マイクロソフトとヤフーの担当者に聞く「Silverlight」戦略
ヤフーのSilverlight対応コンテンツ案内ページ |
「Yahoo!ニュース」の動画コンテンツが16日からSilverlightで再生できるようになった。
また、マイクロソフトが同日に開催したイベント「ReMIX Tokyo 09」のキーノートセッションでは、Silverlightのパートナーとしてヤフーが紹介され、ヤフーは参考コンテンツとして、「Yahoo!オークション」専用のアプリケーション「Auction Tools」のデモを行った。
今回の件について、マイクロソフトの春日井良隆氏(デベロッパー&プラットフォーム統括本部デベロッパービジネス本部マネージャー)、ヤフーの友松重之氏(マーケティング本部本部長)、「Auction Tools」を開発したセカンドファクトリー取締役副社長の齋藤善寛氏に話を伺った。
●動画配信以外の機能にも期待
マイクロソフトの春日井良隆氏 |
ヤフーの友松重之氏 |
セカンドファクトリーの齋藤善寛氏 |
――「Yahoo! JAPAN」でSilverlight対応を開始するに至った経緯を教えてください。
春日井氏:Silverlight 1.0がリリースされたときに、我々からヤフーさんにSilverlightをご紹介しました。その時点では、ヤフーさんが動画配信で使われていたWindows Media Video(WMV)形式が生かせるというところに着目していただけました。
その後、バージョン2、3へと進化していき、動画配信だけではない、サービスの部分でいろいろな使い方ができると判断されたので、かなり早い段階からSilverlight 3の情報を提供させていただきました。その流れで作られたアプリケーションがキーノートで披露したものです。
――アプリケーション制作の際にマイクロソフトから何か要望を出されましたか。
春日井氏:Silverlight 3の新機能を説明しただけで、何ができるのかは、ヤフーさんと制作したセカンドファクトリーさんに考えていただく形で、すべてお任せしました。
――完成した「Auction Tools」を見ての感想は?
春日井氏:とても素晴らしく、マイクロソフト社内でも話題になっています。
――「Yahoo!オークション」のSilverlightアプリケーションを作った理由を教えてください。
友松氏:オークションはヤフーのサービスの中でも大きなプロパティです。Silverlight 3のテクノロジーを使って、ユーザーの利便性をどう向上できるのかと考えました。Silverlightの以前のバージョンまでは動画配信がメインの機能でしたが、今回のバージョンではかなり進化していると感じ、ヤフーのキーとなるサービスでも利用できると思いました。
――しかし、「Auction Tools」は“コンセプトモデル”なんですよね。
友松氏:アプリケーションの完成度には満足しているので、実際にどうサービスに乗せていくのかを、これから考えたいと思います。
――ヤフーのサービスで現在Silverlightに対応しているところは?
