【裁判】
BBTの目的は圧力をかけて標準化を有利に進めることだ~小畑氏
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説明を行なうイー・アクセスのCTO小畑至弘氏(左)と |
イー・アクセス株式会社は1日、ビー・ビー・テクノロジー株式会社(以下、BBT)がイー・アクセスのCTO小畑至弘氏に対して起こした損害賠償請求事件の第一回口頭弁論について記者会見を行ない、小畑氏側の主張を説明した。
今回の事件は、小畑氏がBBTに対して二つの不法行為を行なったとして、不法行為による営業妨害の差し止めと、不法行為による損害の一部を支払うように求めた事件だ。
BBTが主張する二つの不法行為とは、2001年9月4日に行なわれた社団法人情報通信技術委員会(TTC)の公式記者説明会の席上で小畑氏がBBTの採用するAnnex Aについて「日本では信号の減衰が激しく、利用者に十分な通信速度を提供できない」と発言した件と、2002年7月12日にイー・アクセスが行なった技術説明会の席上で、BBTが提供するサービスであるAnnex A.exについて攻撃し、その内容を報道関係者に説明した件の二件が営業妨害にあたるとしている。
これに対して小畑氏側は、BBTが主張する不法行為の二点は、「何れもBBTが採用するAnnex AやAnnex A.exという技術方式に対して、虚偽の事実を元に発言を行なった」ことが不法行為にあたるとしているので、小畑氏側はその発言が「虚偽の事実」でないことを証明するために技術論争が必要であり、そのための証拠を提出していくつもりであるという。しかし、BBT側の訴訟代理人である牧野二郎弁護士は「今のところ技術論争するつもりはない」という意思表示をしているとのこと。
また、BBTは不正競争防止法の不正競争行為に該当するとして小畑氏個人を訴訟しているが、この不正競争行為に該当するためには、法律上小畑氏個人がBBTと競争関係になっていなくてはならず、今回の場合当てはまらないと小畑氏側は主張した。この主張が認められれば、技術論争をせずに棄却される可能性もあるという。
小畑氏の訴訟代理人の城山康文弁護士は「BBTは訴権を濫用しており、この訴訟の目的は小畑氏がリーダーを務めるTTCの『SWG(サブワーキンググループ)4-6-5』の改定作業を停止させることだ」と語っている。その理由として、SWG4-6-5が進めていたTTC標準の改定作業が順調に進めばBBTに致命的なダメージが予想されており、それを懸念した孫氏がTTCメンバーに圧力をかけるために、みせしめとして小畑氏を訴えたのだとしている。
小畑氏はこの件について「個人に対して3億円もの損害賠償請求するのは、賠償を得ることが目的ではなく、私自身に圧力をかけて発言しにくくすることが目的だろう。これは、SWGのほかのメンバーにしても同様だ。TTCで私は技術者として中立的な立場で意見しており、各種の論拠は数値計算により算出された公平な結果を元に出されているものだ」と発言した。
小畑氏等の主張に出てきた「TTC標準JJ-100.01改定案(第2.0版)」は、現在棚上げ状態となっている。9月30日にTTCが公表した会議議事録によると、8月19日に全ドラフトを全面改訂する提案がされたことによって、SWG4-6-5内での合意を得られることができず、第2.0版の提出することができなかったことが原因だ。また、SWG4-6-5の開催も当面行なわれないという。何れにせよ、今回の会見によりBBT側、小畑氏側双方の主張が揃った訳だが、判断は司法に任せられているので、今後の公判も見逃せない状況だ。
一方、BBTの孫正義社長は、同日開かれたYahoo! BBの新型モデムの説明会の席上、記者らの質問に答える形で今回の口頭弁論についてコメント。まだ代理人からの正式な報告を受けていないと前置きした上でだが、あくまでも技術論争で決着を付けるべきだとするイー・アクセスの主張について、「(Annex Aが2.5km以上で通信速度が落ちるという)不当な広告も言語同断だが、技術論で争っても我々はいくらでも正しいところを証明できる」と反論した。
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(2002/10/1)
[Reported by otsu-j@impress.co.jp]