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ScanSnapからクラウドへ直接アップロードできる無料サービス「ScanSnap Cloud」

ドキュメントの種類を判別、11のクラウドサービスへ自動振り分け

 株式会社PFUは、同社が販売するドキュメントスキャナー「ScanSnap iX」シリーズのユーザー向けの無償クラウドサービス「ScanSnap Cloud」を25日より提供する。スキャンしたドキュメントの種類に応じて、各社が提供している会計・個人資産管理や名刺管理、写真管理など11のクラウドサービスへ自動的に振り分けてアップロードしてくれるもの。PCやスマートフォンを介すことなく、ScanSnap iX本体のボタンをワンプッシュしてスキャンするだけで実行される簡単操作が特徴。「ScanSnap iX500」「ScanSnap iX100」から利用できる。

 対応するクラウドサービスは、会計・個人資産管理が「Dr.Wallet」「クラウド会計ソフト freee」「STREAMED」、名刺管理が「Eight」、写真管理が「Google Photos」、ドキュメント管理が「Dropbox」「Evernote」「Google Drive」「OneDrive」。また、12月上旬より「MFクラウド会計・確定申告」、2016年に「弥生会計」もサポート予定。

 PFUがMicrosoft Azure上に構築したScanSnap Cloudが各社クラウドサービスのゲートウェイとなる仕組み。ScanSnap iXでスキャンしたドキュメントのデータはまずScanSnap Cloudにアップロードされ、そこからドキュメントの種類に応じてユーザーの指定したクラウドサービスへ転送される。

 スキャンデータは、ScanSnap Cloudにアップロードされた際に、自動サイズ検出機能によりドキュメントごとに切り出されるほか、向きの補正や白紙ページの削除、カラー/グレーの自動判別などの最適化処理が行われる。これまではPC上で行っていたこれらの画像処理をScanSnap Cloud側で施すことで手間を削減したという。

 また、基本的にはドキュメントのサイズによって「レシート」「名刺」「文書」「写真」に自動分類。これら4種類それぞれに、どのクラウドサービスのアカウントに転送するかをユーザーが設定できるようになっている。

 なお、ファイル名にはスキャンした日時が付くが、「文書」と分類されたドキュメントについては自動ファイル名生成機能を備えており、ドキュメントの冒頭部分にある日付と文書タイトルを認識してファイル名に付与するようになっている。

 ScanSnap Cloudの設定は、Windows Vista以降、Mac OS X 10.8以降、Android 4.0以降、iOS7以降に対応するアプリ「ScanSnap Cloud設定ツール」で行う。同ツールのガイドツアーに沿って、同一無線LAN環境にあるScanSnap iX500/iX100の接続設定を行った後、同製品のファームウェアをScanSnap Cloudに対応する最新バージョンに更新。その後、ScanSnap Cloudのアカウント登録(無料、要メールアドレス)を行い、転送先のクラウドサービスの設定を行う流れだ。

 なお、ScanSnap Cloudアカウントにひも付けられるScanSnap iX500/iX100は本体のハードウェアIDで識別する仕組み。また、セキュリティの観点から、同ツールによる設定は公衆無線LAN環境では行えないようにしており、公衆無線LAN環境のScanSnap iX500/iX100からScanSnap Cloudに接続することはできない。社内・家庭内無線LANや、モバイル無線LANルーター環境で使用する必要がある。

 また、ScanSnapからアップロードされたデータは、各クラウドサービスへ振り分け転送した後も、ScanSnap Cloudに上に容量無制限で2週間保管されており、ScanSnap Cloud設定ツールから履歴を確認可能。ドキュメントの種類の誤分類があった場合など、同ツール上から手動で各クラウドサービスへ転送する操作が可能だ。

株式会社PFU代表取締役社長の長谷川清氏

 株式会社PFU代表取締役社長の長谷川清氏はScanSnap Cloud提供開始の背景として、クラウド型の会計・資産管理などのサービスの台頭でFinTechへの注目が高まり、レシート、請求書、領収書などの電子化にスキャナーが積極的に活用されていることを挙げた。そこで、紙とクラウドサービスをつなぎ、情報交換する“ドキュメントIoT”を提唱すると述べた。

 これまで、PCを起動する時間や手間、USBケーブル接続による置き場所の確保や使い方の制限が、紙のデータ化の問題点だったという。解決策として、2012年にはPCやスマートデバイスとのWi-Fi接続によるクラウドサービスとの連携を実現したが、それでも何らかの操作が必要となり、誰でも簡単に扱えるものではなかったと振り返った。そこで、ワンプッシュでレシート、名刺、書類、写真を自動認識してクラウドサービスと連携する、PC/スマートデバイス不要のサービスを目指したという。

Dropbox Japan株式会社代表取締役社長の河村浩明氏
Evernote Japanジェネラルマネージャーの井上健氏
株式会社マネーフォワード執行役員マーケティング本部長の田平公伸氏
株式会社PFU取締役執行役員専務の宮本研一氏

 ScanSnap Cloudのパートナー企業の1社であるDropbox Japan株式会社代表取締役社長の河村浩明氏は、「既存のストレージ機能だけでなく、コミュニケーション機能を付加することによって、コラボレーションプラットフォームに進化させていくことが弊社のこれからの重大な責務と思う。これからの構想として、いろいろなアプリケーションのファイルをDropbox上でネイティブに使えるようにしたいが、(Dropboxでは)手も足も出ないのが紙のデータ化だ。今回のソリューションによって、ユーザーの仕事や個人のファイルを一元化して管理することができる。利便性という観点や、ワークスタイルのイノベーションという観点でも期待できる」と述べた。

 Evernote Japanジェネラルマネージャーの井上健氏は、「都内の高校(品川女子学院)でEvernoteとScanSnapを使うことでどのような使い方があるか実験的に展開していたが、その中で勉学以外に部活、生徒会、行事などそれぞれが使い方を工夫していることが分かった。これからもそのような使い方が広まり、ビジネス、家庭、学校でも使えるようにいろいろな連携、試みを続けていきたい」と述べた。

 株式会社マネーフォワード執行役員マーケティング本部長の田平公伸氏は、「今まで、書類の多い税理士事務所から常々求められていたサービス。個人事業主が登録し、税理士事務所が電子化されたデータを仕訳とひも付けできるなど、場所を選ばないコラボレーションになっている」と語った。また、電子帳簿保存法の改正により今後出てくる要件に対応することで、保存した書類を廃棄しても大丈夫だというクラウドのメリットを最大限に活かしたサービスを作っていくと述べた。

 PFUの取締役執行役員専務の宮本研一氏は、「これまでスキャナーをコピー機やファックスのように誰でも簡単に使えるようにワンプッシュ操作にこだわってきた。ScanSnap Cloudによって、さらに進化したワンプッシュ操作を提供できると考えている。しかし、これはPFUで実現したものではなく、パートナー企業各社との連携により実現した新たなサービス。これからも引き続き、時代の進化を見据え、ユーザーにとってより便利、価値のあるサービスを提供することをモットーに進化し続けていく」と語った。

今後の提携パートナーとして、アカウンティング・サース・ジャパン株式会社、マネーツリー株式会社、メリービズ株式会社の3社が挙がった
2016年春をめどに、e-文書法対応やグローバル展開を予定。まずは北米からグローバル展開する。
文書をスキャンすると日付とタイトルが認識され、自動的にファイル名が付いた
対応機種の「ScanSnap iX500」「ScanSnap iX100」
25日に都内で開かれた記者会見には、パートナー企業9社も参加した

(永沢 茂/磯谷 智仁)