友松氏:動画ニュースと、特集ページでも使っています。ニュース動画は「Yahoo!ニュース」の中でもPV数を取っているので、そこがSilverlightに変更するのは大きな話です。
――その他で、Silverlightを使うサービスは予定していますか。
友松氏:「Yahoo!占い」の一部のコンテンツや、「Yahoo!地図」のSilverlight版など、いろいろと検討していますが、今後、ユーザーから要望の多いサービスや、ヤフーができるサービスを考えた上で、Silverlight対応を進めたいと思います。
ちなみに、今回の「Auction Tools」のデモは社内でも公開していないものでした。これが出たことで、社内から「その機能があるのなら、うちのサービスではこう使える」といった反応が出ることも楽しみにしています。
――Silverlightアプリケーションの制作で注力したところを教えてください。
齋藤氏:既存のヤフーのサービスをSilverlightと掛け算したときに、どのような体験が生まれるかを一番に考えました。「Auction Tools」では、オークションの見せ方や、ユーザーの情報発信のきっかけになるところを考え、Silverlight 3の機能であるアウト・オブ・ブラウザやローカルファイルへのタッチというところで、今回のシナリオが生まれました。
――開発ツールは何を使われましたか。
齋藤氏:メインは「Expression Blend 3」と「Visual Studio 2008」です。グラフィック関係ではIllustratorとPhotoshopも使いました。Blend 3の操作自体は、かなり向上したと思います。アニメーションやストーリーボードの直感的な操作などは、ツールとして使いやすいと思います。
――Flashを使い慣れている人にとって、Blendはどうですか。
齋藤氏:Flashを使っていた人や、この手のソフトを使ったことがある人であれば、それほど迷わず使えると思いますが、タイムラインの考え方がFlash(フレーム単位)とBlend(時間単位)では違うので、頭の中で変換が必要かもしれません。
「ReMIX Tokyo 09」のキーノートセッションで披露した「Auction Tools」 |
●Silverlightの主な普及施策は大手事業者との協力
――ヤフーではSilverlightにどういった利点を感じられましたか。
友松氏:ヤフーでは動画をWMV形式で配信しています。そのため、一部のユーザーは視聴できません。Flash Video(FLV)にすると変換にコストがかかります。Silverlightであれば、WMV形式の動画をそのまま使えるため、変換コストは大幅に削減されます。ユーザーには目に見えない部分ですが、事業者としてはかなりメリットを感じています。
――SilverlightのDRM機能も導入の決め手に?
友松氏:DRMについては、弊社社長の井上もずっと気にしていました。特にコンテンツホルダーにとって、DRMに対応しているかどうかは重要です。DRMに対応しているから、安心してコンテンツを提供していただける。また、MacユーザーでもDRMで保護された動画を見られるようになります。
――「Yahoo!動画」もSilverlightに対応するのですか。
友松氏:「Yahoo!動画」は、かなりの本数があるので、すぐに対応することはできませんが、Silverlightを採用すればコスト面でもメリットがあることがわかったので、今後検討します。
――Macユーザーにとっては「Yahoo!動画」のSilverlight対応が待たれます。
友松氏:すべてのユーザーにサービスを提供したいと考えると、Macユーザーでは見られない動画があることは問題ですが、しかし、DRMなしの動画を配信することはできないので、コンテンツホルダーとの関係を考え、Mac向けには対応していません。お待たせしていることは重々承知しています。
春日井氏:DRMについては、Windows以外のOSにも対応させるために、新たに作った技術が「PlayReady」です。PlayReadyは、Macだけでなく、Linuxや組み込みOSなどにも対応させることを想定しており、将来的にはモバイルにも対応していく予定です。
――そもそも、今回なぜヤフーをパートナーに選んだのですか。
春日井氏:日本で最も多くユーザーがアクセスするサイト、サービスを提供されているからです。
――その他の普及施策は?
春日井氏:キラーコンテンツを多くのユーザーに提供している事業者と協力することが一番大切だと思っています。もちろん、マイクロソフト内でも他の製品と組み合わせた使い方を提案するなどのプロモーションを行っていきます。
――マイクロソフト製品とSilverlight 3のバンドルはしないのですか。
春日井氏:Windows OSやInternet Explorerなどにバンドルすると、技術的なこと以外のさまざまな問題が発生するため、難しいです。ただし、PCメーカーがSilverlightをプリインストールして出荷するというのはできるので、メーカーには話しています。
――携帯電話向けのSilverlightについては、どのようにお考えですか。
春日井氏:本社に行ったときも、モバイル対応をよく言われます(笑)。今は「開発を進めています」としか言えません。
――想定する対応機種は?
春日井氏:当面はスマートフォン向けになると思います。マルチプラットフォームを目指していますので、「Windows Mobile」だけでなく、「Android」や「iPhone」でも動くようにしたいです。
――Silverlightアプリケーションが携帯電話でも動くようになれば、App StoreやAndroid Marketのような、新しいアプリケーションプラットフォームも実現するのでしょうか。
春日井氏:そうかもしれないです(笑)
――ありがとうございました。
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2009/7/21 11:00
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