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Hulu、日本の事業を日本テレビに売却

月額980円の見放題サービスはそのまま継続

 日本テレビ放送網株式会社は28日、定額制動画配信サービス「Hulu」の日本市場向け事業を継承することで、米Hulu, LLCと合意したと発表した。米Huluが会社分割により設立した新会社を、日本テレビが子会社化する。事業譲渡は今春の予定で、これにより日本テレビは定額制動画配信事業に参入するとしている。

 Huluは、2011年9月に日本市場に参入。現在までにコンテンツパートナーは約50社に上り、映画やドラマ、アニメなど1万3000本以上を月額980円で見放題となるサービスを提供している。

 米Huluのマイク・ホプキンスCEOは、「このたび、ここまで成長した日本をストラテジックバイヤーに売却することが最善の選択という結論になりました」などとするコメントを発表した。具体的な売却理由については言及していないが、日米でのビジネスモデルの違いなどが背景にはある。

 米Huluは2008年に、Walt Disney Company、21st Century Fox、NBCUniversalの合弁事業としてビデオオンデマンドサービスを米国で開始。広告ベースで運営される無料サービス「Hulu.com」は3000万人以上のユニークユーザーがいるという。これに加えて2010年には、テレビドラマシリーズがフルシーズン見られるなどのプレミアムコンテンツを提供する有料サービス「Hulu Plus」(月額7.99ドル)を開始し、こちらは500万人の会員がいるという。

 これに対して、Huluの日本市場向けサービスでは、無料サービスは提供されておらず、最初から有料サービスとしてスタート(開始当初は月額1480円、2012年4月から980円に値下げ)しており、ビジネスモデルが大きく異なっている。もちろん、それぞれの市場でラインナップするタイトルに関しても、ハリウッド映画や米国のテレビドラマシリーズなど共通で調達できるジャンルもあるだろうが、それぞれの市場でコンテンツパートナーを獲得する必要がある。今後、日本で広く利用されるサービスを展開するためには、日本の親会社のもとで事業展開するのが「最善の選択」ということのようだ。「私は日本テレビが、日本のHuluを新たなレベルへと導いてくれることを信じています」(マイク・ホプキンスCEO)。

 日本市場での会員数については「2013年の1年間で倍増した」というが、具体的な数字は公表していない。

 日本テレビが子会社化する新会社は、日本向けの現行サービスを担当しているフールージャパンLLCとは別に設立される。新会社では、Huluのブランドやテクノロジーに関するライセンスを受けて日本での事業を継続し、「今後もHulu独自のテクノロジーを活かしながら、優れたユーザビリティのサービスを日本の消費者に提供していく」。既存の各ジャンルをさらに強化するとともに、日本テレビの話題作や人気番組のHulu向け限定コンテンツの配信などにより、作品ラインナップや事業拡大を目指すという。

 なお、Huluでは現在、日本のテレビ局としてNHK、TBS、テレビ東京などもコンテンツパートナーとなっており、それぞれの番組コンテンツが配信されている。フールージャパンによると、日本テレビが親会社になった後もこれら各局のコンテンツは引き続き配信されるという。また、既存会員はそのまま継続してサービスを利用でき、月額980円という料金も変わらないとしている。

(永沢 茂)