【インタビュー】
オン・ザ・エッヂ堀江貴文社長~ライブドアは破綻したが
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livedoorの営業譲渡が発表されたまさにその日、TBSのワイドショー「ジャスト」の名物コーナーである「亭主改造計画」において、堀江貴文社長が“改造”されていたことが確認されている。なお、これは同番組のファンだという社員によって画策されたもので、放映日の一致もまったくの偶然だったという |
「livedoorに入るのはどういうユーザー層なのか? 初めてパソコンを買ってきて、いきなりADSLにつなぐユーザーはあまりいない。とりあえずダイヤルアップでインターネットを体験したいというユーザーが、livedoorに来るという導線が考えられる。我々としては、例えば雑誌の付録CD-ROMや地方の家電量販店など、そういったところにターゲットを絞ったプロモーションをしていく。これまでライブドアが展開してきたプロモーションは、ブランドを定着させるという意味でマスマーケティングの手法で行なわれていたため、費用負担も重かった。無料ISPというものに対するインセンティブがなくなってきている今は、もうマスマーケティング的なプロモーションをする時期ではない」
実際のところ、livedoorのユーザー数増加が鈍化しているといっても、「1日に数百人ずつ増えている」という。さらに、フリービットの全国のAPが使えるようになれば、エリアが全国に広がった分、会員が増える可能性は高い。
「地方ではADSLが使えないユーザーもけっこう多いことだろう。そういったところで、livedoorのサービスに加入される可能性が高い。実際に入ってみれば、ちゃんと使える、お金もそれほどかからないということがわかってもらえるだろう。その先、ADSLを使いたいユーザーにはADSLのメニューも用意している。最初にlivedooorでアカウントをとって、そのまま使い続ける人も多くなるのではないか」
●通話料=ダイヤルアップ接続時間を増やす仕掛けを現在の無料ISPの収益は主に、ダイヤルアップ接続にともなって発生する通話料からのキックバックによって成り立っており、8割くらいの収益がここから得られているという。加入者の通話料=ダイヤルアップ接続時間をいかに増やすかが、livedoorの収益確保のカギになる。堀江社長は「コンテンツは実はあまり重視していない」としながらも、その仕掛けとなる新たなコンテンツの方向性を模索している。
「これまではニュースなどのコンテンツにお金をかけていたようですが、そういったものは全部撤廃しようと思っている。ISPが独自でコンテンツを持とうと思っても、どうせヤフーには勝てない。(ニュースなどのコンテンツについては)そういったトラフィックが欲しいところに全部誘導するようにして、livedoorで囲うのはたくさんのトラフィックを食うような無料コンテンツに絞る。例えば、無料ホームページや無料BBS。さらに、ダイヤルアップ接続時間をいっぱい使ってくれるような付加サービスも考えられるだろう。例えばウィルスのオンラインスキャンサービスやソフトウェアのダウンロードサービス、オンラインゲームを、livedoorから利用したユーザーに対して安価で提供するというもの。コンテンツホルダーには通話料からその分をキックバックすればいい。30万人のユーザーの一人あたまの接続時間を増やす作戦です」
同時にオン・ザ・エッヂでは、これまでアウトソーシングされていた無料ホームページやBBS、ウェブメールなどのメニューを自社内に統合。外注コストを全面的にカットする一方、広告サーバーについてはネット広告代理店にフルアウトソーシングする方針だ。ネットワークインフラもフリービットへの全面委託であるため、無料ISP運用にともなうオン・ザ・エッヂの負担やリスクを最小限に止めることができるのだとしている。
「要は、(ライブドアは自社でネットワークの)設備を打ってしまっていたということ。もう2世代くらい前の設備で、だいたい10万ユーザーくらいまでしか耐えられないのに、更新するにはそれなりの費用がかかる。通信会社と長期契約をしている関係上、その契約も切れない。(オン・ザ・エッヂは)我々のリスクで設備などを持っていないので、(フリービットに支払う運用コストを)変動費に近いようなかたちで考えることができる。ユーザー数が増えればポート数も増やす必要があるが、我々はそこまでリスクを負わなくてもよい」
●ダイヤルアップユーザーは減るが、livedoorユーザーは増える?
もともとはインターネット関連のシステム開発やサイト構築・運用というWeb事業を手がけていたオン・ザ・エッヂだが、最近はメールソフト「Eudora」をはじめとするソフトウェア事業や、ビットキャットのブロードバンドサービスなどのネットワーク事業へと次々と進出。今では、ビットキャットやlivedoorを担当するネットワーク事業部門が最大のスタッフを抱えるまでになっている。今回獲得したlivedoorについても、単なる無料ISPの運営では終わりそうにもない。
「全国共通アクセスポイントのOEM、すなわちISP向けのホールセールを考えている。今回の提携を機に、フリービットのコンシューマー向けISP業務については今後、我々と協力して展開する流れになっていく。コンシューマー向けのISPはlivedoorもしくはオン・ザ・エッヂが担当するというような提携をしたい。ダイヤルアップ接続はどこのISPでも提供されていると思うが、ある一定の会員数以下になってくると、損益分岐点を割ってくる。アクセスポイントの維持コストを考えると、採算が合わなくなるわけだ。そうなった時、『でも、やめられない。それでは、livedoorに委託しよう』という流れが出てくる」
かつて広告モデルに基づいた無料ISPが行き詰まったのを繰り返すかのように、今回、通話料のキックバックモデルに依存した第2次無料ISPの最大手でもあるライブドアが経営破綻した。結局、無料ISPモデルは成り立たないのではないのかという声も多い。
しかし、堀江社長は「(ISP向けのホールセール事業により)ダイヤルアップ接続全体のユーザー数は減っていくが、livedoorのユーザー数は増えていくのではないか」と、同社の無料ISP事業の成長に自信を見せている。
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(2002/11/11)
[Reported by nagasawa@impress.co.jp]