読めば身に付くネットリテラシー

「QRコード詐欺」の被害が拡大中! 引っ掛からないために、さまざまな手口を知っておこう

 QRコードを悪用した詐欺が猛威を振るっています。米Palo Alto Networksのセキュリティインシデント対応チームであるUnit 42が取りまとめたレポートによると、同社がウェブ上で1日に検出するQRコードのうち、15%にあたる1万1000件以上が悪質な詐欺サイトへの誘導であることが判明しました。

 一方、国内では、QRコード決済を悪用した「返金詐欺」が増加しており、国民生活センターへのトラブル相談は、2025年度の8カ月間だけで5107件と過去最多を更新したそうです。

 何気なくスマートフォンをかざす一瞬で、預金を失う引き金になりかねません。今回は、国内外で確認されたQRコードを悪用したさまざまなネット詐欺の手口を取り上げます。

 詐欺師がQRコードを悪用する最大の理由は、人間の目で白黒の模様を見ただけでは、アクセス先のURLを確認できないからです。また、買い物でのキャッシュレス決済や飲食店での注文などで日常的に使い慣れている便利さゆえに、無意識のうちに警戒心を解いてQRコードを読み込んでしまう心理を狙われているのです。

 そうしたQRコードを悪用した詐欺の中で最も単純なのが、偽のQRコードを貼り付ける手口です。詐欺グループは本物のQRコードの上に自分たちが作った偽物のシールをこっそり貼り付けるというアナログな詐欺を仕掛けてきます。

 海外では公共の駐車場を狙った事件が発生しています。イギリスでは、71歳の女性が駐車場の精算機に貼り付けられた偽のQRコードをスマートフォンで読み込んでしまいました。そのアクセス先である本物そっくりに作られた偽の支払い画面でクレジットカードの番号を入力した結果、1万3000ポンド(約270万円)もの大金をだまし取られています。

 さらに2025年夏には、アメリカのサンフランシスコをはじめとする複数の都市でも、駐車場の精算機に偽のステッカーが貼られ、クレジットカードの不正利用による被害が多発しました。

Unit 42のレポートでは、「QRコード短縮サービス」や「アプリ内ディープリンク」などによるQRコードの最新脅威についても解説しています

 日本国内では、実在しそうなサービスを装ったチラシを配って、そこに掲載したQRコードから誘導する手口も確認されています。

 2023年、福岡市内でデリバリー焼肉弁当店を名乗る偽のチラシが各家庭のポストに投函される事件が起きました。お腹を空かせた住民がチラシのQRコードを読み込むと注文画面が現れます。そこで弁当を選び、クレジットカードで支払いを済ませて料理を待つのですが、いつまで経っても届きません。不思議に思って確認しようにも連絡先は偽物であり、注文時に入力したクレジットカード情報は詐欺師の元へ送られていたのです。

 マンションの管理人や会社の関係者を名乗って連絡してくる手口もあります。2024年1月、愛知県岩倉市の集合住宅のポストに家賃の支払いがオンライン決済に変更になったという偽のチラシが投函されました。そのチラシに印刷されたQRコードから新しい支払い窓口だというアカウントへの支払いへ誘導された男性が、約10万円をだまし取られたのです。もし、本当に管理会社の名前が書かれていたら、信じてしまう人もいるのではないでしょうか。

 本記事冒頭でトラブル相談件数が増加していることを紹介した「返金詐欺」でも、QRコードが悪用されています。

 この手口では、詐欺師はまず、相場よりも極端に安い人気商品などを並べた偽のネットショップを作ります。検索結果から流入してきた消費者が、お得だと喜んで注文を済ませると、数日後に突然お店を名乗る人物から電話やメールが届きます。商品が売り切れてしまったので返金するという内容です。商品が届かないのは残念ですが、わざわざ返金の連絡をくれたことで、消費者は相手を信用してしまいます。

 ここからが詐欺師の本当の狙いです。銀行振込での返金システムにトラブルが起きているので、スマートフォンの決済アプリを使って返金すると嘘をつくのです。そして、LINEなどを通じて直接やり取りし、返金用だと偽ってQRコードを送りつけてきます。消費者がそのQRコードを読み込むと、画面には数字を入力する枠が現れます。詐欺師は電話やメッセージ越しに、返金を受け取るための注文コードや確認コードだとして数字を入力するよう指示を出します。しかし、この数字は確認番号などではなく、実は詐欺師の口座へ送金する金額なのです。

 消費者は自分がお金を受け取っていると完全に思い込んでいるため、画面に小さく表示される送金確認の文字に気付かず、自らの指で支払いボタンを押してしまいます。実際に沖縄県では、この手口で何度も数字の入力を指示され、合計で約100万円もの大金をだまし取られた事件が起きています。

 国民生活センターや警察では、通信販売の返金でスマートフォンの決済アプリを使うよう指示された場合は詐欺だと注意を呼び掛けています。

 便利なQRコードですが、今回紹介したような手口の詐欺に悪用されている事例があることを、ぜひ覚えておいてください。街中でQRコードを読み込む前には、不審なシールが貼られていないかを確認しましょう。また、メールで送られてきた出所不明のQRコードは読み込まない、という基本的なルールも守ってください。通信販売のキャンセルで決済アプリでの返金を提案されたり、見知らぬ相手から急な振り込みを要求されたりした場合は、迷わずネット詐欺を疑う場面です。もし不安を感じたときは、決して一人で判断せず、家族や国民生活センター、最寄りの警察署に相談してください。

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