日立グループの西日本における中核施設「岡山第3センタ」見学会レポート
株式会社日立製作所は、11月末の竣工式を前に、新データセンター「岡山第3センタ」の記者見学会を実施した。「岡山第3センタ」は日立としては18番目のデータセンターとなる。
●国内・海外に向けた幅広いサービスを提供
日立製作所 情報・通信システム社 ITサービス事業部 データセンタ本部 計画部 部長 平松 豊氏 |
日立製作所 情報・通信システム社 ITサービス事業部 データセンタ本部 計画部 部長 平松 豊氏は、新センター開設により、西日本地区の主要拠点として、クラウドサービス市場の成長・拡大に対応していくが、311以後は、とくに事業継続性の面から、関東と同時被災の可能性が低く地盤が堅牢な西日本のデータセンター需要が高まっていると述べた。
新データセンターは堅牢な地盤に、免震構造の直接基礎工法の免震構造を用いて建設。日本国内で標準的な指標となりつつある、JDCCデータセンターファシリティスタンダードによる最高基準である「ティア4」に適合。データセンターのエネルギー効率指標である設計PUEは1.4、建物の環境性能評価指数であるCASBEEはAランクに該当し、環境にも配慮した。セキュリティ面においては、電源設備を始めとした二重化システムや冗長システムを採用、指静脈認証、各所に設置されたセンサーや監視カメラによるセキュリティシステムなど、日立グループの最新技術を盛り込んだデータセンターとなっている。データセンターの建設は日立グループの建設会社が元請けとなり、建設会社2社に分割発注を行なっている。このため、建設会社1社ではデータセンターの全てはわからないという。
今後は東日本の中核拠点となる横浜データセンターとの連携を強め、仮想統合データセンターとして、各データセンター特有のサービスを日立のデータセンタープラットフォームを介して全国どこの拠点の顧客でも利用できるようにしていく。また、顧客のアジア市場進出支援を目的に、海外展開も強化。国内18拠点に加え、海外にも数十拠点を持つ構想で、韓国のデータセンター事業者であるLG CNS社と連携を行なっていくなど海外の事業者とも提携を進めていくという。
西の主要拠点となる岡山の用地に建設した3棟目のデータセンター | 岡山センタの概要 | 岡山データセンターの立地環境 |
建物の概要 | 設備概要 | セキュリティ |
局所冷却システム「Ref Assist」 | 仮想統合データセンター | アジアを中心に海外展開を強化 |
●堅牢な地盤に日立グループの最新技術を盛り込んだデータセンター
「岡山第3センタ」は地盤が堅牢で、水害の可能性も低い立地で確保した用地に、第1センタ、第2センタに続いて建設。日立グループの最新鋭の設備や環境負荷低減技術を盛り込んだ環境配慮型のデータセンターとなっており、西日本で最大の拠点となる。
第3センタは岡山県内でも特に堅固な地盤を持つ土地に直接基礎工法の免震構造を用いて建設。PMLでは、1.6%という高い評価を第三者機関から得ている。PMLは、予想最大損失という、地震により発生する被害を元の状態に戻すのに必要な費用(休業損失を含む復旧費)が元々の資産価値に対して何%に相当するかを表す指標で、1.6%という数字は、災害時にも被害が軽微にとどまることを示す。
PML1.6%という高い評価の理由としては、(1)地盤が堅固な花崗岩が基盤、(2)免震構造でCFT工法を採用している、(3)床にFABデッキを採用し、背筋精度を高めている、(4)鉄骨の柱と梁接合部をノンスカラップ工法(工場溶接)で溶接精度を高めた、などが挙げられるという。
建物全体が免震構造となっており、60cmまでの横揺れを吸収する免震設備の積層ゴムアイソレーターが全部で24基設置されている。縦揺れに対する建物強度も1.5G(1Gは約980Gal)となっており、阪神・淡路大震災の4.5倍の縦揺れに対しても無損傷だという。
