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米Apple、iOS 8、OS X Yosemiteを発表

~MacとiOSがよりシームレスに、今秋無料公開

 米Appleは2日、カリフォルニア州サンフランシスコで開幕した開発者向け会議WWDCにおいて、次期OS Xとなる「OS X Yosemite」、次期iOSの「iOS 8」などを発表した。Mac OSとiOSはデザイン的にも近くなり、よりシームレスに動作するようになった。

 開発者向けには6月3日から公開され、一般向けベータプログラムは夏から、そして正式版は秋に無料アップデートとして提供される予定だ。

iOS 8では情報の共有・連携がよりスムーズに行える

 特に注目されるのは、Mac OSとiOSのシームレスな連携だ。象徴的なのがAirDropのMac OSとiOS間対応で、これによってiPhone/iPadで作業していたドキュメントを即座にMacで継続できる。

 たとえば、iPhoneで書いていたメールの続きをMacで書いたり、Macで作業していた文書ファイルをiPadで外に持ち出し続けるといったことが気軽にできるようになる。

 メッセージに関しても、iOSのメッセージをMacでも見られるようになったほか、iPhoneの電話をMacで受話したり、Macからそのまま電話するといった様子がデモされた。

 また両者をつなげるオンラインストレージ「iCloud Drive」も発表された。保存できるドキュメントの種類に制限はなく、Mac、Windows、www.icloud.comのどこからでもアクセス可能。さらにiCloudの料金体系も変更された。5GBまでは無料。20GBまで月額0.99ドル、200GBまでが月額3.99ドルで、最大1TBまで購入可能となった。

 今回の発表は前後にTim Cook CEOが登場したものの、ほとんどのプレゼンテーションはソフトウェアエンジニアリング担当シニアバイスプレジデントであるCraig Federighi氏が行った。

 なお、一部で発表が予想されていた新しいMacやiPhoneなどハードウェア製品の発表は行われなかった。

 発表が行われたWWDC Keynote Speechの動画はAppleウェブサイトから無料で見ることができる。

iOS 8

 最大の改良点はインタラクティブになった通知センターだ。この通知センターであらゆる事ができてしまうという印象を受ける。

 たとえば、ロック画面でカレンダー通知を見て、そのまま予定を表示し、操作が行える。メッセージアプリの通知にも返信できる。

 また、新しいキーボード「QuickType」が発表された。使用しているアプリや状況、書いている相手等によって次の言葉を推測する。ユーザーの好みも学習し、よく使う言い回しをお勧めしてくれるため、「わずか数タップ」で文章の入力が可能だという。学習内容はiOS内に暗号化保存され、クラウドにアップロードされることはない。

 メッセージアプリも改良され、チャット、音声、動画、写真が使いやすくなった。グループメッセージからコンタクトが削除できるようになり、多すぎるメッセージには「Do Not disturb」ボタンで表示を停止し、対応が可能。マイクボタンの長押しで音声録音も可能になった。

 健康関連の情報をまとめて見られるHealthKitも発表された。自分の健康情報をモニタリング、記録し、病院とも連携できる。

 さらにファミリーシェアリングが発表された。家族6人の間で購入コンテンツを共有できる。また子供が親にコンテンツ購入の許可をもらう機能もある。

 Siriも改良された。「Shazam」による音楽の自動認識、iTunesコンテンツの購入、連続音声認識、対応言語も22言語を追加している。また、Siriをスタンバイさせておき、いつでも話し掛けることができるようになった。

 Spotlight検索も改良され、OS X Yosemiteと同じようにローカルだけでなく、WikipediaやBingなどによるウェブ検索も可能になっている。

 企業で利用するための機能も追加された。社員に対する端末設定、管理状況の通知が改善され、重要なアプリに対するデータ保護機能が改善されている。

iOS 8のホーム画面
Photo Moments画面

OS X Yosemite

 デザインはiOSに似た雰囲気に変わっている。ウィンドウは半透明で、フォントデザインも見直された。アプリケーションに集中したい人向けに「Dark mode」が利用できるようになり、メニューやドックを暗くして目立たないようにすることもできる。

 通知センターはインタラクティブになり、今日の天気や予定を一覧できる。Spotlightもこれまでの画面隅から、画面中央に大きく表示されるように改良された。それだけでなく、Wikipedia、サーチエンジンのBing、App Storeなど、ローカルな情報以外にネット情報も含めて一度に検索できる。これらはiOSの改良と共通している。

 メールアプリも改良され、相手がMacユーザーなら、Mail Drop機能により最大5GBまでの大きな添付ファイルが送れるようになった。また、送信する画像やPDFなどに手書きでサインして送信できる「Markup」機能もある。

 Safariは最上部のメニューバーが一行になり、コンテンツ表示面積を増やした。ブックマークなどは検索で表示できる。共有アイコンにより、ページの情報に文字や絵を描き込んだりして簡単に共有可能になった。

 パフォーマンスも大きく改善。特に電池寿命の節約が強調されている。ネット動画サイト「Netflix」で1080P HD動画を2時間余分に再生できる電池寿命を実現したとしている。そのほか、DOM描画、JavaScript速度でもChromeやFirefoxに対する優位性を強調。通常のウェブサイトなら、ChromeやFirefoxより大幅に速く表示できると主張した。

 OS X Yosemiteは無料アップデートとしてこの秋公開予定だ。夏からベータ版プログラムを提供開始するとしている。

OS X Yosemiteのデスクトップ
Yosemiteでは、これまでよりiOSに近い雰囲気になっている

開発者向けにはTouch ID、キーボードのサードパーティー公開

 開発者向けの目立った発表として、App Storeの検索機能改善が挙げられる。連続スクロールによりアプリの検索がしやすくなるほか、トレンド検索も可能になった。

 また、TouchID APIがサードパーティー向けに公開された。セキュリティに配慮し、登録された指紋情報がサードパーティーアプリに渡されることはないと強調している。またサードパーティー製キーボードも利用できるようになる。

 新たに4000もの開発者向けAPIが利用できるようになり、アプリ間の連携ができるようになる。

 いわゆる「物のインターネット」IoT向け発表もある。家の中の様々なインターネット接続端末と連携するための「HomeKit」を発表。家の照明、防犯カメラ、鍵、サーモスタット、電源等をコントロールできる。これはSiriにも対応しており、様々な応用が考えられる。

 ゲーム開発者向けの高速グラフィックテクノロジーであるMetal、カジュアルゲーム用のSceneKit、3Dレンダリング用ツールのSpriteKitも発表された。

 Objective-Cの後継プログラミング言語となるSwiftも発表された。Swiftはコンパイラ言語とスクリプティング言語の両方の利点を取り込み、より安全で信頼できるコードを記述できるとしている。また、既存のC言語やObjective-C言語コードをそのまま残すこともできるという。Swiftプログラミング言語マニュアルは今日からiBookで提供される。

(青木 大我 taiga@scientist.com)