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高校が消滅した町・村に「Nセンター」を――自治体と「N高校」が連携、廃校や古民家にネット教育拠点
(2016/5/27 17:14)
カドカワ株式会社は27日、地方自治体と連携して各地にネット教育の拠点を開設する「Nセンタープロジェクト」の開始を発表した。同社と株式会社ドワンゴが開校したインターネット通信制高校「N高等学校」の課外授業を受講できるようにするほか、プログラミングや職業体験などのキャリア学習センターとしての機能も提供する。まずは鹿児島県長島町で7月に開設するほか、群馬県南牧村でも開設が決まっている。そのほか、佐賀県武雄市でも予定されているという。
全国には約1700の自治体があるが、人口減少や少子化・高齢化などによる学校の統廃合によって、そのうちの4分の1の自治体では高校が消滅。その結果、子供たちは高校進学と同時に遠距離通学や家を離れての寮生活を強いらることになったり、中には高校のある都市部に家族ごと移住していってしまう例もあり、さらなる過疎化や都市部との教育格差の拡大を引き起こしているという。
「Nセンター」は、そうした地域の自治体が廃校舎などの空き施設を活用して運営するもので、過疎化の進む地域の若者がその町・村に居住したままで、高校卒業までの多様な学習のサポートを受けられるようにするのが狙いだ。
Nセンターには、N高校の課外授業アプリを活用。ドワンゴによるプログラミング講座をはじめ、KADOKAWAによる文芸小説制作講座、Vantanによるファッション/パティシエ/ビューティー/ゲーム講座、大手予備校による大学受験講座などを受講できるようにする。チューターも配置し、自学自習の指導を受けられるようにすることで、N高校あるいは他の通信制高校の生徒にとっての“リアルな通学の場”を提供。グループワークやプロジェクト学習なども展開するという。
なお、Nセンターはあくまでも、自治体が運営する“公営の学習塾”といった位置付けだ。受講できるN高校の授業も、上記のような課外授業の部分にとどまる。高校卒業資格を得るには、生徒は別途、N高校あるいは他の通信制高校の所定の授業を履修する必要がある。
職業体験は、地域の特色を生かし、地場産業などに携わる地域の人材の協力も仰ぎながら、若者と住民との交流や地域おこしの情報発信にもつなげていく。
長島町では、役場の空きスペースをリノベーションしてNセンターを開設する。南牧村では、古民家を改修して再活用する。
あわせて南牧村役場では、高校生・大学生が村の活性化に取り組む行政の職業体験ツアーを開催する予定だ。南牧村は人口が約2000人で、ある調査によれば「日本一、消滅可能性の高い自治体」。村内には高校も学習塾もないとしている。南牧村では、こうした職業体験ツアーなどを通じて若者に向けた同村についての情報発信に取り組むとともに、将来的には同ツアーの参加者の中から職員を採用することも検討していくという。