

YouTubeで公開されているTMCHの紹介動画

 TMCHの登録料金は、商標1件につき、1年間150ドル、3年間435ドル、5年間725ドルだが、大量の商標の保有者向けにはディスカウント料金も設定されている。登録は、企業がTMCHのサイトから直接申請を行う方法のほか、ドメイン名登録サービスなどを提供している各国の代理店経由でも可能だ。日本の代理店としては、インターリンク(ゴンベエドメイン)、GMO(お名前.ocm)、マークアイ(ドメインネーム.jp)、ブライツコンサルティングがある。料金は代理店によって異なるが、年間3万円程度だという(なお、申請から登録完了までには2週間~40日間と時間がかかるようだ)。

 新gTLDのドメイン名登録サービスを提供するとともに、TMCHの国内代理店の1つでもあるインターリンクでは、「膨大な数の新gTLDがリリースされるため、すべての新gTLDに対してブランド保護を目的としたドメイン名取得は不可能に近い。しかし、TMCHの登録は、第三者のドメイン名取得状況の把握や牽制ができるメリットがある」と指摘する。「第三者によるドメイン名登録申請がなされた段階では、それを取り止めるよう強制する権限はないが、申請者にはTMCHから商標権者が存在することが通知され、取得した場合はドメイン紛争の可能性を印象付けられるため、一定の抑止効果が期待できる。TMCHの登録は、ドメインの取得を前提としていない場合でも、商標権を侵害する第三者への牽制として有効な手段となるため、特に企業の登録を推奨する」(インターリンクドメイン販売事業部ゴンベエドメインジェネラルマネージャーのジェイコブ・ウィリアムス氏)。

【追記 2014/2/6 20:30】
 ICANNは、さらに2月4日・5日付で「.exposed」「.cleaning」「.blue」など12種類をルートゾーンに追加。新gTLDは計134種類となった。

(永沢 茂)