受電はA系とB系の2系統に分かれ、電気系統の設備はN+2構成の冗長構成を取る。設備はメインが赤でサブが青、共通系(予備系)はグレーといった色分けがなされている。最近では、1ラックあたり5kVAを超える高発熱の構成が多く取られることから、サーバー用とは別に、空調設備用専用のUPSを設置する。ただし、すべての空調設備を動かすためではなく、冷気を送るのに必要なポンプや送風ファンなどへ電力を供給。この空調専用のUPSとして150kVAが2台設置されている。
災害などで停電した場合は、自家発電装置に切り替わるが、まずはUPSに切り替わり10分間はUPSで稼働できる。その間に自家発電が起動し、万一の場合も無停電で稼働できる。自家発電の燃料は3日間持ち、自家発電装置も冗長化している。
セキュリティは入館時、第1センタ入館時、第1センタから渡り廊下を通って第3センタ入館時、と各所にセキュリティチェックがあり、人と機械の両方でチェックが行われる。サーバー室はとくに厳重なチェックが行われる。サーバー室に入るには、カードと指静脈により本人確認があり、1人しか入れない自動ゲートを通って入室。カプセルのような自動ゲートにはセンサーがあり、荷物の持ち込みなどはできない。荷物を抱えたまま入室しようとすると警告音声が流れてドアが閉まらない仕組みとなっている。
この自動ゲートを通過するといったんサーバールームに隣接する小部屋に入り、さらにカード認証を行うことで、サーバールームへ入室できる。サーバールーム内はすべて人感照明になっており、人が入室すると照明が点く。ただし、人がいない時も完全に真っ暗では監視カメラが映らないため、監視カメラで内部の様子が監視できる程度のLED照明は点灯させている。
サーバールームでは、天吊型の冷媒自然循環式局所冷却システム「Ref Assist(レフアシスト)」を全面採用。ひとつのサーバールームで112設置されている。1ラックに高度に集積することが多い現在のデータセンターでは局所的な熱溜まりができることがあり、全体を冷やすよりもこうした局所的に熱くなる部分を冷却する方が効率がよく、約35%の省エネ化ができるという。「Ref Assist」は日立プラントテクノロジーが開発。
また、部屋の壁にはアルミシートが全体に貼られているため、コンピュータから出る情報を外部から盗聴されない。携帯電話の持ち込みはもともと禁止だが、これにより、持ち込んでも電波が届かないという。
また、ダブルスキンカーテンウォールを今回初めて採用。西側では、ダブルスキンウォールの有無で7度くらい違いが出るという。また、屋上は遮熱塗料を全体に塗布し、太陽光による熱を遮熱塗料で反射する。遮熱塗料がないと30度、塗布することで24度くらいに抑えられる、6度くらいの効果があるという。
自家発電装置は1号館2号館含め全体で8台あり、うち予備機が1台。停電時も、自家発電による72時間の連続稼働が可能。
屋上には空冷チラーなどをおいて、冷媒を冷やす。水を置くポンプなどは配管は2N、機器はN+2など、ティア4に合わせた形でシステムを構成。停電の時には空冷チラーが止まるため、バッファタンクを置いて、タンクに貯めた冷水で冷却。バッファタンクの水は5分間もつため、その間に自家発電装置が動いて冷水チラーが復帰する仕組みだ。このため、停電時には空調用のUPSが動き、バッファタンクの水を送るためのポンプと、空調機Ref Assitのファンの電源をバックアップする。
窒素ガス。消火設備は窒素ガスによる | UPSは、負荷容量の増加に応じたUPSの無停止増設が可能な日立グループの「UNIPARA」製品を採用 | サーバー室へ入る前に、カードと指静脈認証による本人確認を行う |
カードと指静脈認証が通ると、一人しか入れない自動ゲートを通過して入室できる | 屋上には空冷チラーなどが並ぶ | 屋上には遮光塗料が塗布されている。これで6度違いが出るという |
関連情報
2012/11/20 12:01
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