Web2.0を実感するための10の手がかりとして、Web2.0らしいサービスに触れてみる前編(前回)に続き、今回は「コミュニケーション編」です。
これからは、情報収集手段や会話の道具として、インターネットを利用する機会がさらに増えるでしょう。また同時に、さまざまな形で、今までよりもWebに「参加(発言)する」機会、発言したら得する機会、せざるをえない機会が増えていくはずです。
そんな時代に備えて、今からWebでコミュニケーション――顔見知りとでなく、ネットを通して初めて知り合う人とのコミュニケーションを体験してみましょう。
■7:Q&Aサイトで質問してみる
質問→回答→お礼という、シンプルな流れのコミュニケーションを経験する
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「参加」できるWebサービスは多数ありますが、まず最初はは「Q&Aサイト」から始めてみることをおすすめします。
「Q&Aサイト」とは、誰かが書いた質問に、答えを知っているほかのユーザーが答え、ユーザー間で疑問を解決させましょう、という趣旨のサービスです。「質問する」、「回答する」、「それに対するコメント(お礼)をする」という分かりやすい流れで会話が進行するため、初心者でも入りやすいでしょう。日頃から感じていたこと、検索エンジンでは見つけられなかった疑問などを、質問してみましょう。
ネットでのコミュニケーションで重要なことは、姿が見えなくても相手の存在を尊重し、その言葉にきちんと向き合って会話をする、といったことですが、頭で理解はできても実践するのは意外と難しいものです。つい雑な文章を書いてしまって相手を混乱させたり、疑問が解決した時点でお礼を忘れてしまうこともあるでしょう。Q&Aサイトは、こういったコミュニケーションの基本が練習しやすい環境だといえます。
以下に主要なQ&Aサイトを紹介しますが、「人力検索はてな」だけは質問が有料(ポイントを買う必要がある)なのでご注意ください。これは、人力検索はてなのコンセプトとして、質問者と回答者が対等の立場になることを示すためにポイントのやりとりを介在させたい、といった思想があるためです(ちなみに「はてな」では役立つ回答をするとポイントが貰えます)。
他のQ&Aサービスもそれぞれ雰囲気の違いがあります。自分で質問をする前に、ほかの質問と回答を読んで、雰囲気を掴むといいでしょう。そして、自分が答えられる質問があったら、答えてみてもいいでしょう。
いざ実際に質問をしてみると、うまく答えてもらえるように質問文を書くのは、意外と難しいものだ、と感じるかもしれません。
Q&Aサイトでやりとりされる質問と回答は、ひとつの「正解」があるものだけではありません。以前には、妻の浮気を知った夫が、どうすればいいかを質問し、そこに寄せられた100件を超える回答に応えながら、自分の考えを整理しながら事態を報告していったやりとりが反響を呼び、「今週、妻が浮気します」というタイトルで書籍化されたこともありました。
浮気相談をネットでするなんて信じられない! という感想を持つ方が多いかもしれません。でも実は、複雑な人間関係の問題は、顔見知りよりも匿名で全く無関係の人に聞いた方が、ドライなものから人情に篤いものまで、客観的で役に立つ意見を聞けることが多いものです。
多くの人が集まった回答を総合して判断すると、みのもんた一人の回答よりも役に立つな! ということが経験できたら、それは一種の「Wisdom of Crowds(群衆の知恵:一定の条件が整った場面では、集団の知恵は、その中の最も優れた個人の知恵よりも優れている、という現象。Web2.0のキーワードとして使われることも多いですが、本連載で何度か登場する『集合知』とはちょっと違うもの)」かもしれません。
■8:試験的サービスを利用し、サービス開発者に意見や要望を出してみる
「共同開発者として信頼されるユーザー」になってみよう
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最近では、完成前の試験的サービスを公開し、ユーザーの反応を見ながら改善していこう、という試みをする企業や個人が増えてきました。
Tim O'Reilly氏もWeb2.0の原則として「軽量なプログラミングモデルでスピーディーに開発し、ユーザーを共同開発者として信頼せよ」といったことを述べています(第4、5回参照)から、今後もこのような試みは増えていくと思います。
実験的サービスが公開されているサイトは「○○ラボ」と名付けられていることが多いです。どんなものがあるか「人力検索はてな」で聞いてみましたので、ご覧ください。
多くのラボでは、ブログなど設けてユーザーの意見を募集してみます。気に入った試験サービスがあったら、感想や意見を送ってみましょう。それを参考にして、サービスの改善が行なわれるかもしれません。
「はてな」では「はてなアイデア」というサービスを展開し、はてなの全サービスについて、独自のシステムでユーザーのアイデアを募集しています。
