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thinkTPPIP、TPP著作権条項の見直しと情報公開を求める緊急声明案を公開

 TPPの知的財産権と協議の透明化を考えるフォーラム(thinkTPPIP)は23日、TPP著作権条項に関する緊急声明案を公表し、意見の募集と賛同の呼び掛けを開始した。

 thinkTPPIPでは、TPP(環太平洋経済連携協定)の知的財産条項案の妥結が近いといった趣旨の報道が続いており、そこでは「著作権保護期間の大幅延長」や「非親告罪化」といった条項について日本政府が譲歩の方針と伝えられたり、法定賠償金のように重大な影響がありながら動向が全く不明な条項もあると説明。こうしたことから、「日本の豊かな文化や知へのアクセスを守る上で、今が最も重要なタイミングであると考え」、緊急声明案を公開し、内容への意見を募るとともに、広く関係諸団体に賛同を呼びかけるとしている。

 声明案では、TPPにおける著作権など知的財産権を巡る条項に対して、これまで国内外の多くの団体や有識者達が交渉の透明化を求め、米国提案に懸念を表明してきたが、交渉終盤とされる現在、協議の密室性はむしろ高まっており、国民の間では混乱が広がっていると指摘。国の文化・社会にとって重要な決定が、国民不在の密室の中でおこなわれ、21分野一体のため事実上拒否できない妥結案だけが国民に提示される事態を深く憂慮するとしている。

 著作権の保護期間延長の提案については、無用な長期化が権利者不明の「孤児著作物」を激増させ、日本について言えば、年間6200億円にも上る著作権収支の対外赤字を固定化し拡大させる可能性が高く、知財立国の方針に反すると指摘。また、著作権侵害の非親告罪化についても、厳密にいえば違法だが権利者に実害がない限り強いて問題視はされていない多くの利用を萎縮させる恐れがあるとしている。

 このほか、「コピーライトトロール」による企業・個人への高額請求を含む、米国での知財訴訟の増大と賠償金および訴訟費用の高騰を招いた主因とされる「法定賠償金」の導入など、さまざまな条項について、交渉の現状はまったく明かされていないと指摘。これら多くの条項は、過去に日本では異論が強く、十分な議論を経た上でわが国の現状には合わないなどとして導入が見送られた経緯があるとして、米国型のルールのうち相手国に都合の良い部分だけが急速に導入されれば、経済・文化における日本の活力がそがれかねないと憂慮を示している。

 また、仮に日本にも導入すべきと映る個別の条項があるとしても、条約は国内法に優先するため、多国間の多角的貿易協定の一部としてそうした条項が義務付けられてしまえば、数年後に社会の実情に応じて見直そうとしても、もはや国会すら法令を変更することはできないと説明。変化の速い情報ルールの分野でそうした拘束を受ければ、わが国の競争力や豊かな文化を減殺する恐れが強く、コンテンツの流通促進を重視する内閣の「知的財産推進計画」や、自民党の「知的財産戦略調査会提言」の方向性にも反し、次世代への大きな負の遺産となると指摘している。

 声明案ではこうした指摘とともに、国際交渉は一見趨勢の決まったように見える最終段階こそが最も重要だとして、国会承認の段階で混乱が生じ、政府関係者の努力が無駄にならないためにも、各国の利害対立の大きい知財条項を妥結案から除外し、海賊版対策のような異論の少ない分野に絞ることと、条項案を含む十分な情報公開を、修正交渉が可能な段階に行うことを強く求めている。

(三柳 英樹)