また、個人や小さなグループがラボ的に実験サービスを提供し、テストユーザーを求めている例もあります。こうしたサービスを探して、参加してみるのもいいでしょう。もちろん、自分で開発することに興味のある方なら、サービスを提供する側に回ってみるという選択肢もあります。
■9:「情報の共有」を経験する
Web2.0の重要キーワード「共有」を経験してみよう
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最近ネットでよく耳にするキーワードのひとつに「共有」があります。今までは「情報発信」という言葉が使われてきましたが、今後は「情報共有」がトレンドになるかもしれません。
「共有」とは、ちょっと具体的なイメージが沸きにくい言葉ではないでしょうか。個人的には、おいしい食べ物があったとき、自分で食べてしまってからみんなに「いかにおいしかったか」を話るのが従来の「発信」、みんなに分けて一緒に食べ、「おいしかったね」と語り合うのが「共有」、というイメージが両者の違いだと解釈しています。
情報が昔よりも広く、速く流通するようになった現在、コアなネットユーザーの間でアツい話題は、自分が出し惜しみしても他の誰かが同じことを考えて、公開してしまうかもしれません。未完成のアイデアも、公開したら誰かが一緒に考えてくれるかもしれません。積極的な「共有」の姿勢が、自分の利益にも繋がることが多くなってきました。もちろん、何でもかんでも共有すればよい、というわけでもありませんが。
手軽に「情報共有」が体験できるサービスの代表的なものはソーシャルブックマークです。自分の気になる記事を集めたブックマークを他の人も見られるように共有しあうことで、興味の方向性が似ている人を発見し、あらたな情報の発見や人間関係の広がりに繋がる可能性もあります。
中でも「はてなブックマーク」は、IT系、サブカル、オタク趣味のある人には非常に楽しく利用できるでしょう。
女性向けにはコスメのレビューを共有する「@cosme」がおすすめです。
■10:ブログを書く、読む、コミュニケーションする
「ネットワーク構築装置」としてのブログを体験しよう
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最後の仕上げは「ブログをやる」です。といっても、漠然と日記を書くだけでは、よろしくありません。
第7回のコラムで「ブログとは、Webの中で自分のノードを強くするために、非常に有利なツールである」と書いたように、ブログは優れた「ネットワーク構築装置」だといえます。ブログでネットワークができることを体験するために、次のようにブログを運営してみてください。
(1)何かテーマを決める
写真や料理など趣味、仕事関係の話、地域の情報など何でもいいですが、記事30本分ぐらいは書けそうなテーマに決めましょう。テーマの決まった専門性の高いブログの方が、他者からの認知を得られやすく、コミュニケーションしやすくなります。
(2)似たテーマのブログを読む
ブログを書きつつ、似たテーマのブログを探し、ウォッチします。気になる記事を見つけたら、そこに集まっているトラックバックを追ってブログを探し、RSSリーダーに登録していくと効率的にブログを探せます。自分と似たテーマを扱うブロガーにはどんな人物がいて、それぞれどんなスタンスなのか、よく観察してみましょう。
(3)他のブログにトラックバックする
他のブログに自分の興味ある話題が出たら、積極的にトラックバックしてみましょう。自分のブログから話題の元となる記事をリンクして紹介し、自分の見解、自分が持っている情報を書いて、トラックバックを送ります。アクセス解析を見てみると、トラックバックを辿って読者が来ていることが見えるでしょう。さらに相手から反応があるかもしれません。
ここからは、あなたの腕とやる気次第。知り合った相手とのオフ会が実現するかもしれませんし、ビジネスチャンスに繋がるかもしれません。mixiでマイミクになったり、はたまたケンカして派手にやりあうことになるかもしれません。
私自身でも実践できているか自信がないのですが、ブログに限らずコミュニケーションで大事なのは「謙虚さ」と「正直さ」だなあと、いつも思います。ブログのコミュニケーション術に関しては関連書籍も多く出ているので、参考にするのもいいでしょう。本誌でも、ブログサービス紹介のリンク集「2006年に始める! お手軽ブログ・日記サービス」を掲載していますので、サービス選びの参考にしてみてください。
■URL
Tim O'Reilly氏著「What Is Web2.0」(英文)
http://www.oreillynet.com/pub/a/oreilly/tim/news/....
(2006/04/10)
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